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水深800メートルのシューベルト|第896話

変わったことと言えば、粉ミルクしか飲まなかった赤子が、母親の胸に吸いついている光景だけだった。母親はとても幸せそうで、叔母の言っていたことは杞憂ニードレスワリーだったんじゃないかという気がしてくる。


 後ろから大きな音を立てて、ルース叔母さんが入って来た。
「またこの子ったら、レトロな車で大きな体の上官に送ってもらったのよ」
「上官じゃないです」


 僕は、フェリックスの髪をそっと触る。僕に似た金色の髪は、汗でびっしょりと濡れていた。熱がまだ完全には引いていないようだった。

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