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日本人の知らない日本語文法#2「面白いな本、きれい人」

普段から文法を間違えることなく日本語を話している日本語母語話者が、意外と気づいていない日本語文法について紹介する「日本人の知らない日本語文法」シリーズ、第2弾です。

先日、日本に留学してまだ半年ほどのクラスで、日本語文法のテストがありました。
その中で、なかなかに間違いが集中していたのが下の問題です。

例)(ゆうめいです  → ゆうめいな)人
 ①(おもしろいです →      )本
 ②(きれいです   →      )人

そして多かった間違いが、今回のタイトルにある「面白いな本」、そして「きれい人」です。

母語話者であれば、正答はすぐにわかります。
もちろん「面白い本」、「きれいな人」です。

では、日本語学習者の頭の中ではどんなことが起こって、このような間違いが起きたのでしょう?
「面白いな本」「きれい人」は、どのような文法規則に反しているのでしょうか。

日本語には、「形容詞」と呼ばれる品詞があります。
名前の通り、事物や事柄を形容する際に使われる語のことです。

そして「形容動詞」と言う品詞もあります。
こちらも名前から推測すると、形容するだけではなく動詞としての機能もある…?と誤解されがちですが、実はそうではありません。
形容詞と形容動詞は単に活用の種類によって分かれているだけで、語の意味や機能に違いはないとされています。
一説によると、学校教育で扱われる国語文法が形容動詞の活用語尾が動詞に似ているため、このような名前を付けられたのだそうです。

そして日本語を外国語として学ぶ人には、我々にとっての形容詞を「い形容詞」、形容動詞を「な形容詞」として説明しています。形容動詞も形容詞の一種で、単に活用の形が異なるだけだからです。

い形容詞は「おいしい」「楽しい」「嬉しい」などのように名詞修飾するときに最後の文字が「い」になるもの、
な形容詞は「元気な」「有名な」「暇な」などのように名詞修飾するときに最後の文字が「な」になるものを指します。
つまり、名詞修飾するときの形によってその形容詞が「い」なのか「な」なのかを見分ける必要が出てくるわけです。

さらに話をややこしくしているのは、
文末に来てしまえば な形容詞が い形容詞に擬態できるという点なのです。

たとえば、「元気な人」と言えばこれはすぐにわかります。名詞の前が「な」なのでこれは な形容詞です。

じゃあ、「この人は元気です」はどうでしょうか。
困ったことに、文末には「い」も「な」もありません。

こういう場合、基本的に「い」が見当たらなければ、それは な形容詞です。
しかし、「い」がある場合は原則それは い形容詞ですが、残念ながらこれにはいくつか例外があります。
偶然にも「い」で終わってしまう、トリッキーな な形容詞(例 : 有名、きれい)がいくつかあるのです。
多くの日本語学習者はしょっちゅうこれに翻弄されています。

ここで冒頭の間違いに立ち返ってみると、
この間違いは「これは い形容詞か?な形容詞か?」という2択を外していることによる誤りだということがわかります。

「おもしろい」は い形容詞なので「面白い本」、
「きれい」は な形容詞なので「きれいな人」となります。

これは、学習期間が長くなればなるほど、だんだん慣れていき誤りが減っていきます。
日本語教師としては、学習者が間違ったら地道に訂正していくしかないのです。

少し前のことですが、ひと月ぶりくらいに顔を合わせた留学生が私を一目見てこう言いました。

「先生、少し太いになりましたね」

前日に焼肉食べ放題に行き顔がパンパンの私は、日本語教師として毅然とした態度で、こう返しました。

「『太い』は い形容詞なので、『太くなりました』、もっと言うと『太りました』です」


今回のような、日本語文法のこまごました話が楽しい!という同志の方はぜひ、シリーズ第1回もご覧ください。

日本語の会話やコミュニケーションに興味がある方は、ぜひこちらもご覧ください!

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
また次の記事でもお会いできますように。

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