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「お金」を減らす「インフレ」。ー 余っていたはずが一転 "奪い合い" へ。

 最近「お金」の減り方が激しい。そんなことを感じている方も多いのではないだろうか。やたら消費税@10%も気になるし、アメリカではチップまで@10~15%→@20~25%への「値上げ」5,000円の品物が6,000円になれば消費税は▼500円から▼600円に上がる。なるほど、税収が過去最高の71兆円になる訳である。こうなると「お給料」が上がらないとやっていけない。これが「インフレ」であり消費税はその一部だ。

 余っていたはずの「お金」は一転 "奪い合い" へ

 4年前「損切丸」を始めた時に「インフレ」を前面に押し出す形になってしまったが、当初は反応が芳しくなかった。  "2016年からインフレ転換説” (苦笑)の筆者としては事前準備の意味合いで書いていたのだが、*世間の "同意" を得られるようになったのはごく最近

 ちなみに筆者はいつ聞いても①株高②タワマン暴落ばかりを唱えているような、いわゆる「インフレ芸人」ではない(笑)。10年前に「損切丸」を始めていたら間違いなく「預貯金」を勧めていた「デフレ」なら「預貯金」は最強の「投資」だからだ。当時稼いだ「お金」のほとんど何もせず「預貯金」で持ったまま。そのお陰で今の自宅が安く買えた(@2011年)。母に「株」を諦めさせるための説得もしている(参照:「お金のマニュアル」-損をしないコツ- 其ノ3 「清貧思想」と日本人の投資②|損切丸 (note.com) )。

 「日本は通貨発行権があるからいくら借金しても大丈夫」

 2018年以降「過剰流動性相場」が続いた事で、日本では「XXXミクス」信奉者を中心にMMT(現代貨幣論)論者が幅をきかせた。同時期に流行っていた「ガチホ」「ほったらかし投資」も同根だろう。

 果たして本当にそうだろうか?

 「国の借金=国債は国民の資産」

 ??? これも良くあるレトリック(詭弁)。だが、これに引っ掛かるのは「借金」の本質を理解していない証拠。例えば住宅ローンなら返済原資は働いて得る「お給料」。では国の借金の返済原資は? そう「税金」では「税金」を払うのは?「国民」である。

 つまり国債=国民の「借金」が正解。

 最近になってこれがヒタヒタと身近に迫ってきている。「お給料」の半分が国に持って行かれる「五公五民」なる言葉が流行っているが、MMTとはえらい違いだ。みんなそろそろ騙されてきた事に気が付き始めた。

 日本に通貨発行権があるのは事実だが、ではアルゼンチンはどうして9回もデフォルト(債務不履行)を繰り返すのか株を発行できる企業だって株をドンドン発行すれば潰れないはずでは?

 答えは簡単。発行量を増やせば買う人がいなくなる。これは商品も同じで、売れない商品をドンドン作れば「値段」≓「価値」が下落する。トリッキーなのは株と違い「通貨」には「値段」がついていない事。だが供給が多過ぎれば "陳腐化" するのは「株」も「商品」も「通貨」も同じ。敢えて言えば「通貨」は為替レートで相対価値が示される「円安」とはそういう事。つまりドンドン「値段」が下がっている≓ "陳腐化" している。

 「借金」をドンドン増やす ≓ 通貨発行量が増える ≓ 価値の"陳腐化" 

 「借金」を返せないような企業の株は敬遠されるのと同様、「通貨」も返済能力が問われるまだ日本は世界第3位のGDPを誇る経済大国だけに、アルゼンチンのように一気にデフォルトにはならない。だからこんな状況でも10年JGBは@0.4%台で済んでいるわけで、皮肉にも「国債無制限買取オペ」なんて "狂った政策" が実現している。

 だがどんなものにも限度がある

 6/10(日銀)6月貸出・預金動向:
 銀行・信金計の貸出平均残高 603兆3,615億円(前年比+3.2%)
 2000年1月以降で最高

 不動産関連の融資を中心に銀行貸出が順調に伸びているようだ。実際筆者の自宅の周り(世田谷区、目黒区)では更地になったと思ったら新築の家がバンバン建っており、「借金」が増えているのは事実だろう。「お金持ち」でさえ相続対策で「借金」したりする。

 これが日銀の金融政策にどういう影響を及ぼすか。「資金繰り」の観点から考察してみよう:

 6月末時点で日銀は583兆円ものJGBを保有しているが、そのほどんどを銀行が日銀に預ける「当座預金」544兆円で賄っている。これは銀行が国内預金1,245兆円のうち①国債▼147兆円②貸出▼603兆円等に振向けた後の「お金」の "余り" 

 つまり銀行の「貸出」が増えるという事は日銀の「当座預金」が減る事を意味する。結果、足りなくなった「お金」は日銀が市場から調達するしかなくなる。これは中央銀行とて民間銀行と同じである。

 実はここ数年、無理な政策が祟って日銀も「資金繰り」で綱渡りが続く

 2020.9.14. 「政府預金」の謎。 ー 日銀バランスシート速報@9/10。|損切丸 (note.com) でも解説したが、「政府預金」=財務省からの「預け金」≓ 短期国債の前倒し発行、で「資金繰り」を凌いできた経緯がある。

 筆者の手元記録では2022年2月10日に71兆円に達した事があり、その日TONAR無担保コールO/N金利、日銀の政策目標金利)は@▼0.007%まで上昇。市場から「お金」を吸い上げた結果、短期金利が上昇した。

 幸か不幸か、2022年4月以降「ゼロゼロ融資」を含む「コロナ対策貸出」が152兆円 → 91兆円と▼61兆円も回収されたため日銀の「資金繰り」も何とかなってきた。だがここからは "胸突き八丁"更に銀行貸出が増えて「当座預金」が減るようなら、TONARを含め円短期金利の上昇は不可避。つまり「マイナス金利政策」は物理的に継続不能に陥る。

 抜け目のない前々首相も前総裁もこの辺りの事情を知ってさっさとお辞めになったのでは?(苦笑)。市場参加者も含め「中央銀行・万能説」を強く信じている人達もいるようだが、所詮FRBも日銀も銀行の1つに過ぎない「資金繰り」に詰まる事はあるわけで「万能」ではない。結局**マーケット ≓ 国民生活がその帰趨を決める

 **1つ例外があるとすれば「お金」をバンバン刷る事。だがこれは最後の手段。上述のように価値の "陳腐化" を覚悟しなければならない。古くは第一次世界大戦後のドイツで「100兆マルク紙幣」が発行されたり、最近では「100兆ジンバブドル紙幣」↓(2008)。上手くいった例しがない。

 今年に入ってからの「円安」はマーケットからの警鐘。今日(7/10)JGB市場で金利が上昇しているが、これは "予兆" か、それとも「金利正常化」に対する期待の現れか。ひょっとすると "日本銀行村" では "内部通達" が廻っているのかも...。いずれにしろ「円」から目が離せない状況が続きそう。

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