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歳時記を旅する40〔灼く〕後*応援の声まで日焼け外野席 

磯村 光生
(平成二十七年、『合同句集Ⅱ 風友』)

(文章は「歳時記を旅する40〔灼く〕中*ナイターのどよめき及ぶ官庁街」からの続き。昭和23年8月17日、横浜公園球場(現横浜スタジアム)でのプロ野球初ナイターのお話です。)

 初ナイターの巨人-中日戦、二時間前に札止めになるほど超満員だったそうだが選手には受難だったらしい。
 この日、二塁手で出場した巨人・千葉茂の話。「夜間試合と言っていたが、ホンマ、夜間の試合や。ボールがまるで見えんのやから。とにかく暗かった。川上(哲治)の打球がエンタイトル二塁打かどうかでモメたが、暗いし、客は手を出すで、そりゃ分からんわな。外野手が打球を追ったら、ボールが三つも四つもあるので面食らったなんて笑い話もあったな。試合前の練習で拾い忘れたボールがいっぱいあったワケや。とにかくあのノーコンの中尾(碩志)が完投したのも(3対2で巨人)、暗さのおかげや」(『週刊ベースボール』二〇一五年九月十四日号)

 句の日焼けた声は、言葉汚くとも温かい。それが外野席。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和五年七月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)


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