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「インフレ」か「銀行救済」か。二兎を追うFRB。ー 荒れるドル短期金利。

 2月米CPI +6.0% 予想 +6.2% 前月 +6.4%
 コアCPI +5.5% 予想 +5.5% 前月 +5.6%

 CPI自体は「遅行指標」であり過去の結果に過ぎない。目の前で起きている「銀行破綻」と直接比べるのもどうかとは思うが、2月の数字はほぼ予想通りであり、3月FOMCで+0.25「利上げ」するかどうかの決定打にはなり得ない。今はとりあえず銀行の「資金繰り」が最優先

 しかしドルの短期金利はもう滅茶苦茶(苦笑)。一時@4%割れまで突っ込んだ2年米国債は@4.3%台までしれっと戻しているし、@4.6%まで急低下した6ヶ月物は再び@5%台乗せもうこれ以上「利上げ」はない →「ターミナルレート@5%まで急旋回。やれやれ…。

 こう荒れると精緻なシミュレーションは無理。続・銀行が潰れるとどうなるのか? ー 「イールドカーブ取引」に振り回される米国債市場。|損切丸|note でも解説したが、ひたすら「損切り」に振り回される事になる

 どこかで見た記憶があると思ったら、カリフォルニアの「オレンジ群破綻」(1994年)の時に筆者も2年ゾーンの金利先物売りを持っていて、そっくり同じ様な「損切り」を余儀なくされた。この時も「利上げ」局面だったが、やはり 全てを吹き飛ばす「デフォルトリスク」- マーケットの不完全さの証明。|損切丸|note。は恐ろしい。

 こういう時は潰れた自治体や銀行がどういうポジションを持っているのかがポイント。担当している銀行等が「バルク・セール」など一連の損失処理を手掛けるため、先に動ける有利さがある。規模が大きければ大きいほどマーケットへの波及効果は大きくなり、今回のようなを引き起こす。

 担保物件の競売などもそうだが半ば強制的処分のため、割安な値段で取引される事が多い。だが一連の処分が終わればマーケットは市場価値に戻っていくので、他の市場参加者は慎重な見極めが必要になる。とはいえ、財務基盤の弱い個人や中小銀行は「巻き込み事故」に合う確率も高く、今回のように波紋が大きく広がってしまう。

 さて*銀行規制当局のFRBの立場はどうだろう。

 ちなみに日本では日銀は規制当局ではなく金融庁が担当している。FRBの内部は①マーケットや市場オペレーションを担当する部門(日本では日銀が担当)と②銀行規制を統括する部門に分れており、 ”壁” が存在する。

 2008年リーマンショック以降「ボルカールール」など厳しい銀行規制を課してきたが、前政権の時に一部緩んでしまった。これが今回の事態を招く遠因となったという指摘もあり、「モラルハザード」の闇は深い。今回即座に「預金者全額保護」を打ち出したのは止むを得ないとしても、何らかの "落とし前" は必要

 「インフレ」は国民全体に及ぶ事象一部の銀行の「救済」のためだけにウォール街が煽ったような「利上げ」停止は正しい判断では無かろう。それどころか逆に「信用不安」を煽ってしまうリスクさえある。急激に反騰した米国債金利がその事を物語っている

 酷い相場付きは他の市場にも現れた。実はドルの短期金利並みに滅茶苦茶だったのはJGB(日本国債)。ファンド勢も余程ショート=売り(金利上昇)に傾いていたのだろうが、買い戻そうと「踏み上げ」たら "板" (売買いの提示版)はスッカスカ発行量の半分も日銀が買占めているのだから無理もない20年JGBなどはあれよあれよと@1%を割り込み阿鼻叫喚もはや市場の体をなしておらず、今後手掛けるトレーダーは減る一方だ。

 もう一つ不思議だったのがビットコイン(BTC)の急騰「あれっ、暗号資産関連で損失が出たんじゃないの?」。何でも一番メジャーなBTCに買いが殺到したんだとか(苦笑)。**暗合資産版の「質への逃避」(?)といったところだが、相変わらず何でもアリ。

 **BTC勃興のきかけになった2013年の「キプロス危機」(参照:「お金のマニュアル」 -損をしないコツ- 其ノ24 仮想通貨編①|損切丸|note)まで持ち出す始末。何とかしようと喘ぐ業界の気持ちは察するが、既に市場規模がNY証券取引所の50分の1以下にまで縮小してしまっては、残念ながら余り説得力を持たない。

 「金融危機」に発展するとは思えないが「損切り」の嵐が止むまではもう少しかかりそう3/22FOMCまでまだ日もあるし、もう一山、二山仕掛けてくるはずだ。 "彼ら" にとっては千載一遇の収益機会。ここは "餌食" にならぬよう、気を引締めて予断を持たずマーケットを注視していきたい。

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