かまくら【短編小説】
この作品の主人公のモデルはツイッターのお友達の梶ちゃんです。梶ちゃんの「ことりサン小説書いて❤︎」の一言からの「書いたよ♪」のノリで書きました♪
完全なる僕の妄想の世界でありフィクションです。
https://twitter.com/s_kajichan
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今日はなんて最悪な日なんだろう。娘に弁当を持たせようと、朝早く起きて作ったのに。結局また喧嘩してしまい、弁当を持たせることができなかった。いつも最近はこうだ。顔を合わせれば喧嘩ばかり。しかも今日は外は雪が降って積もり出している。自分の今からの通勤も思いやられた。
そんな朝を過ごした梶ちゃん、なんとか雪の中遅れた電車でたどり着いたのは就業開始時間の5分過ぎ。
慌ただしくブーツを履き変え、濡れたコートとスーツをタオルで拭き、席に着いた。気分は朝の一件から落ち込んだままだった。
遅れてくる社員も多く、少し遅れたが、特に気にする必要もなく業務を進めていた。
午前中、仕事中はずっと娘のことばかり考えていた。反抗期とはいえ、何故彼女のことをもっと理解し、感情的にならずにいつも対応できないのだろうか。そんな自分に嫌気がさしていた。
遂に仕事は手を付かなくなった。更に帰りの電車も遅れている事を考えると非常な気持ちが沈み、憂鬱な気分になった。
急にもう全て投げ出してしまいたい気持ちに襲われた。
そして、梶ちゃんは人生で初めてズル休みする事を決意した。
今日は早く帰って夕飯を作って待っていてあげよう。そして、今朝のことを娘に素直に謝ろう。そのためにはズル休みしてでも気分を入れ替える必要があると考えた。
早速上司に具合が悪いので早退させてもらえないかと相談した。今まで真面目に働いてきた信用があるため、意外にもすんなりと許しを得た。
帰りの電車は朝の通勤ラッシュとは打って変わって通常通り動いていて、昼下がりということもあり空いていた。
空いている電車にズル休みをして乗る気分はとても快適だった。不思議と後ろめたさはなかった。
最寄駅に着いて少し歩くといつもの公園で、小学生が数人、何かを作っているのが目に入った。
近づいてみるとそれは作りかけのかまくらだった。
「ねぇ、ちょっと手伝ってよ」
純粋な目でそう言われると断る理由がなく、最後の穴をあける作業を子供達と一緒に一生懸命手伝った。
気がつくと小一時間が経過しており、汗をかいて全身がとても温かくなっていることに気づいた。
かまくらの中に入るという子供の楽しみは子供に譲るとして、梶ちゃんはとても気分が良くなっていることに気が付いた。
「お姉さんも入っていきなよ〜」
という声になんだか恥ずかしさを感じ、
「有難う、楽しかったよ!」
と言って手を振って去り、帰り道を歩いていると梶ちゃんはある事を思いついた。
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家に着いて倉庫の中で探し物をしている最中に娘が帰ってきた。
「何やってるの?」
娘はいつもほとんど入ることのない倉庫に入っている母をみて心配そうに聞いていた。
「あったあった、これこれ」
そうして倉庫から取り出したのは石油ストーブだった。
早く帰ってきて時間があったので梶ちゃんは灯油を買って、今日は石油ストーブを炊こうと思ったのだった。
石油ストーブは電気ストーブが家に来て以来すっかり倉庫で影を潜めていて、その存在はほぼ忘れ去られていた。もう何年使っていないかもわからない。
「着いた!」
そう言って石油ストーブの火をつけると、灯油の匂いが部屋に充満した。
とても懐かしい匂いだった。
「ごめんね」と梶ちゃん
「いいよ」
石油ストーブの匂いが、懐かしい親子の思い出を思い起こさせたようだった。
梶ちゃんは「この家でこの娘を育てたのだ」と、そして娘は「私はこの家で育ったのだ」と感じた。
親子の絆は再び強く結びつくのであった。
完
いつもお読みいただき有難う御座います。私の目標は人が自分らしさを発揮して生きている社会をつくる事です。