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「利上げ」は「財政健全化」と矛盾しない。

 ”国債の利払い費を計算する際に使う想定金利を過去最低だった23年度の1.1%から2024年度は1.5%に引き上げる方針”

 ちょっと驚いた。少なくとも黒田総裁の下、「XXXミクス」時代には考えられない記事国債の発行残高が約1,200兆円だから:

 1,200兆円×(1.1%ー1.5%)=年間▼4.8兆円

 「使えるお金が減りますよ」という政治家先生向けのメッセージになる。

 これは "真" の「財政健全化」が始まった証ではないか。

 *「利上げ」すると財務省や、600兆円弱、平均@0.21%程度の国債を保有する日銀が困る、とする言説が支配的だが果たして本当にそうか?

 *近年では官僚になる優秀な学生が減って、筆者が現役の頃も日銀・財務省共に職員の質が年々落ちていったのは否めない。だがそれでも国のトップが集まる集団である事に変わりはない。真剣に「財政健全化」を目指すなら、本来「金利」は高い方がいい。そんな事、彼らは先刻承知である。

 例えば住宅ローンをゼロに近い金利で借りられるとする。人間という物は自分に甘いので**「お金」はいつでもタダで借りられると "錯覚" する。気が緩めば「お金」の無駄使いが起きる。これが今の日本全体の状況だ。

 **この観点からは「ゼロゼロ融資」は最悪の政策リスク感応度は極端に落ち、終了と同時にバタバタ倒産するのはある意味必然「お金」はタダではない。国も企業も個人もその事を忘れれば破滅一直線。もう ”お代わり” 出来ないのだから。

 だからこんなに低金利なのに「住宅ローンは固定金利か、変動金利か」なんて生温い悩みが起きる。イギリスやアメリカのように@6~7%になれば金利負担が重いため、物件を真剣に見極めようとするだろう。この点1つ取っても、どうして日本人のお給料が上がらないのか、窺い知れる。「お金」に対する "真剣度" に雲泥の差がある。

 想定外に見えた「YCC上限金利@0.5%→@1.0%引き上げ」も今回の「国債想定金利@1.1%→@1.5%引き上げ」「損切丸」には日銀・財務省の決意表明に映る。理由は大きく2つ ↓

 1.「円安」よる ”逆資産効果”

 「円高不況」克服のため製造拠点を海外に移してきた日本かつてのように「円安」メリットを享受する ”輸出大国” から個人消費を中心とした "内需大国” に移行している。3年間で@110円→@146円、▼33%もの「通貨安」は3,800兆円とも言われる「国富」に ”逆資産効果” を生む。これが日本人が「インフレ苦」を感じている元凶。ちなみに大騒ぎの「インバウンド」はGDPの@1%にも満たない "端数" でしかない。

  2.米国債の「謎」(Conundrum)解消=金利上昇

 詳細は 米国債「プレミアム」(=上乗せ金利)の復活と「円安」が迫る「YCC廃止」→「利上げ」。|損切丸 (note.com) を参照頂きたいが、「グローバリゼーション」「ディスインフレ」も相まって、アメリカが「低金利」を享受できたのは日中両国による「米国債買占め」効果が大きい。その額約2兆ドル≓290兆円

 まず@150円を超える「円安」で財務省が「ドル売介入」した事が「謎解き」の始まり。それに輪を掛けたのが「人元安」阻止に動いている中国。昨日、今日(8/21~22)も必死に「ドル売・人民元買」で防戦の模様。

 3兆ドルもある「外貨準備」の内、1兆ドル程度だった米国債は既に8,000億ドル台に減少「高金利指向」の中国では名目金利の高い10~30年債の保有が多いと推定され、介入のための「売り」は金利上昇に直結する。最近の米国債イールドカーブの「スティープニング」(傾斜化)はおそらくこれが原因。「謎解き」が進めば米長期国債金利が@5%に達しても驚かない。それが「借金大国」アメリカの "普通" だ。

 金利の世界では何と言っても米国債が「王様」。特に政策金利の影響が薄まる10年超の金利は日本でもイギリスでもドイツでも米国債の影響をモロに受ける財務省も自身が「ドル売り介入」で「謎解き」=金利上昇に加担する以上、長期JGB(日本国債)金利の上昇は覚悟せざるを得ないだろう。

 時代は変わったのだ。

 米国債の「謎解き」=金利上昇は多方面に影響が及ぶ。何と言っても「低金利」の恩恵を受けてきたNYダウ、ナスダック、S&Pなどの米国株への影響は甚大2021年の終値比で欧米のほとんどの主要株式市場がマイナスなのがその証左でもある。ある程度の「お金」が@3~5%の国債に向かうのは必至で、株価の頭の重い状況が続くのは避けられまい。

 では唯一プラスの日経平均は勝者なのか。事はそれ程単純では無い。

 私事で恐縮だが、母の介護で郡山に帰る頻度が高くなった。今回も病院に付き添ったが、いつも驚くのが老人の多さ。付添人に手を引かれたり車椅子で来院する患者も少なくない。夫婦なら合計4人の介護を迫られる事もあるわけで、これで収入が少なければ子供など増やせる訳がない。

 「子供を一人ぐらい地元に残しておくんだったねぇ」

 母がサラッとお友達同士の会話と言うのを聞いてギョッとした。自分達もそう扱われてきたから当然と認識しているようだが、子供は親の持ち物ではない。これがご老人優遇の政策が続いてきた「シルバーデモクラシー」=「失われた30年」の正体。そもそも政治家、大臣が「シルバー」だ。

 「年上の人を敬え」

 こういう「儒教思想」が支配的な日中韓で「少子化」が加速しているのは偶然ではあるまい。せめて「子供」≓「老人」に戻さないとこの息苦しさは解消しない。いくら不動産バブルで誤魔化しても傷口を広げるだけ。

 政治の公平性の観点からも「金利」<「物価」には問題がある「金利」も付かないので頑張って「お金」を稼ぐ気にもなれないからだ。一部の業界に給金金・補助金をばらまいて全国民から増税で徴収する政策も同じ構図

 幸いやっと「インフレ」が戻って来た間違った「清貧思想」で「お金」に甘い日本人はよくよく考え直すべき「Z世代」の台頭もあり、これがやり直し最後の契機「アルゼンチン」「トルコ」路線だけは避けなければいけない「利上げ」がその試金石になる。

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