下着泥棒に考えさせられる社会のあり方(窃盗) 傍聴小景 #4
裁判ライターの普通です。本日の記事は皆さま無料でお読みいただけます。
昔の小説とかを読んでいると、今とモラルやマナーが全然違うことに、いい悪いでなく面白く感じることがあります。電車の座席でタバコ普通に吸ってたり。
同じ観点で、男性の家事についての考え方、女性の働き方など夫婦の在り方の考えってのもここ20年くらい(?)で一気に変わっていますよね。
今回、紹介する裁判は、そんな夫婦のあり方について、もしひと昔だったらどう捉えられていたのだろうと気にしたくなる事案です。
はじめに
女性の窃盗事案って、女性が被告人の事件の中では決して珍しくはないんです。
ただ、今回の被告人はビシッとスーツで法廷に立っていて、こういうタイプの女性の窃盗事案はすごく珍しい気がしています。女性の窃盗犯はスエット着用が相場と決まっているようなものなので。
これも、勝手な女性のイメージをするな!って女性窃盗連盟、通称・女窃連から怒られたりするのかな。ちなみにそんな連盟無いですよ、念のため。
事件の概要(起訴状の要約)
下着泥棒って言葉は、男性の性的偏向者のための言葉かと思ったのですが、確かにこれも下着泥棒ですね。
ただ、そういう理由以外での下着の窃取というのは相当に珍しい。寒さに耐えるために上着を盗んだ人の裁判は傍聴したことはありますが、この下着はどういう理由なのでしょう。
検察官による証拠や供述提示
相当回数窃盗したと、被告人も各種供述で言っているようなのですが、被害品と照合ができないためなのかわかりませんか、起訴事実は窃盗1点とされていました。そういうもんなんですね。
それにしてもメルカリで転売のためとは時代を感じるなぁ。まぁ同じくこのnoteにしても有料記事を置いていますが、一ユーザーが記事を販売するなんて考えは昔はなかったし、やはり時代は流れますね。
理由はあとで詳しく聞くとしても、関係ないお店を巻き込んではいけません。お店は被害弁償を受け入れなかったようなので、怒っていることがよくわかります。
それにしても、夫はどんなことを言ったのでしょうか。被告人の今後の更正の意味も含め、証人として夫が出廷しました。
証人(被告人の夫)尋問
お~、持っとるねぇ。この方、30歳ちょい過ぎくらいなんですが、これでこの年収はすごい。このnoteの定期購読してくんねぇかな。そのうえで単品での記事購入も頼む。
でも、やはり仕事柄なんでしょうかね、事件のきっかけも大阪への引っ越しによるストレスだったのに、またも引っ越しをして今は被告人とは離れて過ごしているようです。
あーあ、言っちゃった。
会社とかにも学歴や年収をすごく気にする人っていますけど、それで優劣つけ上に立った気になっている人って、小さいって思われているの気付いていないのかな?これ読んで自覚ある人は、マジ気を付けた方がいいですよ。
ちなみに僕も高校・大学とかめっちゃ聞くんですけど、それは単純に学生スポーツが好きだからなんっす。僕が「あっ…」ってなっても、それ偏差値的な話でなく、「スポーツの話題振れないから、何の話をしよう」と困ってるコミュ障なだけなので悪しからず。
もう止めてあげて!
たぶん、この裁判が20年前だったら証人への質問はこんな風にならないんだろうな。まぁ時代背景も違うし、単純比較もおかしいんだけど。
ただ思うのは、ストレス軽減は確かに犯行の抑制になるかもしれないけど、その点だけ突き止めたって仕方ないと思うんだよなぁ。いや、そりゃあ被告人に多少同情はできても、何十万円分も万引きするのは、それは全然別の話だよ。
でも、そんな感じで証人を問い質し続け、弁護人の質問は終了してしまいました。本当にそれでいいのか、弁護人よ。
代わりに検察官が証人に質問します。
検察官の方が、よっぽど弁護人っぽい質問をしています。弁護人、仕事せい。
被告人が元々どういう性格かはわかりませんが、大量のものを盗んだという行為は発生した訳ですから、それが癖にならないよう監督の重要性を感じ取ってもらうのはとても大事だと思います。
それにしても、裁判の場においてもそういった奥さんへの気遣いの話が挙がるなんて、やっぱ時代は変わっているんだなと思います。
最後に裁判官が質問します。
今度は裁判官が検察官のような質問をしていました。
二度目はないぞという、危機感をしっかりと持てているかということですね。
検察官が弁護士の代わりに、裁判官が検察官の代わりにと、お互いを補ってたっぽいこのシーンは、裁判ってのは単に罪の重さを決める場でなく、社会で次なる犯罪を生まないための取り組みであることがよくわかります。かなり、いいように捉えてはおりますが。
続いて、被告人本人にも話を聞きましょう。
被告人質問
もう、それプロやん。旦那じゃなく、俺の関心を引いてどうすんだ。私は裁判一筋よ。
しっかり意識的に仕入れを意識し(在庫管理がまばらそう)、売り上げを意識し(かわいいと思うもの)、そして継続的に仕入れる。社会人的、ポイントを押さえた犯行に、職業的犯行と言われても仕方ない気が..。
続いて検察官
ごめん、女性がどう思うかわからないけど、そもそものきっかけはそうかもしれないけど、この犯行に対する積極性を動機のせい一つにするのは、さすがにちょっと厳しい気がする。
最後に裁判官が聞きます。
「育児なんて休みみたいなもんや」は論外ですけど、だからといって盗みを繰り返す判断も論外です。
ただ、やっぱ考えなきゃいけないのは、今回のSOSはどうしたら旦那に届いたのか、もしくは旦那は受け取ることができたのかということ。
言い方悪いですが、起きた犯罪はこれくらいで済みました。でも、こういうSOSの出し方、SOSの受け取り方の問題ってどんな会社でも似たような事象ってあるんじゃないでしょうか。少なくとも僕の社歴上はあった。
まさか下着泥棒の話をしていて、会社組織について考えることになるとは。
論告・弁論
後日の判決を見ることはできませんでした。
「下着泥棒で会社組織を…」なんて先ほど書きましたが、意外とこういう事件の方がその時代に沿った人と人とのコミュニケーションを具現化してて、わかりやすいのかなと思ったり。
今回の話は一部ですが、YouTubeでも話しています。本日書いた内容と情報量が違うので、見え方がまた違うと思います。
他にももう1件、下着泥棒の話などしているのでもしよかったら、こちらもご覧ください。
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毎月約100件の裁判を傍聴している中から、特に印象深かったもの、読者の方に有意義と思われるもの、面白かったものを紹介します。 裁判のことを…
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