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Mammaの味

「趣味は?」と聞かれると、いつも「料理です」と答える。
実際料理が好きで、休日には昼間からお酒を飲みながら料理に勤しむのだが、そう答える裏にはやはり「ちゃんとしていると思われたい」という下心が見え隠れしている。

私の母は料理がうまかった。
フルタイムで仕事をしていたが、18時ごろに帰宅してから急いで作る料理でも食卓に並ぶものは美味揃い。
レシピなどを見ずにオリジナルの創作料理も作る母の姿を、私は横から眺めていた。今の私の料理は、母の手元を思い出しながらその再現に挑戦することが多い。

母の得意料理の中で特に好きで、今も自分で頻繁に作る料理が「トマトの冷製パスタ」だ。
我が家の夏の定番で、家族全員が山盛りのパスタをこれでもかと言うほど頬張っていた。
おふくろの味というか、ここはパスタっぽく「Mammaの味」とでも言っておこうか。

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この料理を初めて自分で作ってみようと思った時、私は思わぬ壁にぶち当たった。

『バジルを買うのしんどいなぁ…』

この料理はバジルを使用するのだ。
私ごときがこのようなオシャレ食材(個人の見解です)を使った料理をするなんて、許されるはずがない。気持ち悪い。
自意識過剰なのは承知している。しかし、このメンタルに常識は通用しない。
きっとスーパーの店員に「え?お前みたいな奴がバジル使って料理するの?無理無理!おしゃれな料理を作ろうとしたって痛いだけだってwww」と嘲笑されているに違いない。

私は、野菜コーナーの端にあるハーブのエリア周辺を数十分ウロウロとしてしまった。

結局、カモフラージュとして買う予定のなかった椎茸と油揚げをバジルと一緒に購入し、「私なんかがバジルを買ってごめんなさい!」と俯きながら心の中で謝ってレジを通過した。
(今思い返すと椎茸と油揚げでカモフラージュって意味が分からない)

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家に帰って作ったトマトの冷製パスタは完璧な出来で、母に食べさせたくなるくらい再現度の高い代物だった。

私はこの料理を作ることをすっかり気に入り、最近は後ろめたさを感じることなくバジルを買えている。

そういえば、母が作るタンドリーチキンにはローズマリーが使われていた。ローズマリーはバジルよりもオシャレ度・難易度が高そうだ。

今度の週末にでも再び椎茸と油揚げの力を借りて、Mammaの味の再現に勤しもうと思う。

【しろ家の「トマトの冷製パスタ」作り方】
①1センチ角くらいにカットしたトマト・刻んだニンニク・刻んだバジルに、オリーブオイル(大量)・塩・醤油・砂糖(少し)を加えて混ぜる。
②茹でて冷水で締めたスパゲッティに①をかける。
③勢いに任せて食べる。粉チーズをかけても美味。

ぜひぜひ、お試しあれ。

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