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そのサッカーを疑え!

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2024年3月の記事一覧

デニス・ベルカンプ、フランチェスコ・トッティ、ラウール……プレッシング全盛時代の10番はかくあるべし

デニス・ベルカンプ、フランチェスコ・トッティ、ラウール……プレッシング全盛時代の10番はかくあるべし

 ゲームメーカーが減少する一方でウイングが台頭。現代サッカーの傾向である。日本サッカー界もいつしか中盤に好素材がひしめき合う中盤天国からウイング天国に一変した。

 筆者が最初にその気配を感じたのは、1990年代前半のイタリアだった。日本では中盤天国の時代を迎えようとしていた時である。プレッシングという新しい波が到来していたイタリアでは、それに相応しい布陣だとして中盤フラット型の4-4-2が流行り

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技術委員長の権威低下を招いた田嶋会長時代の8年間

技術委員長の権威低下を招いた田嶋会長時代の8年間

 サッカー協会の会長に宮本恒靖氏が就任した。47歳での就任は戦後では最年少とのこと。学年や年齢に基づく年功序列、先輩後輩の関係が色濃く残る日本式スポーツ社会において、若さは障害にならないか。

 サッカー協会の業績と何より関係深いものは、W杯における代表チームの成績である。宮本会長には自分より8歳年上の森保一代表監督に、解任を迫る時が訪れるかもしれないのだ。日本的な上下関係のコンセプトが、そこで障

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久保建英。トップ下より右ウイングの方が「ファンタジスタ」に見えるという現実

久保建英。トップ下より右ウイングの方が「ファンタジスタ」に見えるという現実

 チャンピオンズリーグ(CL)、ヨーロッパリーグ(EL)を軸とする欧州サッカーを眺めていると、ウイングの時代を迎えていることを実感する。サイドアタッカーがウイングバックのみの、5バックになりやすい3バックが占める割合は全体の3割弱。サイドアタッカーを両サイドに各2人、置いて戦うチームは7割強を占める。その中で目に止まるのは、サイドバック(SB)ではないサイドアタッカーが、サイドハーフと言うよりウイ

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森保、池田、鬼木……日本人指導者が取り憑かれる5バックなら守り切れるという幻想

森保、池田、鬼木……日本人指導者が取り憑かれる5バックなら守り切れるという幻想

「前からプレスを掛けに行けば後ろにスペースは生まれるわけですから……」。「理に適った現実的な作戦だと思います」と、テレビ解説者は、5バックで守りを固める戦法を否定するどころかむしろ肯定する。森保一監督の表現を借りれば「臨機応変」、「賢く、したたかな戦い方」となるが、日本人の指導者の間ではどうやらこの森保的な思考法がスタンダードとして浸透しているようである。

 たとえば、つい2〜3シーズン前まで1

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