見出し画像

ほぼ毎日エッセイDay15「マジおすすめだから、見て!」

人からおすすめをされることがあまり得意ではないんだな自分、と思う瞬間がこれまでにも何度かあった。どうして得意ではないんだろうと考えてみた。ひとつに、そういう素晴らしい作品との出会いは自分のなにかしら運命的な力によってもたらされたいという天邪鬼な理由があるんだと思う。朝、パンを咥えたまま街角でぶつかった相手が実は隣の席の転校生だとか、落とした書類を拾い集めていると、ふと指と指とが触れ合ってしまい、その瞬間に始まる恋の予感だとかに近いくらい、宿命的なカビの生えたような理由だ。まだそういう時期じゃない、タイミングではないとかなんとか様々理由をつけている。BTTFとかまさにそうだった。

もうひとつは、不用意にその人の片鱗を拾うことになるからだ。あぁ、この人こういうのが好きなんだと意外に思ったり、あなたらしいねとハンコを押して、よかったよと返してみたり。これでいいのかと思う。面白くない映画をおすすめしてくるからこの人は趣味の悪い人間なんだと思ったり、自分と共通の感動ポイントを探って、次に会った時の会話の種まきをしてみたり。
素直に片鱗をいくつも拾い集めたところで、その人を形作ることができるわけではないのに。出来上がるのはいつも抜け殻のようなものである。片鱗を生物学者みたく、裏、表とつぶさに観察しても、一体どこまでを知ることができるというのだろうか。
本一冊、音楽ひと調べ、映画一本、そんなものでその人が理解できるわけでもないのというのに。


そのようになんとなくわかっていながら、僕自身はある程度人になにかをおすすめするのは好きだ。そこにはやはり、こういうのが好きな自分を分かってほしいという隠れたエゴイズムがあるのだろう。そして僕がもし、誰かにその人のおすすめを積極的に請うていたら、その人の断片を知りたいと思っているのだろう。本当のその人に近づいてみたいという下心があるのだろう。
あるいは、ほんとに無礼で残念なことだが、暇つぶしでしかない。

よろしければお願いします!本や音楽や映画、心を動かしてくれるもののために使います。