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ゆっくり深読み 中島みゆきの『ヘッドライト・テールライト』その30「大林宣彦&横溝正史の 金田一耕助の冒険」


前回はこちら



A MOUSOU


(本作品は著者の身体に憑依した横溝正史の霊が世間で駄作の烙印を押されている大林宣彦の映画『金田一耕助の冒険』を種明かしするという妄想です。ネタバレどころか横溝文学の秘密の核心部分にも踏み込みますので予め御了承ください)




なんてこった… 信じられない…

阿久悠&沢田研二の歌『時の過ぎゆくままに』と、マイク・ニコルズ&ダスティン・ホフマンの映画『The Graduate(卒業)』は、フラ・アンジェリコの絵『受胎告知』を元ネタにしたものだったとは…



ふふふ。

だから映画『卒業』のオチは「4522」という数字なのだよ。



4522?

あの黄色いバスのナンバーですか?



時にストーリーテラーは数字を使って何かを伝えようとする。

米津玄師や小田和正じゃないけど、大切なことは言葉にならない、言葉にできない、ものだからね。

『三四郎』を書いた夏目漱石だってそうだ。


数字で何かを伝える、と言いますと?


例えば、トッド・フィリップスの映画『JOKER(ジョーカー)』…

逮捕されたアーサー(ホアキン・フェニックス)が移送される際に乗っていたパトカーのナンバーは「9189」だった。



確かにあのナンバー、めっちゃ意味深だな…

でも「9189」って、いったい何の数字だろう…



ここに知恵が必要である。


はい?


思慮のある者はパトカーの数字を解くがよい。

その数字とは人間を指すものである。


9189 は人間を指す? 誰ですか?


2つの「9」は2つの「g」…

「1」は「l(エル)」…

そして「8」は2つの「o」…

つまり 9189 とは golgo(ゴルゴ)だ。



ゴルゴ? ゴルゴ13のゴルゴ?



ゴルゴ13のゴルゴとは golgotha(ゴルゴダの丘)のこと。

クリームの曲『WHITE ROOM』をBGMにして描かれるあのシーンは、ゴルゴダの丘で起きた出来事「イエス・キリストの死と復活」を模したものになっている。

映画『ジョーカー』とは、自分をアーサーと呼ぶ男が精神病院でカウンセラーに語った話であり、その話の内容は映画に出演する俳優の代表作をつなぎ合わせた構成になっている。

そしてアーサー役のホアキン・フェニックスの代表作といえば、イエス・キリストを演じた映画『Mary Magdalene(マグダラのマリア)』だ。



なるほど…

だから車のナンバーは「ゴルゴ」なのか…


車のナンバーに隠されたメッセージといえば、宮崎駿のジブリ映画『千と千尋の神隠し』も忘れてはいけない。



荻野家の愛車アウディA4クワトロのナンバーですか?

多摩34 へ1901でしたね。



どういう意味が隠されていると思う?


「1901」の中に小さい「-」があって「19-01」だから「18」…

つまり『ヨハネの黙示録』に出て来る「獣の数字666」のことだという深読みを聞いたことがありますが…


ずいぶんと浅い深読みだな。


違うんですか?


その読みも間違いではないが「へ1901」の「へ」が説明できていない。

そしてもう1つの「多摩34」の方も。

「獣の数字666」以外にもっと重要なメッセージが隠されているのだよ。


「多摩34」と「へ1901」…

いったい何でしょうか?


ヒント。私の場合は「神戸35 へ1902」だな。


神戸? そして 34 が 35、1901 が 1902?

なぜ数字が1つずつ増えているのですか?


私は「34」と「へ1901」の「次の年」に生まれたからだよ。

神戸で、明治35年・西暦1901年に。



横溝先生は、神戸で、明治35年・西暦1902年に生まれた…

つまり「多摩34 へ1901」とは…

「多摩で明治34年・西暦1901年」に生まれたという意味?


その通り。


誰なんだろう?

明治34年・西暦1901年生まれといえば、梶井基次郎、海音寺潮五郎、山口誓子、円谷英二、岡潔、佐藤栄作、そして昭和天皇…

多摩で生まれた人なんていないな…



それは人ではない。


人ではない? じゃあ何なんですか?


