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「将来の "お金" が無い」の深刻度。- 「長生きリスク」にどう対応するのか。

 「いい、本当に問題なのは"お金" が無いこと」

 立ち聞きするつもりはなかったのだが、病院の待合で聞こえてしまった。入院していると思しき80代ぐらいのご老人が親戚・縁者3人に囲まれて何やら話している。どうもご本人を施設に入れようとしているようだが "お金" が足りないらしい「OO貯金の通帳は預かってるけど、他に無いの?」。ご本人に貯金以外の資産がないかまで聞いていた。

 58歳の「損切丸」も正直ギョッとした。我が家も80代の母(福島)と90代の奥さんの義父(大分)が離れて暮らしており、色々と "物入り" になっている。不思議なもので、今年はエアコンとトイレを新しくしたばかりなのに今度はガス給湯器が故障。いずれも10年以上経っており、確かに買換えの時期なのだが、10万円単位の "お金" が羽が生えたように飛んでいく(苦笑)。母の貯金は底を突いており、筆者が立て替える他なかった。

 どちらも典型的「昭和人間」であり、共通する特徴は「長生き自慢」「金遣いが荒いこと」高度成長期を生きてきた彼らは "お金" を使う事に躊躇が無い。今は「預金」に4%とか5%の利息は付かないし、平均寿命が5年も10年も延びれば予定が狂うのは当然だ。しかし、不謹慎を承知で言えば「自慢」よりも「長生きリスク」の方を強く感じてしまう。問題は:

 目先ではなく「将来の "お金" が無い」こと

 筆者の住む地域は都内でも比較的裕福な人が集まる場所であり、ここで冒頭のような「 "お金" がない」話が出るということは、日本全国に広げるともっと状況が悪いことになる。筆者も家電製品の代金を肩代わり出来る内はいいが、それだって今後10年も15年も続けられない。まさに「長生きリスク」頼りになる身内がいないご老人はどうするのだろうか

 「年金の受給開始年齢を70歳に引上げ」「年金支払期間を40年→45年」
 「国民保険料上限、2万円引上げ」「75歳以上の医療保険料引上げ」

 「将来の "お金" が無い」深刻度を鑑みると、これらの政策提言は決して間違ってはいない。しばらく選挙が無い ”黄金の3年間” にやりきってしまおうということなのだろう。しかし大きな問題点が2つある:

 ①「将来価値」の算定が曖昧

 折しも消費者物価が41年振りの@3.0%に高騰しており「インフレ」時代に突入物価が上がれば「お金」の価値が下がるわけで、現時点での "机上の計算" では対応できない。
 「物価スライド」を採用しているので、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は運用で物価上昇率に見合う「金利収入」を得る必要があるが、日銀による「異次元緩和」で国債金利をゼロ近辺に抑え付けている。この矛盾をどうするつもりなのか。

 ②「徴収」に傾倒しすぎて「縮小均衡」による「減収」を無視

 
財務省の役割では無い、と言ってしまえばそれまでだが、経済が「縮小均衡」に陥ればいくら「増税」しても全体の「税収」は減ってしまう。これは業績の悪化した赤字会社が陥りやすい傾向でもあり、霞が関も20年以上続いた「デフレ後遺症」にまだ苛まれているのかもしれない。

 10/28 首相会見「物価を▼1.2%引き下げる」...???

 思わず耳を疑った。厳しく言うと、これは「CPI捏造宣言」にも取れる。電気代やガス代で「補助金」を出して見た目の物価を下げる、という意図だが、これでは「指標操作」である。物価動向とは関係の無い「特殊要因」なのだから、本来CPIの算定からは除外されなければならない

 実は "前科" がある。 日本のCPI「下方バイアス」のカラクリ。ー 金利も賃金も年金も「下方バイアス」。|損切丸|note  の主役は "GOTOトラベル” だ。この時も「補助金」によって "見た目" ▼30%以上安くなった旅行代金を無理矢理CPIに算入。これは経済学的には物価傾向や「インフレ」とは全く関係が無い"見た目" のCPIを下げるたための "確信犯" である。

 現首相だって日本で一番東大合格者を出している超有名進学校の出身だ。こんな経済学のイロハが判らないはずがない。これは政府の "都合" 。簡単に言えば、現状の生活が苦しいから「借金」して凌いでいるだけ。 ↑ で列挙した年金国民保険の政策変更をみれば一目瞭然で、いずれ「借金」は返済を迫られる。それなのにまだ同じ事を続けようとしている。

 「失われた30年」で繰り返されてきた「目先の小金を払って、後でガバッと徴収」。随分と騙されてきたが「団塊」から「Z世代」にバトンが渡るにつれ、ようやく目覚める日本人が増えてきた

 これは企業同様、「将来価値」を増やす努力をしなければ国の「株価」にあたる「法定通貨価値」は上がらない「円安」で「貿易・経常収支」の赤字は増え続け「インフレ」も悪化する

 まあそんな大上段に振りかぶってもいきなり "業績" は良くはならない。まずは不明瞭な「会計操作」「粉飾」を止めること:

 ①物価指標(CPI)の目的を再認識し、経済学に沿った正しいものにする
 ②CPIに沿った合理的な「金利」に金融政策を修正する

 「借金」が増えた会社の「借入金利」が上がるのはごく自然な現象だ。その ”真実" を受け入れることから始めないと "現状" を正しく認識できない。 "嘘" は別の "嘘" を呼び、終いには何が ”真実" かもわからなくなる

 今の日本「異次元」というよりも「異常」だ。だから「円安」が襲う。「将来の "お金" がない」状況を脱するには「通貨価値」の下落は最悪「異次元」で無くてもいいから、ただの「普通」に戻して欲しい「正しい金利市場」を見てきた「損切丸」からのお願いである。まだ間に合う。


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