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一行目が書けない

400字。20×20の原稿用紙。ランドセルを背負ってから、大学受験を終えるまで、毎年イヤイヤお世話になってきた紙。小学校では読書感想文、中学校と意見発表文、高校では小論文と、縦横の線で区切られただけの紙切れのくせに、その関わり方に幅を見せてきやがった。

20代半ばで一心不乱に400字を書きなぐる生活習慣を身についたが、それまでは原稿用紙イップスとでも言おうか、白紙がこわくてこわくてたまらなかった。最初の一行を書くまでに時間がかかりすぎた。

吾輩は猫である。

へたに名文を知ってしまったせいか。自分もなにかものを書ける、いや書かなきゃならんのだ、と意気込んでは、シャーペンの手が止まった。一行目さえ思いつけば、汚さずに、きれいなまま、一気に書き上げられると信じ込んでいた。馬鹿だ。

人は、書くことと、消すことで、書いている。

書いて、消して、を繰り返さなきゃ、何も生まれない。それを知るのが遅かったんだよな。


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