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短編小説ショートショート 『リベンジ卒業式』 シロクマ文芸部

卒業の日、教室で泣いていたクラスメートが羨ましかった。

僕は卒業式を終えて、真っ白なページを残したまま卒業アルバムを手にして教室を後にした。教室を出て、廊下を渡り、別れを惜しみ合う人混みをバツが悪そうにすり抜けた。
何処にも寄らず、誰にも呼び止められずに帰宅した頃には、いつもと変わらない時間だったのを覚えている。
棚を開けてカップラーメンを取り出した。そして、お湯を注いで中学の3年間を振り返った。丁度3分だった。

それから時は経ち高校の卒業式。僕は、教室で仲間達と写真を撮り合っていた。

「もう一枚撮ろうよ!」

そう言って、インスタントカメラを巻いていると仲間が肩を組んでくれた。カメラに向かってポーズをとると、自然と熱いものが込み上げてきた。

恥ずかしいので涙は堪らえようとも考えた。

しかし、おもいっきり泣きたかった。

あの日3年間の思い出を、通常運転だった自分自身に向けて、おもいっきり泣きたかった。

そんな事を思い出すと、少し強めに目を閉じた。


ーーーおわり


#シロクマ文芸部
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