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本ばっかり読む人は自分の意見がないのか?

私は一般的な同世代の人よりも本を読む方だと思う。ステイホーム&在宅勤務の期間は目に見えて読む量が減ったので、週末ランナーならぬ通勤読書家ではある。

職場の近所に引っ越した人や、完全リモートワークを求めて転職した人は、「通勤に片道1.5hもかけるなんて人生を無駄にしているよ」と言うだろう。気持ちはわかる!

人生の優先度をどこに置くかは人によって違い、私にとって通勤時間は受け入れるものの位置付けになった。どうせ通勤時間があるなら有効活用しようと本を手に取る。

別に映画鑑賞でも良いけど電源不要(紙派)で楽だし、ソシャゲよりは罪悪感が少ない。楽しく有意義に時間を過ごせるから読書しているという説明になる。

ひとまず強調したいのは、別に「読書が偉い」なんて思っていない。もっとカジュアルでもいいとさえ思う。

読書しないマンからの素朴な疑問

本を読まない側の人の中には、なぜそのような苦行を自ら選ぶのか理解に苦しむ方もいらっしゃる。

ある読書しないマンからぶつけられた質問は「そんなに読書して何を目指しているの?」「本を読むことで自分に変化はあるの?」だった。

読書によって何の変化も無ければ無意味という話になる。逆に、この年で外部からの刺激にいちいち影響されていたら「まだ自分が確立できていないのか?」という批判の眼差しがあった。

そんな会話をしたのもずいぶん昔の話になるけれど、うまく答えられなかったせいでモヤ感とともに記憶には残っている。

自分の中に他者を住まわせる

モヤ感を抱えて生きてきた中、言語化してくれたような文章に昨年出会った。「スマホ時代の哲学」の中で述べられていた「他者を自分の中に住まわせる」というもの。

本の主題は、不安を忘れるために細切れな刺激(スマホ等)を求めるのではなく、孤独に身を置いて自分と向き合おうという話。主張の展開において、哲学界の先人達のテキストを参照するため、導入部分で哲学の取っつき方を指南する。それが凄く面白くて為になる。

巷では「自分の頭で考えろ」と言いがちなところ、自力思考で生まれるのは平凡なアウトプットでしかないと斬り捨てる。車輪の再開発よりは他人の頭を使う方が筋が良いと説く。他人の頭で考える描写として「自分の中に他者を住まわせる」があった。

私がイメージした「自分の中に他者を住まわせる」描写
※元の本はそんなこと言ってない

哲学との向き合い方についての話ではあるんだけど、そのまま読書との向き合い方にも通じるように思えた。

相手のパラダイムで考えてみる

私に疑問をぶつけてきた相手のパラダイム(モノの見方や捉え方)を想像するに、信念・思想は勝ち抜きバトル方式なのだろう。

一貫した人格者としての自分がいて、自分が採用してきた信念・思想を覆すものが出てきたら「新 v.s. 既存」で闘わせて、新たに採用するものを選ぶ。つまり、本を読んだ後で自分の意見を決めなければならない。まぁ、そういう考え方もあるよね!

先ほど紹介された本の中では「ネガティブケイパビリティ」という概念が紹介されていた。言い換えるならば「スッキリしないものに耐える能力」だろうか。

読書した直後に勝ち抜きバトルしてスパッと取捨選択するのではなく、結論を下さず寝かせておく。ある時にひょこっと「自分の中の他者」として意見するような活躍をみせる。

私はそのようなパラダイムで生きているので、なるほど話が嚙み合わなかった訳だ。

読書で世界平和を目指している

最初の疑問「本を読むことで変化はあるの?」に対する回答:自分の中に住まわせる他者が増える。

読書は手段の1つであり、考えの異なる他者とじっくり対話をすることでも達成できる。今回の読書しないマンは、私の中の他者として生きている。会って話すことも大事だけど、タイパで言えば読書に勝るものはない。

自分の中に他者を住まわせて何の役に立つのか:信念・思想が食い違った相手と衝突した際に、相手のパラダイムに立ってものごとを考えることができる。

気に食わない相手にも「気持ちはわかる!」「そういう考え方もあるよね!」と受け止め、刺激と反応の間にワンクッションを置くことができる。加えて、相手の視点から自分を観ることができる。

一神教どうしが争いがちなのと同じく、信念・思想が正しいと思い込んだ個人同士もまた争いやすい。この意味で、勝ち抜きバトル形式で思想を選んでゆくことは危うさがある。

自分のパラダイムが偏っていることに気付きにくいため、パラダイムが異なる相手との対話は難しい。そこに自分を客観的に観ることのできる他人や、相手側の役をシミュレーションできる他人が自分の中にいると、状況はいくぶんかマシになる。

「読書して何を目指しているのか?」に対する答え:自分の中に他者を住まわせることで世界平和を目指している。

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