見出し画像

崖を駆け降りたい男の 崖になってあげた人。

モマさんに最初に会ったのは、彼女が、大学生向けのワークショップに高校生で一人参加していた時。
完全に周囲と違うオーラを発していて、なんだか「拒絶しながら繋がろうとする」というか「黒いダイヤ」みたいで。その後数年で、あっという間にシングルマザーとなり、結婚し離婚し、また結婚して、というジェットコースターライフを送ってきた彼女のお話を、今回初めて聴けました。なんでもない暮らしを、結構とんでもない過去を越えて、ふわりと掴み取ったモマさんの無名人インタビュー。お楽しみ下さい。

今回参加して下さったのは菊池モマさんです。


イントロ〜2度目の結婚まで

オンキ:今日、なんの話しましょうかね?なんでもいいんですよ。

モマ:なんでもいい?あたしの話?今、専業主婦してます。うーんと、どこから話せばいいだろ。

オンキ:どこからでもいいですけど。じゃあ、この2回目の結婚生活の始まりと、今のことを聞いてみましょうか。

モマ:今?そうすね。そもそも再婚しようと思ったのが、前の方と離婚するのが決まった時に、父から「もう再婚しないと駄目だから」って言われて。
 
オンキ:あ、もう、それ決まり事になってたの?
 
モマ:そう。「再婚しよう」って言われて「あ、はい」みたいな感じで。
 
オンキ:お父さんにそう言われた?
 
モマ:そうです。うち、祖父母に育てられて、祖父が父親みたいになってて。離婚したとき祖父に「もうあなた結婚しないとだめだよ、子供もいるし、金銭面的にも」って言われた。
 
オンキ:再婚しなきゃいけないよって言ったお父さんっていうのは、おじいさんなわけですか?
 
モマ:そうです。うちは、2歳のときに母親が蒸発してるので。
 
オンキ:なかなかですね。
 
モマ:そうそうそう。2歳のときに蒸発してるんで、結局、育てる親が必要だから。戸籍上では、母方の祖父母が私の両親みたいになってるんですね。だからもう。
 
オンキ:お母さんの蒸発はわかったんですけど。お父さんは?
 
モマ:もう、私が生まれてすぐに、離婚してます。
 
オンキ:あら。
 
モマ:実の父親とは仲いいですよ。たまに電話したり、会ったりもします。まあだから、その祖父の方に、若いし、再婚できなさそうではないから、婚活するとか、まあアプリやるとかして相手を見つけてって言われて。
 
オンキ:おじいさんが、アプリ使えばって言ったんですか?
 
モマ:「Tinderとかあるじゃん」って言われました。
 
オンキ:なかなかフットワークのいいおじいさんですね。
 
モマ:そうそう。ずっと自営業でお仕事してた人なので。
 
オンキ:なるほどね。
 
モマ:そういうタイプだから、そういうのも別にっていう感じだし。
 
オンキ:そうなんだ。
 
モマ:うん。で、再婚するために色々やりました。まあTinderだったんですけど、今の方とは。
 
オンキ:ふんふん。
 
モマ:Tinderって顔写真が出るから。比較的まともそうで、優しそうな感じの人を探そうと思って。そしたら彼が出てきて右スワイプ。メッセージが向こうから来て、子供がいることも、最初から言ってました。
 
オンキ:ふんふん。
 
モマ:じゃあ「もう子供がいるなら、結婚とかも含めて考える感じですね」みたいなことが最初からあって。それで会って、フィーリング的にいい感じだったから、2度目ぐらいのデートの時に、お付き合いしましょっていう話になって。で、子供にも会わせて、結婚って感じかな。
 
オンキ:なんか、スムースね。
 
モマ:そうそうそう。普通だったら「えっ、ああ、子供いるんだ」っていう風になるじゃないですか。
 
オンキ:そうですよね。
 
モマ:それがなかったかな。「なんか面白そうって思った」って言ってた。(笑)
 
