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「呑もうよ」を因数分解する

「また呑もうよ」
「近々呑みましょう」
「そろそろ呑みたいね」

日常生活における三大定型フレーズ「こんにちは」「ありがとう」「さようなら」に「呑もうよ」が加わったのは成人を迎えたころ。
約20年の人生で一回も出てこなかったフレーズが、彗星のごとく登場したアルコールによって超スピードで生活に馴染むようになった。

実際に呑みに行くか、口約束だけかは置いておいて、我々は兎にも角にも「呑もうよ」と言いすぎである。

少し張り詰めた上長面談の終わりに「…ヨシッ、じゃあ今夜は呑むか!」と締められて、ちょっとやわらかい雰囲気で会議室を出た経験がサラリーマンなら9割型あるのではないだろうか。

異業種交流会でちょっと仲良くなった人へのメッセージで「また今度、共通の友人◯◯も呼んで呑みに行きましょうね!」と送った経験のある人も多いのではないだろうか。

「呑もうよ」という言葉は、人と出会った瞬間にしか使えない「こんにちは」や、感謝する時にしか使えない「ありがとう」なんかよりずっとハイコンテキストで、使い勝手があまりにも良すぎる。

だからこそ、あらゆる行動が「呑む」ことに集約されすぎて、予定の多くが酒を呑むことありきで進みすぎる傾向がある。

酒を呑むのは楽しいけれど、ここをもう少し噛み砕いて、再構築したらもっと楽しいコミュニケーションが生まれるのでは?と思うので、「呑もうよ」を因数分解してみる。

※前提としてアンチ呑み会とか、お酒が嫌いとかそういうわけではないので、みなさんお誘いをやめないでくださいね…!(切実)

↓ちなみにこないだ書いたこちらの記事でも似たようなことを言っています。

「呑み会」への課題感

僕は呑み会が好きだ。
好きな人たちとの楽しい時間が人生の何より好きだ。
お酒もちっとも詳しくないけど、けっこう好きだ。
週に2回は呑みの席がある。
その度にだいたい「最高の時間だったなぁ」と感傷にふけりながら帰路につく。ツイートもする。
なんならこれを読んでくれたみなさんとハイタッチしてTiKTokとか撮りながら一杯やりたい。

…という前提を置いた上で、あえて「呑み会」に対する課題感について語りたい。花見の季節に申し訳ありません。

「呑む」ことが最良のコミュニケーションではない

今回の記事で言いたいことは、上記のフレーズでまとめられる。

お酒を一緒に呑むことは、人と人とのコミュニケーションにおいて最良のやり方ではないと思う。

年を重ねてわかった健康面の変化

大前提として、僕は呑むのが下手くそだ。
わかっていても楽しくって2杯ほど余分に呑んでしまう。

当方28歳、年を重ねるごとに、お酒を(深く)飲んだ翌日のやれ冷え性だやれ二日酔いだのダメージが如実に大きくなってきたのを感じる。
冷え性なんて、すごい。
足の指先のキンキンさがすごすぎて、もはやアラスカである。
海のハンター シャチが爪先で常にセイウチの幼子(おさなご)を襲っていてもなんら不思議ではない。生き物地球紀行、ムツゴローさんもびっくりだ。

お酒が得意ではない人への配慮

そして、世の中にはお酒が得意ではない人もたくさんいることをお酒の席を重ねるごとに知った。
そういった方たちの前提をほっぽらかして、すべての席をお酒ありきにしてしまうのは申し訳ない。
そういった人たちがいる中で、うっかり、料理も美味しくなくてただ安くたくさんお酒が飲めるだけの「海賊の酒場」みたいなお店を予約してしまった時の罪悪感は割とすごい。ヨーホーヨーホーと、凹む。
お酒は十分条件であって、必要条件ではない。

料理やお酒を「嗜む」楽しみ方

何かにつけて鳥貴族に行く人間がこんなことを言うのもあれだけど、年を重ねるごとに(このフレーズ相当多用するけど)、料理やお酒は「嗜むもの」というイメージが少しずつ生まれてきた。

正確に言えば、「嗜む」という楽しみ方があるとようやくわかってきた の方が正しいかもしれない。
料理はもちろん、作り手や生産者のストーリーやお店のコンセプト、お酒とのペアリングなどを考えながら食事をすると、一回一回の満足度が段違いであることにこの頃ようやく気づいてきた。
衣食住各領域の量から質への転換期を感じる。

