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昇進は破滅の始まり?!無能な上司とムダな仕事を生む法則


序章:はじめに

ピーターの法則とパーキンソンの法則についての簡単な紹介

「昇進は破滅の始まり?!無能な上司とムダな仕事を生む法則」というこの記事では、私たちの職場でしばしば見受けられる興味深い現象に光を当てました。これらの現象は、ピーターの法則とパーキンソンの法則という二つの有名な理論から理解することができるのです。

まず「ピーターの法則」は、職場での昇進に関するある興味深い観察に基づいています。この法則は、個人が自分の能力レベルを超える職位に昇進し続け、最終的にはその職位での無能さを露わにしてしまうというものです。つまり、誰もが自分の無能さを示すレベルまで昇進する傾向があるというわけです。

一方で、「パーキンソンの法則」には二つの主要な要点があります。第一法則は「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」というものです。これは、与えられた時間が長ければ長いほど、仕事はその時間をすべて使い果たすまで増えていく(本来は不要な仕事が増えていく)ということを意味しています。第二法則は「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」というもので、これは財政や予算に関する洞察を提供しています。

これらの法則は、多くの職場で見られる人事的問題や生産性向上に関する挑戦を説明するカギとなります。たとえば、なぜ一部のマネージャーやリーダーが効果的でないのか(ひどい言い方をすると「なぜ使えない職制が発生してしまうのか」)、また、なぜ業務効率化の取り組みが逆効果に終わることがあるのか(効率化したはずなのに仕事が減らないのか)といった疑問です。

本記事では、これらの法則を深く掘り下げ、職場での役割や業務の効率化、生産性向上に役立つ洞察を提供したいと思います。読み進めるうちに、これらの法則があなたの職場でどのように作用しているか、そしてそれにどう対処すれば良いのかが明らかになることを期待します。

現代の職場での法則の適用

ビジネスの世界は常に変化していますが、ピーターの法則とパーキンソンの法則が示す原理は現代の職場においても変わらず、企業としての生産性向上を目指すうえで非常に重要です。これらの法則は、職場で起こる人のスキルや能力に関する問題や現象を理解するカギを提供してくれています。

ピーターの法則は、昇進と職務能力に関して説明してくれています。現代の多くの組織では、優秀な成果を上げる個人が昇進する傾向にありますが、その昇進が必ずしもその人の能力や適性と一致しているとは限りません。この法則によれば、昇進は往々にして個人をその能力を超えるポジションに置き、結果として組織全体の効率や成果が低下することにつながるとされています。これは、管理職やリーダーのポジションでパフォーマンスが低くなるという形で顕著に見られる現象です。

実際の企業でもパフォーマンスが低い管理職やリーダーが散見されるのは、この記事をお読みの多くの皆さんが体験していることでしょう。これは、ピーターの法則を以て説明が可能なことなのです。

一方のパーキンソンの法則は、特に仕事の管理と効率性に焦点を当てている法則です。この法則が示すように、仕事の量は与えられた時間に応じて膨張し、組織内でのムダな活動や過剰な支出が発生しやすくなります。これは、不必要な会議、過度の報告書作成、そして予算のムダ遣いなど、多くの職場で見受けられる問題です。

実際に、IT化が進んだり業務プロセスの改善が進んでいるはずなのに、一向に仕事量は減らない現場も数多く見てきました。そうした現場では、時間が生まれた分だけまた新たなムダな仕事を生んでしまうサイクルに入ってしまっており、この法則に忠実に従ってしまっているのです。

これらの法則を現代の職場に適用して理解することで、無能なリーダーや効率性の低い業務プロセスがどのようにして生まれるのか、そしてそれにどのように対処すれば良いのかが明確になってきます。また、これらの法則をまずきちんと理解することは、組織内での役割を最適化し、生産性を向上させるための重要なステップとなります。

本記事を通じて、これらの古典的な法則が現代の職場にどのように適用され、我々が直面する日常の課題を解決するためにはどのようにしたら良いのかを考えていきます。

第一章:ピーターの法則の詳細

ピーターの法則の具体的な内容と例

ピーターの法則は、組織内での昇進システムの根本的な問題を指摘しています。この法則によれば、人々は自分の無能さが露呈するレベルまで昇進し続けるとされます。これは、特定の職位での成功が次の職位での成功を保証しないという客観的事実に基づいている法則です。

たとえば、技術的な仕事で卓越した成果を上げたエンジニアが、管理職に昇進する場合、新しい職位では人材管理や戦略立案など全く異なるスキルが求められます。もしエンジニアがこれらのスキルを持ち合わせていなければ、その地位での無能さが露呈し、チームの成果に影響を及ぼす可能性があることは明らかでしょう。