ヒント1、流される靴。



あの靴?

あれは日本テレビの社員でジブリ作品の製作に携わっていた奥田誠治の娘 千晶ちゃんの靴なんですよね?

宮崎駿の別荘に遊びに来ていた時、実際にあった出来事なんだとか…



なぜそんな話を真に受ける?

少しは人の話を疑ってみる習慣をつけたほうがいいぞ。

特にクリエーターなどという人種の話なんて9割が作り話だからな。創作者だけに(笑)


え? 千晶ちゃんのものではないとしたら、あれはいったい誰の靴?


ヒント2、流される靴は、流される顔。



カオナシ?

もしかしてカオナシが生まれた年が明治34年・西暦1901年?


そんな設定はない。


じゃあ何なんですか?


ここに知恵が必要である。


またですか?


思慮のある者は車のナンバーを解くがよい。

そのナンバーとはカミを指すものである。


カミ? GODの神?

明治34年・西暦1901年に生まれた神なんているんですか?

まさか昭和天皇?


だから人ではないと言っただろう。

カミとはゴッドとヘアーの駄洒落。つまり「髪」だ。


明治34年・西暦1901年に生まれた「髪」?

もしかして与謝野晶子の『みだれ髪』ですか?



そう。『みだれ髪』の表紙を横にしてごらん。


横に? なぜ?


いいから、やってみたまえ。


わかりました…

こうですか?


♬見てごらん、よく似ているだろう、誰かさんと♬


ん?

ええーーーーーっ!?



『みだれ髪』表紙のイラストは、横にすると「流れ靴」に見える。

つまり「流れ靴」の千晶ちゃんとは、「みだれ髪」の晶子のことだ。


與謝野晶子
(1878-1942)


しかし与謝野晶子の処女歌集『みだれ髪』は「多摩」生まれではないでしょう?

晶子と鉄幹が住んでいて東京新詩社の社屋を兼ねていた家は、渋谷のド真ん中にありました。



もう代々木上原の話を忘れたのかい?

三四十分前に話したばかりだというのに。



『夢の中の女』の舞台 代々木上原ですか?

何だか随分と昔の話だったような気がするのはなぜだろう…

三四十分前のことが、三四十日も前のことのように思える…


クリストファー・ノーランの映画『INCEPTION』の見過ぎだな。

『インセプション』といえば、あの映画も数字に秘密が隠されていた。



暗証番号528491のことですか?



あれはカントリー歌手 Larry Gatlin(ラリー・ガトリン)の誕生日を逆さにしたものだ。



ラリー・ガトリンの誕生日?

なぜ『インセプション』とラリー・ガトリンの誕生日が関係あるのですか?


映画『インセプション』は、途方もない妄想に取り憑かれた男が、仲間たちと世界を転々としながら、最後は「落ちる」ことで愛する者の待つ家に帰る物語。



そうですけど、それが何か?



ラリー・ガトリン最大のヒット曲は『HOUSTON(means I'm one day closer to you)』。

日本語に訳せば『ヒューストン(は君のもとへ辿り着く日)』。

サビの出だし「ひゅーーーーーーすとん」が印象的な歌だ。


何が言いたいのですか?


『HOUSTON(means I'm one day closer to you)』の歌詞を、よーーーーーく考えてみたまえ。



ん?


ふふふ。話を与謝野晶子の『みだれ髪』に戻そう。

この処女歌集は渋谷にあった住居兼社屋で誕生した。

今でこそ渋谷は都会ヅラしておるが、明治の頃は代々木と同様に東京市の外、田園風景が広がるド田舎だった。

住所も豊多摩郡の渋谷村だからな。



豊多摩郡… 渋谷は多摩だったんですか…


明治時代に自動車は無かったが、もしあったら今のように渋谷の住民は品川ナンバーではなく多摩ナンバーだった。

だから宮崎駿は千尋が乗る車のナンバーを多摩ナンバーにしたのだな。

つまり「多摩34 へ1901」には、豊多摩郡で明治34年・西暦1901年に出版された与謝野晶子の『みだれ髪』、というメッセージが隠されていたというわけだ。


なるほど…

しかし「へ」は?