この世で一番好きな企業理念、よなよなエールを作るヤッホーブルーイングの「ビールに味を!人生に喜びを!」というフレーズに表れているように、ひたすら酔っ払って料理の味や会話の内容も忘れてしまうような時間を過ごすよりも、ほろ酔いだけど、味のある時間を覚えていたいと思うようになってきている。
友達や家族、恋人との大事な時間を、できれば忘れたくない。

上記のような考えを持つようになった。
続いて、「呑もうよ」というフレーズに込められたニーズを深掘りしてみる。

「呑もうよ」を因数分解する

「呑もうよ」というフレーズも、「呑み会」という場も何かと便利だからこそ、これほどたくさんの居酒屋が世に存在しているのだと思う。

「呑もうよ」という一言を因数分解してみると、以下のようなニーズが隠れていると思う。

・会って話がしたい
・一緒にテンション上がることしたい
・愚痴を聴いてほしい
・悩みを相談したい
・一緒に美味しいものを食べたい
・現実逃避に付き合ってほしい
・愛し合いたい(広義)

つまり、「一緒にいい時間を過ごしたい」という気持ちを実現するための「都合のいい口実」が呑み会なのである。

忙しく過ごす毎日の中で、仕事を終えて集まって、時間がない中で疲れを吹き飛ばすのには酒の力はとても便利だ。癒やしであり活力、いつもより大胆になるための変身ベルトとしても機能する。

それはわかる。わかりすぎるほどに、わかる。

しかし、思い出してほしい。
お酒の味を知るまでの約20年間にも似たような「口実」はたくさんあったはずだ。

「遊ぼうよ」
「お茶しようよ」
「ゲームしようよ」
「自転車で隣町の丘まで行こうよ」
「駄菓子屋にデジモンカード買いに行こうよ」
「早起きしてキャッチボールしようよ」
「和田の家でベイブレードやろうよ」
「プール行こうよ」

想像するだけで脳内でセミの鳴き声とうだるような暑さのアスファルトの照り返しと故郷の風景がフラッシュバックし、天体観測のイントロが流れ出してしまうフレーズの数々。

もちろんすべてがすべてではないけど、
あの頃、「遊ぼうよ」を中心として具体的だった誘い文句は、いつの間にか「呑もうよ」に取って代わられてしまった。

だからこそ、今こそ、「呑もうよ」というテンプレートフレーズ、「呑み会」という合理的で便利な口実から抜け出し、「より良い時間」を過ごすためのコミュニケーション方法を追究したいと強く思う。

「呑み会」に代わる、コンパクトにいい時間を過ごすための方法5選

ということで、「呑み会」以外の方法で、忙しい現代人ができるだけ時間をかけずに(3時間以内くらいで)、悩みを相談できたり、楽しい時間を過ごせたり、いつもとは少し違う非日常な時間を過ごせるような方法を考えてみた。

ちなみに、こちらの記事でも似たようなことを書いてます。

①1.5時間ごはん会

飲料メーカーで働く平山兄さんが提唱されていたこちら会。
呑んで酔っ払って色々忘れて翌日辛い…みたいなよくある「呑み会」へのアンチテーゼ。すごく共感したので載せさせていただきます。
ランチの60分だと短すぎるし、深酒してしまう150分〜180分の呑み会は重い…って方にはもってこいの方法だと思う。

個人的には飲料メーカーで働く平山さんがこちらの話をされていることにすごく想いがあるなぁと感じている。
酔うため、忘れるためではなく、明日の活力になるような時間を過ごすための方法として美味しいお酒と食べ物を嗜むというのは、生産者にもお店にも僕たち消費者にとってもリスペクトがある。
みんなのイチオシの本当に美味しいお店のリストも集まるし、少し物足りなければ2次会に行けばいいから調整もしやすい。
まさに、三方よしの取り組み。参加してみたい!

