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万引き家族

https://www.netflix.com/title/81007900


Director : #是枝裕和
Screenplay : #是枝裕和
Original Work : -
Release Date : 2018年06月08日
Runtime : 120分
Distribution : GAGA
Genre : ドラマ
Music : #細野晴臣

REVIEW

 韓国の映画「パラサイト 半地下の家族」と似たような現在の格差社会を描いた邦画はなんだろうって思って、是枝監督の「万引き家族」を思い出した。

 リリー・フランキーが好きだし、音楽は私が敬愛している細野晴臣さんだ。いつか見ようと思っていた作品だ。韓国の社会を描いた後に日本社会を描いた「万引き家族」を観るのは必然のようにさえ思える。

 犯罪という観点でいえば、二つの作品は妙な点で似ているが、表現は真逆である。「万引き家族」も「パラサイト」も犯罪を無邪気に行う一家という点ではそっくりだが、「パラサイト」はコメディかつスリリングに描き、観ているものもハラハラドキドキさせつつも笑わせてくれた。しかし、「万引き家族」はそういった娯楽は提供しない。哀愁しか漂わないのである。陽気に悪いことしている自覚もなしに犯罪する「パラサイト」、陰気な顔して悪いことをしていて万引きなどの軽い犯罪する「万引き家族」。同じような内容でも描き方は真逆である。映画としては「パラサイト」の描き方が圧倒的に正しい。「万引き家族」に関しては「だったらやるなよ!」と言いたくなる。

 クライマックスに至ると、両者とも殺人または死体遺棄を行う。「パラサイト」は日本でいうところの無敵の人を思わせる、出刃包丁で襲いかかってくる犯人。それとは関係なく差別主義者の家主を刺す主人公。複雑に絡まり合った社会構造を加害者被害者の構図で表現し切ったといえる。一方、「万引き家族」は主人公一家が真相を語り出していく。セリフで状況説明をされるのは正直、興醒めなのである。言葉で説明して通じるのは同じ母国語の日本人だけだ。日本語をネイティブで聞き取れない海外の人がみたら、「は?」としか思わないだろう。映画において言葉の説明ほど野暮なものはない。ギャグの説明をされているようなものだ。不愉快ですらある。しかし、日本の実写映画化でそういう表現をできる人はもはやいないのだろう。小津安二郎も黒澤明もできない気がする。

 是枝裕和の作品の特徴でもあると思うのだが、少年・少女の心の機微を描くのは上手い。微妙な表情や罪悪感・葛藤・優しさ・愛の表現を押し付けがましくなく表現できている。ビクトル・エリセ監督を彷彿とさせる表現である。「ミツバチのささやき」のような少年少女の映像を映しただけのような詩のような映画を撮影した方が国際的評価を得られそうな気がする。

作品としては「パラサイト」の圧勝である。

Cast

#リリー・フランキー
#安藤サクラ
#松岡茉優
#池松壮亮
#城桧吏
#佐々木みゆ
#緒形直人
#森口瑤子
#山田裕貴
#片山萌美

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