見出し画像

花冷えの街



花冷えに行きつ戻りつする街は不織布越しの三度目の春

あやうさを隠す染井の花影に甘え過ごした春を幾年

散り敷いた薄桃色の花びらに春の行方を問うは愚かで

この先を行く君の背に肩に落ち共に歩める花うらやまし

春雨を凌げるほどの枝葉なら保てるからと古木佇み




************

梅ほどには匂わない気がする桜も、鼻を近づけるとほんのり甘い香りを放っているようにも思う。でも、マスク生活も三度目の春。匂いに鈍感になりつつある。

桜は、花や葉を塩漬けにすると香りをよく放つんだそうで、だからお菓子なんかに使われるんだとか。

桜餅の葉に注目したことなんてなかった。
そう言われてみれば風味はあるかな?でも、今じゃピンク色に染められた餅の匂いが強い気もするけど。桜餅の葉なんて、食べようか剥がそうかと毎回悩むぐらい。ものによっては、塩抜きが不十分なのかひどく塩辛い葉もあるし、葉脈だけ口に残ったりするから様子見大事。

我が家近辺で売られている桜餅は、道明寺と呼ばれるモノがほとんどで、どうやらこの形は関西方面での主流らしい。関東の知り合いにもうひとつの桜餅(こっちもなんかお寺のような名前だったはず)の形を聞いて、「それの何処が餅?!」と思った記憶がある。


……

あちこちで満開になりつつある桜並木の殆どが、ソメイヨシノ。ソメイヨシノはクローンで増やされたものだから、それが理由で困ったことになってると、少し前にニュースで聞いた。ソメイヨシノが罹る病気?が流行ってるらしい。このまま行くと、あちこちのソメイヨシノがほぼ同時にダメになるとか。だから今、ソメイヨシノに代わる新しい桜を…とニュースは続いた。

代わりさえあればいいんだ…。

ソメイヨシノを脅かす原因は予防したり取り除いたり出来ないのかな?間に合わないのかな?無理だから次…なんていう単純な話じゃないことぐらいはわかるけど、なんだかもやつく。

東京のどこかにソメイヨシノの最初の一本があるらしい。標識も案内もなく…と言ってたけど、このまま静かに咲かせてあげてほしい。


……

3月ももう終わる。新生活に向けてすでに踏み出した人も、これから踏み出す人も。

進んでいくその背中を見守ることしかできない人の存在に気づくのは、きっとずっと後になってから…

戻って来るのを待ってるわけじゃない、ただずっと同じところにただいるだけ。

ここにいるからね

それだけでいいこともある…はず







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?