②夜歩く会

夜の散歩が好きだ。
昼の散歩も贅沢で好きだけど、夜の散歩は探検しているような気持ちになるから格別に好きだ。

東京に上京してきた頃から、大学時代からのマブである平野くん「#夜歩く会」という、夜の街をただただ歩くだけの会を主催している。

会が発足した上京したての頃、新卒だから節約したいし、かといって男二人で普通に呑みに行くのもなんだかつまらないし、もう散歩しない?となんとなく街を歩いたのが始まり。

これまでに5回やってきて、交通ルールやマナーに配慮をした上で夜の街歩きを楽しんでいる。
年末には#山手線一周歩く会という約40kmを歩くデスマーチを実行し、無事完歩した。
山手線一周歩いたのはさすがにやりすぎだったが、「今夜歩かない?」と聞いて「歩こう!」と言ってテクテク歩いて途中でご飯食べて帰るというのは、街や景色の変化を健康的に楽しむことができて、とても気持ちが良い。

なんなら、今夜歩きたい人同士をマッチするためのマッチングアプリができてほしいと切に願っている。

ちなみに、4/12(金)の夜にも第6回の「夜歩く会」をサクッとやろうかなーと思っています。興味ある方はご連絡ください!

③遊園地に行く

遊園地はいいものだ。合法で全力で遊ぶことができる非日常空間。

いつもの居酒屋で駄弁るのも素敵だけど、アフター6で遊園地に行ったら、いつものメンバーでも小旅行気分で盛り上がると思う。
しかも、価格帯もなんなら居酒屋行くより安いし、よみうりランドや花やしきなら都内在住者にとってもアクセスが良い。

遊園地で呑む1杯のビールと、六本木の謎の会員制バーで呑む5杯のモエシャンドンだったら僕は間違いなく遊園地での1杯のビールを選ぶ。
シチュエーションこそが味になる。

アトラクションに乗りまくってもいいし、ぶらぶら散歩するだけでもいい。
インスタで映える写真を撮るでもいい。プリクラもいい。
自由な空間で伸び伸びと遊ぶことはとても気持ちがいい。

④銭湯に行く

大人の湯〜園地 a.k.a 銭湯。
風呂は心の洗濯。裸の付き合い。良いではないか、良いではないか。

居酒屋での1時間よりも銭湯での1時間の方が、「体験を共有した感」が強く、裸でお湯に浸かってプハーってなるリラックスシチュエーションも含めて、いつもより腹の底からの言葉を出しやすくなるような印象がある。

深い話をするなら、
銭湯>居酒屋>会議室
これは間違いない。

健康面でも良いし、たったの460円で至れり尽くせりできる、いわば人生のセーブポイントである。

個人的におすすめな都内の銭湯はこちらの記事にまとめました。

⑤わんこそばに行く

これだけ他のと比べて妙に解像度が高いのだけど、わんこそばに行くのはプチ登山体験みたいでとても楽しい。

首都圏だと東横線の東白楽駅にわんこそば屋さんがある。
僕は一度ここに行ったことがあるが、文化に触れつつ己の限界と向き合うことのできる貴重な体験だった。

先程の銭湯をしっぽり系体験とするなら、わんこそばはエキサイティングな体験である。
あくまでも無理すぎず、チームでの時間を楽しもう。

↓当時の写真

さいごに

↑仕事終わりにみんなで二子玉川の河川敷で寝っ転がって遊んだ日の写真

以上、いろんな要素が凝縮されすぎな文化「呑み会」からのプチ脱却、「呑もうよ」の因数分解をテーマにまとめてみました。

再度補足をすると、僕は呑み会が大好きです。
誘われたらだいたいヒョイヒョイ行きます。(誘ってくれ〜!)

「呑み会」と一言で言っても、その裏で徹底的に企画のされたものや、幹事の想いが込められたものがたくさんあることももちろん知っています。

でも、呑み会以外にも星の数ほど「いい時間」のレシピって存在していると思うので、少しだけはみ出して考えてみたら、もっといい時間を過ごせるのではないか?と考えたので本記事を書いてみました。

あー、海に行きたい。仕事終わりに、海を見に行きたい。

ちなみにこの辺の呑み会に対する課題感を持つようになったのは、散歩のプロの先輩が以下のようなツイートを2017年にされていたのがきっかけです。

忘年会ラッシュの時とかはなおさらそう思いそうですよね…。
今回の記事をきっかけに、なんかしらみなさんの時間の使い方が楽しい方向にいけば嬉しいです!

引き続き、呑み会はもちろん、モーニングでもランチでも星を見る会でも散歩でも遊園地でも座禅体験でもぶどう狩りでもジャズバーでもクラブでもスマブラ大会でも写経大会でも午前二時踏切に望遠鏡を担いでく会でも何でも、楽しいお誘いお願いします!!!

(めっちゃお気軽に〜!何卒〜〜〜!!!!!)

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