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リスキリングの誤解・勘違い ~当然(当たり前)のことを愚直に、丁寧に~

 昨今注目されているリスキリング。そもそもリスキリングとは、社会や市場の変化に適応するために必要なスキルを習得することで、実務における成果を目的とするものです。しかし、これまで多くの企業の実態(研修制度や支援策)として、社員の自己啓発マインド喚起や知的好奇心を満たしたり、資格取得が目的になっているケースが多いです。  
 新しい知識が習得できたことで満足し、実務における成果を求めないまま、次のスキル習得に望もうとします。これを繰り返していると、「学習後の振り返り(リフレーミング)無し⇒学んだことの忘却⇒新たな分野の学び⇒振り返り(リフレーミング)無し⇒学んだことの忘却⇒新たな分野の学び・・・・」の悪循環に陥ります。これでは実務での成果につながりにくいでしょう。  
 リスキリングを実務の成果につなげるには、「学習⇒実践⇒成功体験⇒習慣化」のプロセスが重要になります。有名なデービット・コルブの経験学習理論も参考になります。つまり、「具体的経験」、「内省的反省」、「概念化・抽象化」、「能動的実験」の4つのステップからなるサイクルを繰り返すことで経験学習が行われるという理論です。特に「内省的反省」場面で、上司や部下、同僚などと学びの振り返り(リフレーミング)の対話(Dialogue)の機会を設けると良いかも知れません。座学などによって得られる「学習知」は、体験から得られる「体験知」を伴うと腹落ちします。一旦腹落ちすると、継続的に実践しようというモチベーションが高まり、継続実践により知識が習慣化することで成果につながりやすくなります。
 企業内研修等でも学びの目的を、知識の習得ではなく、実践による成功体験の獲得としてはいかがでしょうか。そのためには、実践場面での活かし方まで学ぶ必要があります。知識を習得しても現場でどのように実践すればよいかがわからなければ、研修講師に積極的に質問し、実践方法までイメージすることが大切です。 また、「面倒くさい」という感情が生じると実践を妨げます。人間は誰しも、慣れないことを実践する場合、ストレスが伴います。この「面倒くさい」によるストレスの克服がポイントです。そのためには、心の中に生じた「面倒くさい」をできるだけ客観的に言語化することです。その上で、なぜ実践しなければならないかの理由を明確化します。理由は人間の行動に強い影響を与えるものです。
 繰り返しになりますが、リスキリングの目的はあくまでも実務での成果につなげることです。知識や資格の取得はそのための手段に過ぎません。手段が目的化し、実務の成果につながっていないまま満足していないでしょうか。この点再度点検してみる必要があるかも知れません。

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