11月とさいしょだけの音。
カロンカロン。
じゅわじゅわわ…
唐揚げを揚げている。
まだ何も投入されていない熱々の油に、
最初の1つめを落とした時の
カロン、という音が澄んでいて好きだ。
口のなかで転がる飴玉が歯に当たった音…でもなく。
バーボンロックの氷が溶けてグラスを鳴らした音…でもなく。
あの油のカロンと鳴る音って、独特だ。
類似した音が思いつかない。
そんなことに気がつく。
途端にじゅわじゅわと揚る音が響きだすとぼんやりしてくる。
「あまおとみたいだ」と思う。
だとしたら、そうとうな土砂降りだ。
実際、外は雨が降っていて、11月が終わっていこうとしていた。
*
一年でいちばん好きな月は11月で、次に好きなのは4月だ。
理由を聞かれても、うーん。
なんとなくだ。
うっすらとあたたかく、うっすらとさむい感じが良いな。と思う。
あと、空の色素がうすいのも好きだ。
そんな空気の中で、ぼんやりしているのが心地よい。
ちょっと凍えて、鼻水をすすったりすると
「あ、生きてるな」なんてクスッと笑ってしまう。
ぶわっ!と大きな風に舞い上げられた大量の枯葉が
陽光にまぶされて、キラキラ輝いて
ヒラヒラ、ハタハタと降りてくるのをみたことある?
とてもきれい。涙が出そうになる。
あの時の気持ちが「センチメンタル」なのだろう。
スーっと遠くに、こころが向かってる感じ。
身体が置いてかれている感じ。
あの寂しさが好きなのだ。
*
そんなことを考えながらも、
耳はちゃんと唐揚げが揚る進捗を確認してくれている。
パチパチと弾ける音になったら、二度揚げするために一度引き上げる。
二度揚げの一投目は、カロン、と鳴らない。
本当にあの音は、さいしょだけの音なのだ。
さいしょだけ。
響きがつたなくて、かわいらしい。
あ、しまった。
換気扇つけてなかった。
カチン、とスイッチを入れるとごうごうと鳴る。
この音は、うん、ちょっとにがてだ。
*
唐揚げが5つあったら、そのうちの1つは、
歯のエナメル溶けるんじゃないか。
ってくらいにレモンの果汁まみれにしたくなる。
きゅっ、と酸っぱさに目をすがめて、
その後に舌にジワリと広がる唐揚げの味を
しみじみ味わってしまうのは、癖ってやつだろう。
ビールが飲めたら、世界観は全然違っていただろう。
1時間だけでいいから、お酒に強くなってみたい。
*
11月が終わってから今日まで、光陰矢の如し、だ。
ええ!?
noteも1ヶ月以上サボっている。
私が私に対して後ろめたさを感じている。
つよく。
*
※インタビュー記事を書かせていただきました。
公開は10月後半でしたが、よろしければ読んでみてください。
-20221216-
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