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歳時記を旅する47〔浅春〕中*浅春や語尾曖昧に読経終ふ 

 佐野  聰
(平成七年作、『春日』)

 「浅春」は「二月ごろ、春になってもまだ寒く、春色なお十分には整わぬ季節である。早春、初春とほぼ同じ時期を現すが、「浅し」と言ったところに、特殊な感情が籠る。」(山本健吉『基本季語五〇〇選』)という。
 言い換えれば、暦の上で、春の盛りの頃(将来)から遡った比べたのが早春、冬(過去)と比べたのが初春で、浅春とは暦を離れて、整った春のけしきと比べている表現だろう。
 句は、堅苦しい経典の文言の最後かそのあとなのか、僧がむにゃむにゃ何やら唱えているところ。その声は、寒が明けて緩んだ寒さのように、淡くてやわらかい。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和六年二月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)



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