へ?


なぜ「1901」の前の平仮名は「は」でも「ひ」でも「ふ」でもなく「へ」なのですか?


ああ、あの「へ」のことか。

あれは「屁」、オナラのことだ。


屁? おなら?


「屁1901」で「西暦1901年」と読む。

宮崎駿の謎かけ、わかるかな?


Hayao Miyazaki(1941- )


「屁1901」で「西暦1901年」と読む?

どういうことですか?


西暦は英語で何という?


ADですけど。

Anno Domini(アンノ・ドミニ)の略。


それは君がクリスチャンだからだな。

荻野家も宮崎駿もキリスト教徒ではない。

まったく君たち西洋人というのは、自分たちが世界の中心だと思っているからタチが悪い。


あっ… そうでした… すみません…

ここはCEと言うべきでしたね。


その通り。

非クリスチャンに配慮した中立的表現では、西暦を英語で「Common Era」と呼ぶ。

だから「へ1901」なんだな。


なぜ「Common Era」だと「へ1901」になるのですか?

ヒントをください。


いいだろう。

ヒントはジャニス・ジョプリン。



ジャニスがシャウトしているのは「Common」じゃなくて「Come on」の短縮形「C'mon」ですよ。

日本人には同じように聞こえるでしょうが。


そう。我々日本人には「Common」と「C'mon」は同じように聞こえる。

そして「Era」と「Error」も。


確かに Era(エラ)と Error(エラー)も日本人にはほとんど区別がつかないでしょうね。


つまり Common(コーモン)の Era(エラー)だから「へ」。



はい?


Common Era は「肛門のエラー」だから屁。

だから「へ1901」で西暦1901年。



common と 肛門… era と error…

なんてこった…


宮崎駿を甘く見ると痛い目に遭うぞ。

彼はただの天才芸術家ではない。駄洒落やギャグも一級品なのだ。



トッド・フィリップス『ジョーカー』の「9189」…

クリストファー・ノーラン『インセプション』の「528491」…

そして宮崎駿『千と千尋の神隠し』の「多摩34へ1901」…

では、マイク・ニコルズ『卒業』の「4522」には、どんなメッセージが…



映画『The Graduate(卒業)』は、フラ・アンジェリコの絵『受胎告知』が元ネタになっている。

だからラストシーンで二人が「バス」に乗り込む際に「SANTA BARBARA」の文字が映し出された。

「SANTA BARBARA」の「バス」だから、オチが「4522」なのだな。



バスにサンタバーバラの文字?

ただ単に、映画の舞台が南カリフォルニア、ロサンゼルス郊外だからでは?



天才芸術家のやることには全て意味と意図がある。

ただ何となく映してみた、なんてことは無いのだよ。


目に映る全てのことはメッセージ、ということですか?


というよりは…

♬あの人のママに会うために♬

だな。


え? ルージュの伝言?



名匠マイク・ニコルズは、しっかり「SANTA BARBARA」の文字が映るアングルで二人を「バス」に乗せ、最後尾のあの場所に座らせ、乗客たちを振り向かせ、最後に「4522」の文字で物語を〆た。

このメッセージが、君にはわからんのかね?



ここから読み取れるメッセージ…

まったくわからない。ヒントを教えてください。


ヒント。

SANTA BARBARA(サンタバーバラ)とは聖バルバラのこと。

聖バルバラといえば?


聖バルバラといえば「風呂」ですね。

箱入り娘として育てられ、変な男が近づかないように離れの建物に幽閉されていたバルバラは、親が選んだ結婚相手を受け入れなかった…

不審に思った父親がバルバラの部屋を調べると、風呂場の窓に三位一体の真理を落とし込んだ秘密の細工が施されていることに気付く…

父親がバルバラを問い詰めると、バルバラは誰にも見られない風呂場でこっそりと、禁じられていた異教の神イエス・キリストに祈りを捧げていたことを告白する…

自分は誰のものでもなく主イエス・キリストのはしためだと言うバルバラに激怒した父親は、バルバラを一家の恥だとして親子の縁を切り、ついには処刑してしまった…


『De Heilige Barbara van Nicomedië(ニコメディアの聖女バルバラ)』
Jan van Eyck(ヤン・ファン・エイク)


要約ありがとう。その通りだ。

サンタバーバラといえばバス。

つまり「bath(風呂)の窓」と「bus(バス)の窓」の駄洒落だな。


は?


