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遂に「お金」が足りなくなった?日銀

 ”日銀は午前の金融調節で、国債買い現先オペを即日実施で5兆円(5-6日)と期間物4兆円(6-16日)で通知。同オペ実施は2023年7月以来”

 短期資金を取り扱った経験のあるトレーダーならこれは ”事件”資金需給の逼迫から日銀が「資金供給」したことになる。確かに2/2、5のTONAR(無担保O/N平均金利)は@▼0.008%まで上昇、ゼロに近付いている

 「損切丸」では「日銀バランスシート」をずっと追いかけているが、最近気になっているのが資産:①貸出、負債:②政府預金③その他預金

 直近の1月末がこう 

 まず①貸出が減らない「コロナ支援貸出」≓「ゼロゼロ融資」で150兆円超に膨らんでいたが終了と共に2022年9月には80兆円まで減少。だがその後ジワジワ増え続けまた100兆円の大台乗せ。これは市中に「お金」が足りないことを意味しており気掛かり

 ②政府預金については何度も説明してきたが、財務省が発行するTB(短期国債)の一時余剰金が主。実質前倒し発行で日銀の「資金繰り」を支援してきた。ただ1月は+11.8兆円も急増しており、このタイミングで「国債買い現先オペ」が打たれるということは*「資金繰り」が間に合っていない証拠

 *「損切丸」の独自分析では「政府預金+国債売現先」=「資金吸収」▼30兆円が1つの目処で、そこを超えるとTONARが上昇する傾向がある
1/31は▼32兆円、TONAR@▼0.011%

 それから③その他預金も気になっている。これはFRB等各国の中央銀行が日銀に預けている当座預金で金利は "ゼロ" **「マイナス金利政策」下では "有利" と言えなくもないが、これまで20兆円台で推移してきた

 **欧米の中銀ではファンドのようにトレーダーを雇って収益機会を探っており、為替直先(FX forward)などを使ったアービトラージ(金利裁定)やJGBの売買をしたりする

 これが40兆円台まで増えてきているという事は、例えばJGB(日本国債)をショート(売り=金利上昇)にして余った「円」を「マイナス金利」のTBやJGBレポより儲かる "金利ゼロ" の日銀当座預金に預けている可能性が高い。問題は金額が大きくなりすぎたこと。仮に▼10兆円急減すると足りない「お金」を市場から「吸収」せざるを得なくなり、市場金利の上昇を促す

 ディレクティブで「マイナス金利政策」を廃止していない以上、政策目標であるTONARがプラス金利に転換するのはマズい。もっとも過去にも例があるが***それを理由に「市場追認型」で政策変更する手もある

 ***企業の資金需要が増して銀行貸出が増えたり自社株買いで「預金」が減れば「日銀当座預金」が減る=日銀の資金不足 → 市場からの「資金吸収」が増える → 円短期金利は上昇国民の支出が増えて「日銀銀行券」が減るのも同じこと。日銀の「資金繰り」は実は我々次第なのである

 この手の情報はやや細か過ぎるが、FRBやドルの方ばかり向いていると足元をすくわれる可能性もあるので頭には入れておきたい。ある意味日銀の「量的緩和」が限界に近付きつつあるサインでもあり、早晩「国債買取オペ」の減額 ↓ に動かざる得まい

 「量的緩和」が限界なのはFRBも一緒。今朝方(東京時間)もTV番組でパウエル議長が拙速な「利下げ」に伴うリスクに言及していたが、本音はまず月▼950億ドル≓▼14兆円の「テーパリング」を粛々と進めたい。不用意に「お金」を余らせてしまえば やっぱりアメリカで燻る「インフレ」の ”種火” 。|損切丸 (note.com) で「インフレ」の堂々巡りが続いてしまう

 そうは言っても株価の急落などパニックは避けたいので、必要に応じて市場にメッセージを送り「ソフトランディング」を目指す。「過剰流動性」の回収についてはドルだけでなく "キャリートレード通貨" 「円」の回収が必須であり、FRBと日銀の間では緊密な連絡・協力が不可欠

 その点、両国とも大統領選挙など複雑な政治情勢を抱えているだけに政策変更のタイミングが鍵になる。強い雇用統計のおかげで3月「利下げ」見送りはマーケットに納得してもらったが、さて「日銀」はどうだろう

 本来決算期末に向かう2~3月は「円金利」にとっては "鬼門" 。ここからはJGBなど長期金利に加えて日銀オペやTONARなど短期金利にも目配せしていこうと思う。意外な所から相場は曲がり角を迎えたりする

 アメリカ人:「お金は借りるもの」
 日本人:「お金は預けるもの」

 「お金」について真逆の感性を有する日米で、それぞれ「利下げ」「利上げ」が予想されているのは非常に興味深い。どのような "化学反応" をもたらすのか。日銀とFRBがこれだけ真反対を向いているのは筆者にも経験が無い。JGB、米国債、更にはFX市場間の「資金フロー」を「過剰流動性」の帰趨と合わせ追っていきたい


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