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小川洋子「掌に眠る舞台」感想~一秒が一秒以上の世界~

はじまりの春。
今まではとは生活が変わり新しいルールに慣れるのに大変な人もいることでしょう。
そして忙しく時間が経つのが早すぎるー!と、嘆いてるあなたにぴったりなのが、小川洋子さん作品ではないかしらん。

一秒が一秒以上に感じ、ゆっくりと時間が流れる。
でもスローモーションではない。
抑制された輝きが眩しすぎない。

眩しすぎないから、ちゃんと目をあけて幻想的な世界を見ることができ、その世界への没入感が心地よい。

本書も幻想的で繊細な文書に酔いしれ、静謐な世界観に大満足だった一冊。

<簡単あらすじ>
「だって人は誰でも、失敗をする生きものですものね。だから役者さんには身代わりが必要なの。私みたいな」

交通事故の保険金で帝国劇場の『レ・ミゼラブル』全公演に通い始めた私が出会った、劇場に暮らす「失敗係」の彼女。

金属加工工場の片隅、工具箱の上でペンチやスパナたちが演じるバレエ『ラ・シルフィード』。

お金持ちの老人が自分のためだけに屋敷の奥に建てた小さな劇場で、装飾用の役者として生活することになった私。
演じること、観ること、観られること。ステージの此方と彼方で生まれる特別な関係性を描き出す、極上の短編集。

舞台をテーマとした8編から短編集。

名もない役者のサインをもらい続ける推しを応援するファンや、役者さんの失敗の身代わりになる推しを守りたい人や、バレエ「ラ・シルフィールド」に魅せられ工具箱をステージにしペンチやスパナで踊らせる少女に、お金持ちの老人が自分のためだけに屋敷の奥に建てた小さな劇場で、装飾用の役者として生活する...なりきりレンタルさん?

俗に言ってしまえば、推しを応援するファンに、推しを守りたい人、人形遊びの上手な子?に、なりきりレンタルさんたちは、小川洋子の掌では儚い美となって踊る。
俗を清雅な色調の世界に変えてしまう。

だから小川洋子作品を読むことをやめられない。
だから読書はやめられない。

🥀🥀

心配なことが多くイライラしがちなあなた...いや、わたしかな(´ㅂ`; )
一秒が一秒以上の世界に浸れた時間をありがとう。


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