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11月とさいしょだけの音。

カロンカロン。
じゅわじゅわわ…

唐揚げを揚げている。
まだ何も投入されていない熱々の油に、
最初の1つめを落とした時の
カロン、という音が澄んでいて好きだ。

口のなかで転がる飴玉が歯に当たった音…でもなく。
バーボンロックの氷が溶けてグラスを鳴らした音…でもなく。

あの油のカロンと鳴る音って、独特だ。
類似した音が思いつかない。

そんなことに気がつく。

途端にじゅわじゅわと揚る音が響きだすとぼんやりしてくる。
「あまおとみたいだ」と思う。
だとしたら、そうとうな土砂降りだ。


実際、外は雨が降っていて、11月が終わっていこうとしていた。


一年でいちばん好きな月は11月で、次に好きなのは4月だ。
理由を聞かれても、うーん。

なんとなくだ。

うっすらとあたたかく、うっすらとさむい感じが良いな。と思う。
あと、空の色素がうすいのも好きだ。
そんな空気の中で、ぼんやりしているのが心地よい。
ちょっと凍えて、鼻水をすすったりすると
「あ、生きてるな」なんてクスッと笑ってしまう。

ぶわっ!と大きな風に舞い上げられた大量の枯葉が
陽光にまぶされて、キラキラ輝いて
ヒラヒラ、ハタハタと降りてくるのをみたことある?

とてもきれい。涙が出そうになる。
あの時の気持ちが「センチメンタル」なのだろう。

スーっと遠くに、こころが向かってる感じ。
身体が置いてかれている感じ。
あの寂しさが好きなのだ。


そんなことを考えながらも、
耳はちゃんと唐揚げが揚る進捗を確認してくれている。
パチパチと弾ける音になったら、二度揚げするために一度引き上げる。

二度揚げの一投目は、カロン、と鳴らない。
本当にあの音は、さいしょだけの音なのだ。

さいしょだけ。
響きがつたなくて、かわいらしい。


あ、しまった。
換気扇つけてなかった。

カチン、とスイッチを入れるとごうごうと鳴る。
この音は、うん、ちょっとにがてだ。


唐揚げが5つあったら、そのうちの1つは、
歯のエナメル溶けるんじゃないか。
ってくらいにレモンの果汁まみれにしたくなる。

きゅっ、と酸っぱさに目をすがめて、
その後に舌にジワリと広がる唐揚げの味を
しみじみ味わってしまうのは、癖ってやつだろう。

ビールが飲めたら、世界観は全然違っていただろう。
1時間だけでいいから、お酒に強くなってみたい。

11月が終わってから今日まで、光陰矢の如し、だ。

ええ!?

noteも1ヶ月以上サボっている。
私が私に対して後ろめたさを感じている。

つよく。

※インタビュー記事を書かせていただきました。
公開は10月後半でしたが、よろしければ読んでみてください。



-20221216-

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