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留学生の疑問「それで、言いたいことは何ですか?」

先月、上級クラスで「会話」の授業を任されることになりました。
うちの学校での「上級」というと、日本語での生活にはほぼ問題がなく、
日本語である程度専門的な内容が勉強できるといったレベルです。
JLPTで言うと、N2からN1くらいの範囲です。

ちなみにJLPTというのは、英語でいうところの「TOEIC」や「英検」の日本語版だと想像してもらえればおおむね問題ありません。
正式名称は「日本語能力試験(Japanese Language Proficiency Test)」、略してJLPTと呼ばれています。
JLPTの級によって進学や就職などの際の日本語能力の証明になるものなので、
日本で日本語を学ぶ留学生にとっては無関心ではいられない存在なのです。
N5からN1までの級があり、N1がその中で最も高いレベルです。
JLPTについては、また別の記事で詳しく取り上げたいと思いますので、今回はこの辺で。

日本での日常生活がほぼ問題ない人たち相手に、どのような会話の授業ができるか?いろいろ考えた末に、直接本人たちに聞いてみることにしました。

「日本で生活する中で、日本語で話すことについて困るのはどんなときですか?」

いろいろな意見が出ましたが、中でも一番根強かったのは「雑談」に関するものでした。
アルバイト先で出会う同世代の日本人とのお喋りが難しいんだそうです。

そこで、日本人同士のおしゃべりを聞いてみよう、ということで15分ほどのPodcastを題材に、聞いてみました。
聞きながら、耳についた言葉や話し手がよく言っていた言葉を書きとるというタスクを課して、
最後にみんなが書きとった言葉を並べてみました。

「うんうん」「なるほど」などの相槌系のものが多く、他にも
「~ね」「~だわ」などの語尾系のものもありました。
しかしその中でも私がなるほど!と思ったのは
「~て」です。

「~て」が何を示すか、見てすぐにわかるでしょうか?
例を挙げると、以下のようなことです。

「この前電車乗ってて、そしたらすごい酒臭い女の人乗ってきて、しかもその人私のとなり座って、「めっちゃ最悪!」と思って。」

日本語母語話者の話し言葉にとてもよくあることですが、
この「て」を使って用言を接続しながら話し続けるという形です。

一方、日本語教育文法では「~て」の機能は限られています。
順序を示す場合(例:朝起きて、顔を洗う)
理由を表す場合(例:試験に合格して、嬉しい)
などです。

つまり、日本語学習者の頭の中では、
最後に何か言いたいことがあるとき、その前に「て」を使っているという認識なのです。

そこに先ほど例に挙げたような「~て」連続攻撃が来てしまうと、
まさに「それで、言いたいことは何ですか?」となってしまうわけです。

日本語母語話者からするとこの後何か言いたいことがあるわけでもなく、
先ほどの例で言ってもおそらく言いたい出来事は全て「て」の範囲内で言い終わっています。

これってつまり、「て」にまだ明らかになっていない文法機能があるということなんでしょうかね?
先日の授業の一幕でした。

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