「名選手名監督にあらず」
「名プレーヤー名マネージャーにあらず」
などと言われますが、まさにそのことを指している法則なのです。

無能な役職者が生まれるプロセスとその影響

さて、もう少し具体的に、無能な役職者が生まれるプロセスを見ていきます。無能な役職者が生まれる原因は、個々の能力と昇進システムの不一致から生じてます。昇進は往々にして過去の成功に基づいて行われますが、新しい役職で求められる能力が前の職位で求められる能力とは異なることが多く、ここで不一致が生じているのです。この不一致をクリアできない場合は、役職者による効果的な意思決定の欠如、チーム内のコミュニケーション問題、さらにはプロジェクトの遅延や失敗につながります。そして、組織の全体的なパフォーマンスが低下し、優秀な人材がフラストレーションを感じる原因となることもあります。

また、たとえば専門職などで仮に昇格した新しい肩書で求められる能力が大きく変わらない場合だったとしても、その人の生まれ持っている能力自体は変わらないため、能力の限り昇格し、結果として肩書に見合った能力が発揮できないポジションまで昇格してしまうこともあるでしょう。

ピーターの法則による無能な役職者の影響の実例

ピーターの法則による無能な役職者の影響は、多くの組織で目に見える形で現れます。たとえば、ある製造会社で最も売上を伸ばした営業員が営業部長に昇進しました。しかし、彼は部下の能力を引き出すことができず、チームのモチベーションを維持することも困難でした。なぜなら、売上を伸ばす方法を再現性があるように言語化してまとめることができず、部下への指導に必要なのはその再現性のある言語化された方法だからです。その他にも、最も売上を伸ばしていたころは個人の成績を見ていればよかったところが、部長になったら複数人の成績、延いては部全体の成績を見る必要があり、部下個人個人のマネジメントをすることが部長の役割であるにもかかわらず、個人が売上を伸ばすスキルとは全くの別物であることも原因です。その結果、チームの売り上げは落ち込み、従業員の満足度も低下しました。

また別の事例を考えてみます。新製品開発の課題において専門知識の活用で貢献してきた技術者が開発部長に昇進した場合、求められる能力は専門的な技術的知識の活用による課題解決ではなく、部全体のマネジメントによる組織の成果の最大化です。それを個人的な技術的知識に頼って部の成果を上げようとしても一人の能力分しか活用することができず、結果的に当の本人がボトルネックとなり、組織のパフォーマンスは限定的となって部長としては低い評価にならざるを得ません。

このような状況は、ピーターの法則によって適切でない昇進が行われることで、組織全体の生産性や無能な役職者を見ているメンバーの士気に悪影響を及ぼす典型的な例です。

第二章:パーキンソンの法則の詳細

パーキンソンの法則の第一法則と第二法則の詳細

次にパーキンソンの法則を見てみます。パーキンソンの法則は、組織の成長と効率性に関する二つの重要な原則を提供します。

第一法則は「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」というものです。これは、与えられた時間が長いほど、人々は仕事を広げてしまいがちであることを意味します。たとえ実際の作業に必要な時間が少なくても、余分な時間があると、仕事はその全ての時間を消費します。

第二法則は「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」というものです。この法則は、組織が利用可能な資源に応じて支出を増やす傾向があることを示しています。たとえば、予算が増えると、それに応じて支出も増加し、必ずしも効率的な資源の使用につながらないという現象です。

各法則が仕事の効率と組織の動きにどのように影響するか

パーキンソンの法則は、仕事の効率と組織の動きに深い影響を及ぼします。第一法則によると、仕事は与えられた時間を完全に使用する傾向があるため、組織はしばしば非効率的になりがちです。この現象は、余分な時間があると仕事が不必要に複雑化され、単純なタスクも時間をかけて行われることを意味します。

第二法則は、組織の財政面での挑戦を示しています。利用可能な予算が増えると、それに応じて支出も増えるため、組織はしばしば予算をムダ遣いすることになります。これは、予算の増加が必ずしも生産性や効率の向上につながらないことを意味します。

実際の職場でのパーキンソンの法則の例

パーキンソンの法則は現実の職場で頻繁に見受けられます。

たとえば、ある企業が新しいプロジェクトを開始したとします。プロジェクトの初期には十分な時間が与えられましたが、チームは時間があると感じ、計画段階で慎重に慎重を重ね、いわゆる“分析麻痺症候群”に罹ってしまい多くの時間を費やします。結果として、プロジェクトの実行段階において時間不足に陥り、効率が損なわれました。この例は、第一法則による「時間の膨張」が如何に効率を低下させるかを示しています。