フラ・アンジェリコの絵『受胎告知』は、マリアのいる場所の奥に部屋がある。

まるで風呂場、バスルームのような部屋が。


確かに、入り口が狭くて手前部分しか見えない部屋があります…

壁の高い場所に小さな採光窓があり、腰掛けの長椅子もあって、まさにバスルームの脱衣所のよう…

ちょうど天使ガブリエルのいる場所の壁の向こうに、浴槽があるのかもしれない…



あそこに水溜まりがあるのは、壁の向こうの浴槽から水が漏れてきたからかもしれない。

ユーミンの『やさしさに包まれたなら』では「雨上がり」だからということになっているが。



あっ… では先程の『ルージュの伝言』も…


『ルージュの伝言』のバスルームは、こっちの『受胎告知』だな。

赤いシャワーカーテンの前で、夫以外の子を身籠ってしまう話、つまり「浮気」の話が交わされている『コルトーナの受胎告知』。



ああ… だから「あの人のママに会うために」だったのか…


そして映画『卒業』ラストシーン「サンタバーバラのバス」は、フラ・アンジェリコの『コルトーナの受胎告知』を模したものになっている。

あの絵に描かれるマリアは、まるで花嫁のように白いレースのベールを被っているだろう?



なんてこった…

天使ガブリエルと聖母マリアの間にある柱を、ベン(ダスティン・ホフマン)とエレーヌ(キャサリン・ロス)の間にある窓枠で再現していたのか…


聖霊の光は、バスの斜め右上に当たる光で再現されている。

そして受胎告知の文字も…



では「4522」とは?


あのラストシーンでは主題歌の『The Sound of Silence』が流れていた…

そして最後に映し出されるのは、バスの外壁に書かれた文字「4522」…

これとよく似た歌詞がなかったかな?


5番の「預言者の言葉は地下鉄や安アパートの壁に書かれている」ですか?



ポール・サイモンの出世作『SOUND OF SILENCE(サウンド・オブ・サイレンス)』は、フラ・アンジェリコの絵『コルトーナの受胎告知』を題材にしたものだ。


え?


ポール・サイモンはフラ・アンジェリコの『受胎告知』を妄想的解釈して歌詞を書いたのだよ。

壁に預言者が描かれているだろう?


ああっ!

つまり外壁に書かれた「4522」とは、預言者イザヤ…



マリアの処女懐胎とは、旧約イザヤ書の救世主の預言「見よ、おとめが身籠り男の子を産む。その子はインマヌエル(神と共にある)と呼ばれる」が成就したもの。

だからフラ・アンジェリコはあの場所に預言者イザヤを描いた。

つまりバスに書かれた数字「4522」も当然イザヤの預言ということになる。


4522… 45章22節ということか…


Isaiah 45:22
“Turn to me and be saved,
all you ends of the earth;
for I am God, and there is no other.

「わたしの方を振り返りなさい
 そうすれば救われる
 地の果ての者たちよ
 わたしは神であり
 わたしの他に神はいない」


ああ… だからバスの乗客は皆、うしろを振り返ったのか…



あのバスの乗客は皆カリフォルニア州サンタバーバラ周辺に住む人たち。

カリフォルニアは西の地の果てだな。



なんてこった…

映画『卒業』も主題歌『サウンド・オブ・サイレンス』も、フラ・アンジェリコの『受胎告知』が元ネタだったとは…


ふふふ。「彽徊」から思わぬ長話をしてしまったな。

では夏目漱石『三四郎』最終章、丹青会の『森の女』に戻ろうか…



つづく



ポール・サイモン『SOUND OF SILENCE(サウンド・オブ・サイレンス))』の解説はこちら。


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