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【詩】 スコティッシュフォールド


スコティッシュフォールドという猫を飼い始めた
とは言っても 頭の中で大事に大事に育てている
小さな耳を垂らしたその猫は
外の人々とは違って決して私を笑わない
爪を隠した手は焼きたてのスコーン
尻尾で描く虹は決まっていつもシャーベットトーンだ

こんな狭いところから 早く出たかろうに
私の頭の中には何がある?
鳴らない電話を待ち続ける歌謡曲の回りくどい歌詞とか
友人の結婚式で感じたなんてことのない焦燥
スポットライトの当たらない人生についてだとか 
きっとそんなものばかり
だけどごめんよ うちは賃貸
「ペット」は禁止なんだとさ

猫ちゃんや
この儚い夢と ずっと一緒
何度名前を呼んでも 
思考回路を一周してからか細い声が聞こえるだけ
猫ちゃんや イギリスに帰りたいのなら
一緒に行こう
ちょうど アビーロードで記念撮影をしてみたかった
そうか ロンドンでもマンチェスターでもない
なんだ エディンバラ
エディンバラへは そんなにかかるのか


(ココア共和国 2023年9月号 佳作集掲載)

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