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ヒゲダン研究室

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Official髭男dism『Anarchy』感想

Official髭男dism『Anarchy』感想

この曲の制作にあたり、コンフィデンスマンのプロデューサーから、The Crashの”Rock the Casbah”のような感じで、とオファーされたそうです(2022年1月15日 FM802 “Lantern Jam Times”)。

クラッシュはイギリスのパンクバンドで、この曲は彼らの代表曲の一つです。サウンド面でもリスペクトを感じますが、ここではパンクロックというジャンルの持つ哲学、労働者階

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Official髭男dism『Editorial』歌詞解釈

Official髭男dism『Editorial』歌詞解釈

アルバム表題曲で一曲目でありながら、あらゆる点でユニークな掌編です。電子的に加工されたアカペラが特徴的なこの曲、専門的になりますが、『MUSICA』2021年9月号のインタビューで藤原さんが語っていることをかいつまんで引用します。

2種類のソフトを使ってて、事前にそのソフトにコードを打ち込んでおいて、そのコードを走らせながら歌うと、それに引っかかってリアルタイムでこういうハモリが生まれていくんで

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Official髭男dism『アポトーシス』は私たちが今いる場所を教えてくれる(1)

Official髭男dism『アポトーシス』は私たちが今いる場所を教えてくれる(1)

『115万キロのフィルム』『I LOVE…』『アポトーシス』ヒゲダンのライフ三部作といっていいと思います。藤原聡さんの人生観が音楽に昇華されたこれらの名曲を紐解いてみます。

『アポトーシス』美しい楽曲ですがそのダウナーな印象に最初はいささか引き気味に聴いていました。しかし僕はひとつ勘違いをしていた。この歌で呼びかけている相手「ダーリン」これは、『I LOVE…』では言えなかった「YOU」(人生の

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Official髭男dism『アポトーシス』は私たちが今いる場所を教えてくれる(2)

Official髭男dism『アポトーシス』は私たちが今いる場所を教えてくれる(2)

ここで、この曲がラジオ初オンエアとなった放送からの書き起こしをします。この放送はヒゲダンの4人全員が出演しています。その中での『アポトーシス』に関する藤原聡さんの発言です。事前情報として、サビのメロディを思いついたのが2020年6月、デモができたのが同年8月、レコーディングが2021年6月という話もありました。

2021年7月31日 FM802 LANTERN JAM TIMES

(書き起こ

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Official髭男dism『アポトーシス』は私たちが今いる場所を教えてくれる(3 ver.2)

Official髭男dism『アポトーシス』は私たちが今いる場所を教えてくれる(3 ver.2)

8/27 大幅に加筆しました。

この曲の主人公は「私」です。作者の藤原聡さんを投影させて、30歳既婚者とします。この「私」の一人称主観描写です。

訪れるべき時が来た もしその時は悲しまないでダーリン
こんな話をそろそろ しなくちゃならないほど素敵になったね

「私」が死の床にあり、最後の別れの言葉を家族に伝えようとしている風景が思い浮かびます。

この「ダーリン」とは誰か。この曲をさらっと聴く

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ヒゲダンのYouTubeフリーライブよかったな。100m全力疾走x4って感じで。バンドもサポートの楽器隊も心底楽しんでいるのが伝わってきた。I LOVE... Universe Cry Babyアポトーシス、視聴者18万人。アーカイブなしだと緊張感あるね。

Official髭男dism『I LOVE…』はアーティスト藤原聡を語る上での最重要楽曲の一つである

Official髭男dism『I LOVE…』はアーティスト藤原聡を語る上での最重要楽曲の一つである

ということに気づいたのはアルバム『Editorial』を通して聴いて得られた発見でした。この楽曲は既発曲でありタイアップも付いていて、リリース時点ではそのキャッチーな部分だけを受け止めていたのですが、今は全く違った印象を持っています。

表現者としての藤原さん、バンドとしてのヒゲダンが持つイメージとはどういうものか。一言でいって品行方正で優等生的、真面目で優しく穏やかで、誰にでも愛されるキャラとい

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Official髭男dism『Shower』歌詞解釈 [前編]

Official髭男dism『Shower』歌詞解釈 [前編]

アルバム『Editorial』より、藤原聡さんのカラーが色濃く出ているこの曲を紐解いていきましょう。

曇った窓に指をはしらせて 雑な似顔絵を描き合った思い出などない

窓、窓ガラス、ガラスというアイテムが表現の中で用いられるとき、このようにキャンバスとして、あるいは鏡に見立てたりもされますが、共通して「隔たり」「隔絶」「彼我の世界の差異」を感じさせます。ガラスの冷たさと相まって、こちらとあちらで

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Official髭男dism『Shower』歌詞解釈 [後編]

Official髭男dism『Shower』歌詞解釈 [後編]

この歌は「僕ら夫婦(家族)になったけど、恋人だった時の気持ちにいつでも戻れるよね」と言い切るには余りある、複雑な感情が描かれています。このストーリー性の高い歌詞を分析して遊んでみます。

(1A-1)
曇った窓に指をはしらせて 雑な似顔絵を描き合った思い出などない
似ても似つかないとケチをつけ
消してもちゃんと残った名画を笑えただろうにな
(1A-2)
困ったことに月日は流れて 周りを取り巻く環境

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『関ジャム』でヒゲダンの『アポトーシス』が蔦谷好位置さんのマイベストに選出

『関ジャム』でヒゲダンの『アポトーシス』が蔦谷好位置さんのマイベストに選出

テレビ朝日『関ジャム 完全燃SHOW』1月16日放送分をTverで見ました。「プロが選ぶ年間マイベスト」という企画で蔦屋さんが1位に選んだのがOfficial髭男dismの『アポトーシス』です。

この解説で、知りたいと思っていたことがわかりました。イントロに使われている音についてです。蔦屋さんはこの音色に着目し、タイトルの意味と絡めてこのように表現しています。

「顕微鏡で細胞が動く様子を覗いて

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メタバース時代のアンセム Official髭男dism『Universe』歌詞解釈

メタバース時代のアンセム Official髭男dism『Universe』歌詞解釈

『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』主題歌として書き下ろされた楽曲。映画は延期になっていて、ようやく今春に公開が決定したので、またこの曲を聴く機会が増えるかもしれません。

タイアップから逆算して発想の源を想像してみると、テーマは「宇宙」と「少年期」かなと思いました。英語では他にspaceやcosmosがありますが、『Universe』は語感もいいし、「世界」という意味もある。期せずし

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