資料作成なども典型的でしょう。本来1日でできる作業のはずが、1週間先に提出すれば良いことになっており、他に仕事がなかった場合、資料作成作業をムダに丁寧にやるでしょう。結果的に、伝えたい中身は変わらないのに時間だけを要した資料が出来上がるのです。派手でカラフルな資料、アニメーションの動きにこだわったPowerPoint資料など、多くの方は目にしたことがあるのではないでしょうか。

また、別の企業では、予算増加に伴い、新たな設備投資や人員の採用が行われました。しかし、これらの支出は実際の必要性に基づくものではなく、結果的に予算のムダ遣いとなり、コストは増えたものの売上に転嫁されることはありませんでした。これは、第二法則が示す「予算に応じた支出の膨張」の一例です。

第三章:無能な役職者とムダな仕事の現実

無能な役職者によるムダな仕事の創出プロセス

無能な役職者が生まれる一つの大きな原因は、ピーターの法則によるものです。能力以上の職位に昇進した人々は、自分の役割を適切に果たせなくなることがあります。彼らは自身の不足をカバーするために、ムダなプロジェクトやタスクを生み出すことがあります。場合によっては、そのさらに上司から気を使った本来不要な“ミッション”が与えられることもあります。これらはしばしば、組織内のリソースの浪費や、他のメンバーの生産性の低下につながります。

たとえば、実際の業務に直接貢献しない多数の会議を開催したり、不必要な報告書の作成を求めたりすることが挙げられます。コミュニケーションをとることのみを目的とした集まり、役職者が出席できなかったからと改めて説明を求められる時間など、経験している方も多いことでしょう。

特に、ラインから外れて部下のいない役職者になると注意が必要です。上司からは部に貢献するもっともらしいミッションを与えられます。「少し外から見て、設備管理部と連携を図って今後の部に必要な設備管理の強化計画を立ててくれ(設備管理部門の本来の業務)」「品質管理部と情報交換しながら部門の横串を刺す不良撲滅プロジェクトをやってくれ(品質管理部門の本来の業務)」などがそれです。そして、自ら動き出そうとするものの、これまでの経験だけでできる役割ではない(本来別の部署で既にやっている)ので分からないことも多く、また仮に何かをやろうとしても実行の手がありません。そんなとき、ラインに配属されているメンバーの手を借りようとします。

ラインの管理職と比較してラインから外れている管理職は往々にして年上であったり入社年度が早かったりするため、無能な管理職からの相談であっても気を使ってメンバーをアサインしてしまうのです。

こうして、ピーターの法則によって生み出された無能な役職者によって、ムダな仕事が増えていくのです。

効率化の努力が逆にムダな仕事を生むパラドックス

効率化を目指す取り組みが、逆にムダな仕事を生み出すというパラドックスもしばしば発生します。これは、特にパーキンソンの法則によって説明されます。

たとえば、IT化によって事務作業の時間を短縮できたとしても、なぜか組織メンバーの残業時間が減らない、もともと月平均20時間残業していたという“仕事の時間枠”を埋めるための別のムダな作業を、さも必要だと行うことは数多ある事例の一つです。

こんな事例があります。もともと手書きの作業日報をExcelに転記して集計していた作業において、生産管理システムの導入によって入力から分析までを一つのシステムに集約しました。結果的にシステムを活用することで作業が完結し、転記や集計の時間が削減されるはずでしたが、転記集計のExcel作業をしている人は時間を持て余してしまい、「作業日報を手書きでやってもらうことは作業員の文章の練習にもなる」「システムへの入力が間違っている可能性がある」と手書きの作業日報をやめることをせず、これまで同様に転記集計し、記載内容のチェックと突き合わせをするようになりました。業務効率化を目的としたITシステム導入のはずが、効率的になるどころか手書きとの二重作業に増えてしまったのです。

また、組織がプロセスを効率化しようとする際、無能な役職者がプロジェクトの必要性を誤って判断したり、不適切な決定を下したりすることがあります。結果として、本来の目的から逸脱した仕事や、過度に複雑化されたタスクが生じ、全体の生産性は低下します。その役職に求められる視野や判断スキルが不足していた場合に起こる事例です。中でも、無能な役職者は特に“やめる”判断をしない傾向にあり、仕事の量が雪だるま式に増加してしまうのです。従って、組織にムダな仕事が生まれてしまうのは、ピーターの法則とも密接に関係していると言えます。

