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日本で起きている「構造的人手不足」。 ー NHKスペシャル ”超・人手不足時代” から。

 株式会社経営共創基盤代表取締役CEO 冨山氏:
 「この人手不足倒産を止めてはいけません」

 NHKスペシャル ”超・人手不足時代” でコメントされていたが「損切丸」もほぼ同じ意見。なかなか興味深い内容だったので、再放送や見逃し配信で一度ご覧になることをお勧めする:

 冨山和彦さんが“直言”超・人手不足時代をどう乗り越える?[NHKスペシャル&日曜討論] | NHK - YouTube

 ある試算では2050年までに▼1,100万人もの労働力が不足「人手不足」の激しい介護の現場では▼25%も労働力が足りなくなる。例えば週4回ケアマネージャーが来ている所は週3日に減らさざるを得なくなる計算。

 「それは切り捨てだ」。そういう反論はもちろんあろう。だが筆者のように「金利」とかマーケットを主に見ている立場からすると、どうしてもマクロ(全体)で考える。「最大多数の最大幸福」というやつだが、厳しい言い方になるが、ここまで落ちてしまった日本はまさに芥川龍之介の「蜘蛛の糸」。多くがぶら下がり過ぎて糸が切れて全員落ちてしまっている。

 「お金に関しては感情論は厳禁」

 「損切丸」ではそういう主張を繰り返してきた。「かわいそう」とか「けしからん!」で相場は動かない。あくまで数字やデータがものを言う

 番組では「生産性の向上」というキーワードが使われているが、違う言い方をすれば「客単価を上げる」あるいは今風なら「コスパがいい」。同じ仕事なら家族3人の零細よりも1,000人の会社で回した方が規模のメリットが出て来る。*IT化やDX(デジタルフォーメーション)の投資も進めやすい。

 *ある地方のバス会社がAIを使って利用者の予約を管理し、それまでの定時運行を運行ルートを適宜買えるなどして無駄を省きバスも小型化して大型免許を不要にした事でドライバー不足も解消、パーヘッド(per head)の「単価」は向上=「生産性が上昇した」。運転免許を返上した筆者の田舎の母などにとってもぜひ導入して欲しいシステムである。

 これを阻んでいたのが政治。票田は街の商工組合等に固まっているため、税制もサラリーマンより事業者、特に個人や中小零細の事業主に有利にしてきた病院や飲食店 ↓ もそうだが、結果小規模な施設・店舗が増殖昭和の高度成長期はそれでもWin-Winでやってこれたが「バブル崩壊」「平成デフレ」を経て全て壊れつつある

 いわゆる ”ゾンビ会社” の温存がこの30年の「失われた日本」。それを可能にしたのが「ゼロ金利政策」「XXバズーカ」「マイナス金利政策」であり、国債利払いを減らしたい財務省の意向と相まってここまで来た。そんな不合理な政策運営をしていたら ”国の株価” とも言える「法定通貨」が "暴落" するのは必然 e.g., 2年間で約▼40%、ドル円@108円→150円

 「やたらとコストプッシュインフレと書いてますが、違うんですか?」
 「それは一種のプロパガンダだね」

 久しぶりに会った知り合いとこういう会話があった。「減税」とか「給付金」を政府から引き出したい一派(左側)が宣伝しているのではないか、という意見だったが、まあそんなところかもしれない。やはりどうしても「現状維持」≓「変化したくない」≓「既得権益」が一定数存在する。

 「平成デフレ」では、①「売上減少」→②「価格下落」→③「人件費カット」→④「購買力減退」→①「売上減少」→ … のルートを辿った ↓ 。

 ここで重要になるのが③「人件費カット」。番組が示しているような ”超・人手不足時代” ならこのモデルは機能しない「アメリカ型インフレ経済モデル」↓ に転回せざるを得なくなる。

 今のインフレは「円安」「戦争」が主導する "コストプッシュインフレ" などではない原油価格も「円安」も昨年来のピークは越えていない「人件費」が上がる「デマンドプル型」の立派な「真性インフレ」だ。パート時給は実は2016年から上昇が始まっている(  標題グラフ)。

 「実は販売員や営業など+380万人ほど人員余剰が出る」

 この点も興味深かった。確かに「営業」等は不要になる時代が近い。最近ではネット広告も充実して商品の詳細も伝わるので、わざわざ実店舗に出向かなくて済む。そこに「営業担当者」「販売店員」は必要無い。結果、いわゆる「ホワイトワーカー」の仕事は激減していくことになる。

 問題は「ホワイトワーカー」>「エッセンシャルワーカー」の国民意識。

 例えば大学受験をする時に、親がやたらと大手企業への就職率を気にするが、それは「ホワイトワーカー」の方が立派で給料が高い(と思い込んでいる)から。ここを変えていかないと求人のミスマッチが解消しない。

 特に「お金」がない「国」が丸抱えの医療・介護の「お給料」は上がりにくい。だから「増税」「増税」になってしまう。ここは発想を変えて「自由診療」や「有料サービス」の幅を広げて「お金持ち」に払って貰うようにすればいい。そうすれば「客単価」が上がり、結果的に「お給料」も上がる中国など海外の富裕層がわざわざ日本の医療サービスを受けに来る事例も増えており、潜在的な需要はかなり高い。

 上述の知り合い曰く、今や社内ベンチャーが乱立する状態になっており、勤め人といいながら実態は「起業家」として働く人が増えているという。

 「♪ サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ ♪ 」

 昭和ではこういう映画が流行ったが、もうそんな時代ではない。昨今やたら「理系」が持て囃されているが、要はその人にしかない「技術」があるかどうか全国民「起業家」時代がもうそこまで来ている。

 「大手企業に入る」のが果たして本当に「安全確実」なのか、よくよく考えるべきだろう。ちなみに邦銀では50代になれば役員候補以外は「出向」で放り出されるのが普通。その「出向先」も徐々に減ってきている大学も「就職予備校」と考えていると思わない結果が待っているかも。時代の「変化」はかつてない程早い

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