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事故当事者のSNSに遺族は激怒。怒りの本質を正しく理解してるのか 傍聴小景 #104(過失運転致死)

どうしても、交通事故死の裁判には慣れることができません。慣れる必要もないのかもしれませんが。

遺族の悲痛な思いを聞くのはもちろん辛いです。
でも、他の事件と違って、故意ではなく過失なので、被告人に同情してしまうことも多くなります。しかし、やはり人が死亡するという最悪の結果に、また遺族の側へ心を引きずりこまれ、そんな心情の一進一退に心が追い付かないのです。

今回もとても辛い話です。


はじめに ~大人しめの被告人と多数の被害者関係者席と~

罪名 :過失運転致死
被告人:20代の女性
傍聴席:平均28人(全2回)

刑事裁判の被告人というのは、9:1くらいで男が圧倒的なのですが、過失運転致死傷でいうと7:3くらいと、若干女性の割合が増えます。スピード違反とか無免許とかの道路交通法違反系だと、また9:1くらいで男なのですが。

被告人は20代の女性
スーツを着用し、とても大人しそうな雰囲気を感じます。法廷に入ると、傍聴席の関係者席に向けて一礼をしました。

そしてその視線の先ですが、9席ほどが関係者席として事前に確保されていました。死亡事故とは言え、この席数はかなり多め。被害者はとても慕われるなどしていたことが容易に想像できます。


事件の概要(起訴状の要約)

被告人は民家が立ち並ぶ狭い路上において、近くに接触しそうになったことから、慌ててハンドルを急激に切り、さらにブレーキとアクセスを踏み間違えたことにより、被害者と接触し死亡させた。

年配の方にありそうな、ブレーキとアクセルの踏み間違えですが、実際に裁判で聞いたのは初めてでした。しかもそれが、20代でというので珍しさがさらに増しています。
ハンドルの急激な操作もあったようですし、亡くなった被害者にとっては本当に唐突なとても辛い事故だったのではないでしょうか。


採用された証拠類 ~事故後に見つけた被告人のSNS~

検察官証拠

事件当時は大学生だった被告人。現在は休学中。

父親のハイエースでサークルの友人8人で遊んだ帰りの事故だった。免許は事故の3ヶ月前に取得したばかりで、父と2~3回運転したのみだった。
被告人は大きくて運転しにくかったと供述しており、同乗していた友人も運転は未熟だったと感じた。

被害者は40代の男性。奥さんと子2人を養っていた。
奥さんの目の前で事故が発生した。被害者は立ち止まっていたが、真っ直ぐにぶつかってきた。
事故後の被告人との話し合いでは、形だけの謝罪だと感じた。塞ぎ込んでるというが、Twitterでいいねをしたり、SNSの発信などを目にして、より傷ついている。

運転技術が未熟な被告人が、いきなりハイエースを運転して起こした事故のようです。
ただでさえ大きい車で初心者向けじゃないのに、家族以外の大勢の同乗者で遊んで帰ってのタイミングで集中力もだいぶ欠けていたのではないでしょうか。

そして後々響いてきそうな、SNS問題。「いいね」を押したり、発信だけで怒るというのは考えにくいので、その内容が問題なのでしょう。
本名でやっていたのでしょうか。それでかつ、遺族サイドも検索してチェックなどしていたのでしょうか。

被害者関係者席も多く、SNSといった、いかにも怒りが増幅しそうな単語も出てきて、この後の裁判がどうなるのかと恐くなりました。


証人尋問 ~その行動に遺族への思いはあったか~

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