優秀なメンバーが無能な役職者の餌食になるリスク

無能な役職者が創出するムダな仕事は、特に優秀なメンバーにとって大きなリスクとなります。これらのメンバーは、しばしばその能力が組織内で認識され、多くのタスクを任されることになります。しかし、無能な役職者によって割り当てられる仕事は、その能力を適切に活用するものではなく、彼らのキャリアの成長を妨げることがあります。

言い換えると、能力の高いメンバーほど効率良く仕事を行うため、たくさんの仕事を任されると同時に、その任される仕事が将来のキャリア形成に重要ではない仕事も無能な上司によって割り当てられてしまい、時間を浪費することがある、ということです。

また、このような状況は特に能力の高いメンバーのモチベーションの低下につながり、自分だけが多くの仕事をこなしているのに見合った評価にならないなど組織に対する不満を引き起こすこともあり、最終的には才能の流出につながる可能性があります。

第四章:ピーターの法則とパーキンソンの法則の防止策

ピーターの法則の防止策:昇給システムの改革、昇進前の訓練、降格システム

ピーターの法則を防ぐためには、組織の昇給システムと昇進プロセスを見直すことが重要です。

まず、昇給システムを改革し、職務内容の変更なしに昇給ができる仕組みを導入することで、個人が自身の能力を超える職位に無理に昇進する機会を減らすことができます。また、昇進前の訓練プログラムを提供することで、候補者が新しい役割の要求に対応できるように準備することが可能になります。さらに、昇進後に無能と判断された場合の降格システムを設けることで、組織全体の効率を守ることができます。日本企業では、健全に降格システムが機能している企業は非常に少ないです。この降格システムを健全に運用することこそ、組織全体の生産性や働くモチベーションを高いレベルで維持するカギであるとも考えています。

パーキンソンの法則の防止策:作業の標準化、会議のゴール設定

パーキンソンの法則を防ぐためには、作業の標準化と会議のゴール設定が有効です。

作業の標準化を行うことで、仕事の量が不必要に膨張するのを防ぎ、より効率的な作業プロセスを確立することができます。作業の棚卸しをすることはその前提としての必須条件です。作業の標準であればムダな仕事を盛り込む際には承認フローの中でブレーキ機能が働きますし、標準にない作業をやらなくても良いと具体的に指示できます。

また、会議においては、明確なゴールを設定し、時間をムダにしないためのアジェンダを事前に準備し、参加メンバーに共有することが重要です。これにより、会議の時間を効率的に活用し、必要な議論に集中することが可能になります。

実はこれらの内容はいわゆる能力の高いメンバーは無意識にやっていることでもあります。こうしたことの足を引っ張る二つの法則があることを理解し、それぞれの場面に応じて冷静に対処していくことが求められます。

IT化による時間創出の最適な利用方法

IT化は業務効率化のための強力なツールですが、その利点を最大限に活用するためには、生まれた時間をどのように利用するかが重要です。IT化によって生まれた時間は、単に空いた時間を埋めるのではなく、付加価値の高い活動に充てるべきです。

たとえば、従業員のスキルアップトレーニング、新しいプロジェクトの開発、またはクリエイティブな業務に時間を割くことで、組織の成長とイノベーションを促進することができます。

むしろ、新しい付加価値を創造する仕事やプロジェクトを進めることを前提として、強制的にメンバーを新たな業務に配置することから始めることも、人的リソースの有効活用には非常に有効に機能します。

まとめ

これらの法則を理解し、対策を講じることの重要性

ピーターの法則とパーキンソンの法則は、現代の職場における重要な現象を示しています。これらの法則を理解し、適切な対策を講じることは、組織の健全な発展にとって必要不可欠です。

ピーターの法則によって無能な役職者が生まれるプロセスを理解し、昇給システムの改革や昇進前の訓練などを通じて、この問題に対処することが重要です。

また、パーキンソンの法則に対しては、作業の標準化や会議の効率化を図ることで、組織の効率を高めることができます。これらの法則を適切に管理することで、組織はより生産的で効率的な環境を築くことが可能になります。

効率化と生産性向上に向けた産業のさらなる発展への期待

これらの法則に対する理解と対策は、効率化と生産性向上を目指す産業のさらなる発展に寄与します。IT化による時間の創出や、その時間を有効活用する方法の実施は、新しいイノベーションやビジネス機会の創出につながります。さらに、無能な役職者の創出を防ぎ、有能な人材を適切な位置に配置することで、組織全体の能力を最大限に引き出すことができます。

これにより、組織はより柔軟で、創造的な働き方を実現し、産業全体の発展を促進する期待をすることができるのです。


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