第4話「VINCENT ANTON FREEMANという名前を深読みすると、どんな物語が見えてくる?」 ~『GATTACA(ガタカ)』徹底考察~
壮大かつロマンチックな物語よね…
何を言ってるのかわからない人は前回を未読の人だな。
まずコチラからどうぞ。
次は「適正者:ジェローム・ユージーン・モロー」に成り済ます「不適正者:ヴィンセント・アントン・フリーマン(演イーサン・ホーク)」と、その弟である「適正者:アントン・フリーマン(演ローレン・ディーン)」の名前の秘密に迫ろう。
兄やんのファーストネーム「VINCENT」の由来は、ラテン語の「克服・勝利」やったな。
生後すぐの検査で心臓に異常が見つかり「寿命は長くて30年」と言われたもんやさかい、オトンは「VINCENT」と名付けたんや。長生きして欲しくてな。
宇宙飛行士を目指すには致命的なハンディキャップやけど、ヴィンセントは名前の通り、執念で運命を克服したんやで。
弟アントンとの遠泳チキンレースにも勝利したわね。
「VINCENT」は、もうこれでOK?
いいや。まだ重要な意味が込められている。
西洋社会において「VINCENT」といえば「サラゴサの聖ヴィセンテ」のことを指すんだ。
聖ヴィセンテ…?
世界一セクシーなギタリスト「St. Vincent(セイント・ヴィンセント)」の名前の由来となった聖人ね。
間奏のギターソロが凄まじ過ぎ…
「サラゴサの聖ヴィセンテ」は、3世紀後半にイベリア半島で活躍した人物だ。
当時まだローマ帝国ではキリスト教が認められていなかったので、聖ヴィセンテは、ありとあらゆる残酷な拷問を受けた。
それでも最後まで屈せず殉教したので聖者と崇められ、今でもスペインやポルトガルを中心に人々の信仰を集めている。
港町バレンシアとリスボンの守護聖人でもあるんだよ。
『サラゴサの聖ヴィセンテ』作者不明
縄で首に繋がってる巨大な石の円盤は何だ?
詳しくはわからないけど、聖ヴィセンテは「リング状の石の円盤」とセットで描かれる。
あれを錘にして海にも沈められたんだよね。よく見ると窓の外には、その光景が描かれてるでしょ?
「VINCENT」と「大きな石のリング」って…
なんだか『ガタカ』っぽい…
「ぽい」じゃなくて「そのもの」なんだよ。
うわあ…
こっちの絵のリングは、さらに「土星の環」そのもの…
それだけじゃない…
最初の遠泳チキンレースで弟アントンに負けた時にも「聖ヴィセンテ」のモチーフが再現されていたわね。
どこに!?
力尽きたヴィンセントは、浮かんでいた海藻を枕にして、水面に横たわっていた…
あれは「海に浮かぶ聖ヴィセンテ」の宗教画そのものよ…
マジかよ…
頭の後ろの「浮き輪」みたいに見える聖ヴィセンテの「光背」を、「海藻の枕」で表現していたのか…
なかなかトンチが効いてるよね、アンドリュー・ニコル監督は。
ファーストネーム「VINCENT」については、これくらいでいいだろう。
次はミドルネーム「ANTON」やな。
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