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インドの列車にチケットなしで乗ったらこうなった 最終話 【旅行記】

インドの列車の話の続きです。

列車をキャンセル待ちで予約したけど当日になっても席がまわってこなかった私は、勢いあまってチケットのないまま長距離夜行列車に乗り、空いている席に座った。


列車で隣に座るアリシャさんに「あなたチケット持ってる?」と聞かれ、焦る私。

怒られる?追い出される?車掌さんに突き出される?

緊張で背筋が伸びる。

「実は…」と
チケットを予約したけれど最後までウェイティングリストだったこと、ゴアに行きたくてチケットのないまま乗ってしまったことをアリシャさんに話した。

すると、アリシャさんは

「あら〜そうだったの〜。実はこの3席、私が予約してるのよ。」

この3席とは、私とアリシャさんが座っているゾーンの上中下の寝台席3つのこと。

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↑上と真ん中の2人が寝台を使うまでは、下の寝台に、予約した3人が座ることになる。


3席とも予約しているということは、私がチケットを持ってないって最初から分かっていたんだ…。

「わあ、ごめんなさい!」と慌てる私に、

「いいのいいの。息子と娘が一緒に乗る予定だったんだけど2人とも来られなくなっちゃって。この席キャンセルしてないから使って良いわよ。」とアリシャさん。

ほ、ほんとですか??良いのですか??
もう車内を彷徨わなくて、良いのですか??

精いっぱいの感謝の気持ちを伝えると、アリシャさんは素敵な笑顔をかえしてくれた。

チケット代を払おうとしたけれど、アリシャさんは受け取らなかった。


夜も更けてきて、私は真ん中の段の寝台を使わせてもらうことに。
狭いけど、寝るだけなら困らないスペース。寝具はなく、ストールを毛布代わりにかけて転がる。12月のインドの夜は涼しい。

気づくと、車内は寝台も通路も人であふれかえっている。

隣の寝台には大家族が。
大人4人、子ども5人のこの家族は、9人で席を3つしか予約していない様子。

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すごいな、どうやって寝るのかな。


寝台でゴロゴロしていたら、車内のざわめきが大きくなった。

通路を見ると、車掌らしき男性が乗客のチケットをチェックしている。検札だ!

アリシャさんの方を見ると、「大丈夫、私に任せて。そこに居ていいからね。」と。

持っているリストと、乗客の紙やスマホのチケットをひとつずつ確認していく車掌さん。

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私たちの寝台の番になり、アリシャさんがチケットを見せながら何やら説明してくれる。
車掌さんとやり取りをするうちに、声が大きく、口調が強くなるアリシャさん。

私は薄目を開けてその様子をはらはらしながら見守る。

車掌さんはチラチラとこちらを見ている。どう見てもインド人に見えない、よね。

しばらく言い合ったのち、車掌さんは次の寝台へ去っていった。

はぁー、よかった。のかな?

「上手く言っておいたから、安心して!」とアリシャさん。

本当にありがとうございます。

安心した私は、気づいたら眠っていた。


なんだか足があったかいなあ…と目を覚ますと、小さな男の子が私の足の上に座っていた。

どうやら隣の大家族の子どものよう。さすがに狭かったのか追い出されたのか、1人私の足元に引っ越して来たらしい。

下を見ると、寝台と寝台の間の狭いスペースにおじいちゃんが2人寝ている。

男の子に声をかけて足を抜き、おじいちゃんを踏まないように床に降りた。

トイレに行くと、トイレの前にも寝てる人がいた。

これがインドの列車か!

私もトイレの前で一夜を過ごすことになったのかもしれないと思うと、アリシャさんに感謝してもし足りない。


10時間の列車旅。停車する度に、チャイや軽食の売り子が乗っては また降りていく。

早朝に飲んだ熱いチャイがとても美味しかった。



列車は順調に進み、無事に目的の駅に到着した。

アリシャさんも列車を降り、ホームで改めてお礼を言った。

なんとか感謝の気持ちを伝えたくて、車内で折った小さい鶴をアリシャさんに渡す。

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千代紙の折り鶴を受け取ったアリシャさんは、「あら可愛い!あなたが作ったの?すごいわね!」「ありがとう」と。

握手をして、私たちは別れた。




長いインドの列車の話を読んでくださり、ありがとうございました。

またインドに行ける日が来たら、ちゃんと席を確保してから列車に乗ろうと思います。
皆さんもインドの列車に乗るときは、お気をつけて!




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