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「インフレ時代」の心構え。ー 目の前の "小銭" を追えば "大金" を失う。

 前稿."石橋を叩いて渡る” 日銀。|損切丸 (note.com) でソロリ慎重にアドバルーンを上げた日銀だが、早速マーケットに動きが出ている。

 1.金利

 これまでもJGB(日本国債)購入に慎重姿勢だった「日本金融村」。やはり、というべきか、植田総裁の「ゼロ金利解除」発言を受けて金利は上昇。10年は目処になる@0.70%30年は昨年10月に「YCC上限金利引上げ」騒動で生損保による「損切り」でつけた@1.67%を超えて@1.71%まで上昇。

 日本国債(JGB)入札の異変。ー ”禍転じて福と成す” 精神が肝要。|損切丸 (note.com) でも書いたが、国内主導で動いているだけに海外勢は付いてこれていない印象「そんなに売られる(金利が上がる)はずがない!」という思い込みも強いのではないか。だから落ちたドル円も必死に逆張りで買ってくるし、日経平均も先物で売り崩そうとしたりしている。

 ちなみに「ドル売り介入」とセットで考えると 介入資金調達にかかる米国債売りで 米国債「プレミアム」(=上乗せ金利)の復活と「円安」が迫る「YCC廃止」→「利上げ」。|損切丸 (note.com) が想定されるため、ドル金利にも上昇圧力がかかっている。

 金利市場の "鉄則" :「利上げ」局面ではターミナルレート(政策金利到達点)が見えてくるまで中途半端な中長期金利物への投資は厳禁

 いみじくもシリコンバレー銀行の破綻がまざまざと見せつけたが、「利上げ」局面の金利市場は怖いJGB市場はこの "鉄則" に沿って動いており、日銀と「金融村」で "阿吽" の呼吸を繰り返しながら動いていく。国外からは見えにくいだけに、ファンド等海外勢は苦戦を強いられるだろう。

 2.FX、株価

 「ドル売り介入はドル円の絶好の買い場」

 こういう発言がちらほら見られるが本当にそうだろうか。 続・「ドル高」「円安」の終焉(?)。ー 「経常収支」「貿易収支」の黒字転換の意味する事。|損切丸 (note.com) でも警鐘を鳴らしたが、財務省所管の外貨準備120兆円は+50兆円もの評価益が出ている超優良ポートフォリオ。それが30年以上もの時を経て壮大に「利食い」に出る。しかも企業がCMS(キャッシュマネージメントサービス)で抱えたドルの「経常黒字」も売りで降ってくるのだから、相当慎重に見極めなければならない。

 ドルと円の金利差が4%あるといっても、100万円の「円キャリートレード」で得られる金利差益は1日たったの+110円。ドル円が▼1銭動いただけで吹き飛んでしまう(▼1万円)。まさに:

 目の前の "小銭" を追えば "大金" を失う

 日経平均の動きも興味深い。こちらも今朝方から先物で売り崩そうとしている海外勢に対し、実需の投資家は銀行株関連を中心に買い向かい。現物ー先物の差が逆転した。銀行株比率の高いTOPIXは堅調推移しており「円高」だけで相場を振り回そうとしている海外勢は当てが外れている

 「金利負担」が問題になるのは@3%を超えてから。ー 「円安」vs JGBの激しい綱引き。|損切丸 (note.com) なので、+1~2%程度の「利上げ」はメリットがデメリットを上回る可能性が高い

 「金利」の流れで言うと、財務省の国債利払いが増える分銀行、生損保は収入が増える。これが預金金利や保険の配当に反映されれば個人消費にもプラス。加えて銀行の体力が回復すれば積極的に「お金」を貸出にも回せるようになるし、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も運用が楽になる「低金利」も程度を過ぎれば "毒" になると言うことである。

 目の前の "小銭" を追えば "大金" を失うのは金利市場等マーケットだけの話でない。実は「インフレ時代」には生活の場でこそ必要な心構えになる。

 例えば卵やガソリンが高いからといって、▼1円でも▼2円でも安いスーパーやスタンドを血眼になって探しても、1年後に買い換えた冷蔵庫が+3万円値上がりしてしまっては元も子もない

 "節約" 自体は悪ではなく、むしろ「デフレ」時には有効な手立てではあった。手元に「お金」を残せば商品価格が勝手に下がってくるわけだから。問題はその点を理解して "戦略" 的に消費行動していたかどうか「デフレ」で生活が苦しければ考える余裕もなく皆 "節約" に走り、結果的に利益を得ることが出来た。ある意味楽な時代だったとも言える。

 だが「インフレ時代」はそうはいかない。

 今度は "戦略" を真逆にひっくり返し、値の高い物から前倒しで買っていかなければいけなくなる。返済に無理のない範囲なら「借金」も有効。残念ながらこの辺の感度は「お金持ち」の方が高く、だから土地やタワマンをガンガン買ったりする「インフレ」感度の高い外国人も同様だ。

 家賃急騰、2年で3倍 トラブルで殺人事件も 超インフレ下のトルコ(時事通信) - Yahoo!ニュース

 今朝見たニュースだが家賃が2年で3倍とはえぐい海外のほとんどは「お金持ち」優遇であり、日本のように「借地借家法」で住居人が保護されている国はない”共産主義” を謳う独裁国家でも富の集中が進み、資本主義より貧富の差が激しかったりする。殺人事件まで起きているようだが、凶悪事件が増える日本も他人事ではない「インフレ」は人を暴力に駆り立てる

 マーケットに話を戻すと、次の日銀政策決定会合が9/21、22だからこれに向けて相場は荒れるだろう。仮に「ドル売り介入」をするなら「大したことはない」とたかをくくる ”ハゲタカ” が逆張りで「円売り」を積増すタイミングが有効。9/20FOMCで「利上げ」が見送られれば、それもチャンスになる。とにかく "本気" を見せることが肝要である。

 最終的には金融当局とマーケットのせめぎ合いになるが、「利上げ」局面同様、国家の方針に背いて市場が勝った例は少ない(もっとも当局の判断が合理的なら。例外:ソロスに打ち負けたポンド、 ”インフレには利上げ” で奈落に落ちたトルコリラ)。まだ「お金」に余裕がある間にこの国も早く"普通" に戻る方が賢明だ。補助金効果(▼1%程)を除けばCPIが4%を超える国で「マイナス金利政策」は異常。既に「円安」で答えは出ている。

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