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売上高を個人目標にしない働き方

先に言っておくと、「売上高を個人目標としてはいけない」と言っている訳ではありません。

そのメリットデメリットを考慮して目標を設定すべきだと考えています。「売上目標のない営業なんてあり得ない!」との指摘は常に聞くのです。部門目標はいずれにしても数値で示されている訳ですから、その達成の道筋を付けないといけない。だからこそ、部門の数値目標を個人に割り当てておけば進捗管理もできて安心なのです。その気持ちは良く分かります。

しかし、売上高は企業側だけでコントロールできません。顧客側の購買力やライフイベントのタイミングなどで、購買意図はその都度変動しているのです。顧客が体調を損ねている、ご家族の介護で忙しい、海外へ転勤してしまった、様々な理由で購買力が落ちる時期がある。そんな時には購入して頂くことは難しい。売り込みをすれば顧客との関係は切れてしまう。

でも、個人の数値目標があると、高い目標を掲げるほど、売り込まないと目標を達成できない(と考えてしまう)。数値目標を背負っていれば、効率的に目標を達成できるように日々お買い物額が多い顧客に集中してアプローチします。そうなると、そのコアな顧客に万が一のあった時にはにっちもさっちもいかなくなる訳です。

最終的な購買判断は顧客に委ねざるを得ない、この事実から考えたいのです。ポテンシャルがあると判断した顧客には、直近のお買い上げ高に関わらず、定期的に接点を持つことが重要です。でも実態としては「この顧客は最近買い物がないから、アプローチしなくとも良い。」と営業担当者は個人的に判断しがちです。上長としても、売上高だけ把握し、その都度指導していることの方が「楽」になる。営業担当としても売上高を割り当てられていることはプレッシャーです。

しかし、「売上目標を達成するためには何をしても良い(もちろん合法であれば)」と具体策が委ねられるのとベテランはやりやすい。若手は悩んでしまう。だとすると、「今月は顧客の自宅訪問100件、電話アプローチ500件」と指示されると、ベテランから若手まで逃げ場がない。しっかりと進捗管理することができれば、納得性の高い評価が可能になる。しかし、上長は考える。「果たしてこれで売上高目標が達成できるのか?」

「火の用心」の伝言ゲームであれば、中間管理職は不要です。中間管理職はそれぞれの権限で、上長からの目標達成を行動基準に落とし込んで徹底することが出来る。明確な行動基準と評価があれば納得性が高まるのです。

プロセスを明示しないで、結果数値だけを把握するマネジメントは、スーパーセールスを生み出すかも知れませんが、それではスーパーセールスが卒業したらどうするのでしょうか。また、スーパーセールスは顧客の個人的な関係を構築すると同時に、特殊な取引条件を結びがちです。値引きからお届けなど様々です。むしろ、継続的に安定的な商売を目指すならば、普通の営業担当が普通に行動基準を推進することで、一定の業績が確保できる。こうした働く仕組みを考えていくことが、働き方改革2024年を迎えるにあたって重要だと考えます。

ふつうの人材こそが、継続的に非凡な成果を確保する仕組みを創ること。これが出来るのは経営者だけなのです。

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