オンキ:でも、それ本当にそうだったと思いますね。きっと。
 
モマ:あ、そうなんだ。わかんない。面白そうって、どういうことなんだろうと思って。


山を駆け下りるのが楽しかった男

オンキ:その「面白そう」に行けるってのは、やっぱり余裕がなかったらできないですよね。「大変そう」とか「できんのか?」っていうのが普通、ありますよね。
 
モマ:なんか、私からしたら変な奴だなあって思ったけど。彼は愛媛の田舎育ちで、コンクリートでできた平坦な道を、ただただ歩くような人生じゃなくて、愛媛の山を登って、友達とみんなで、またそこの山の上から駆け降りるっていうのを、やってたらしいんですよ。
 
オンキ:なんだそりゃ。
 
モマ:みんなで走りながら、岩とか木とかをよけながら、降りていくのがすごく楽しくて。「そういう人生、僕は送りたいな」って前から思ってたって言ってた。
 
オンキ:その駆け降りた山には行きました?
 
モマ:行ってないですけど、見ました。
 
オンキ:(笑)あのー、愛媛って、みかん、だんだん畑で、すごく坂が急ですよね。
 
モマ:そうなんですよ。で、夫の、パートナーの実家も、みかん農家なので。
 
オンキ:うんうん。
 
モマ:あそこが、うちのみかん畑だよっていうのとか、見せてもらったんですけど。「私はあの山なのか」と思いましたね(笑)
 
オンキ:あー。いや、まあ、モマさんが山というよりは、モマさんとのこれからの人生が、あの山になるのかなってことですかね?
 
モマ:そうなのかな。まあ、もともと山みたいな感じに見えたのかなーっていう感じ。
 
オンキ:モマさん、そんなデカくないんじゃないですか?
 
モマ:あははは。物理的じゃなくてね。
 
オンキ:あー、なるほどね。
 
モマ:うん。
 
オンキ:登る山じゃなくて、駆け降りる山なんですね。
 
モマ:まあ、そっちの方が大変じゃないですか。登るよりも、多分。
 
オンキ:スピードつくし、「こんなとこに岩あるんだけど」とか。
 
モマ:そうそう。それを瞬時に確認して避けていうのが、すごい楽しいって言ってた。
 
オンキ:で、実際、彼は今、その「駆け降りてる感」を満喫してる最中なんですか?
 
モマ:多分、そうなんじゃないんですかね。
 
オンキ:チャレンジャーな旦那さんですね。
 
モマ:うん、まあ、建築のデザインをやってる方なので。なんか建築のデザインって、色んな新しい問題が次々と出てくるらしく、そういうのがすごく、気持ちが高まるみたいですね。
 
オンキ:アドレナリンが出てくる。
 
モマ:そういうのが楽しい。お酒が好きなのも、多分、そういうのが理由だと思う。
 
オンキ:じゃあ、わりと彼は、何が起こるかわからない飲みの場とかに行くんですね、きっと。
 
モマ:そうそう。誰にでも話しかけるし。
 
オンキ:あー、なるほど。
 
モマ:私は、そんなに話しかけたりしないし。人見知りなので、どっちかっていうと。
 
オンキ:ちょっと旦那さんと友達になれそうな気がしてきましたね。
 
モマ:面白いですよ、普通に。
 
オンキ:そうなんだ。なんか、幸せなんですね、今。
 
モマ:今まで出会ったことのないタイプだったので。面白いです、すごく。
 
オンキ:ふーん。
 
モマ:うん、かな。まあ、そんな感じですね。


お子さんも崖で岳

オンキ:お子さんは、今、おいくつになったんですか?
 
モマ:今は3歳です。
 
オンキ:3歳?早いですね。
 
モマ:もう3歳ですよ。
 
オンキ:面白いでしょ、3歳って。
 
モマ:息子はちょっと発達がゆっくりなので。妊娠中に、サイトメガロウイルスっていうのに私が感染してて。大人がかかっても何も問題はないんですけど。それが母子感染すると、子供側に何かしら障害が出ちゃうよっていう病気で、生まれてから右耳と左耳両方とも聴覚障害があります。
 
オンキ:おや。

サイトメガロウイルスとは

 
モマ:右耳が、まったく脳波が反応しないぐらい、多分ほとんど聞こえてないっていう状態で。左も、大きい音とか、人がガヤガヤ喋ってるところだと、人の声が聞きとれない、みたいな感じくらいしか聞こえてない。
 
オンキ:うん。
 
モマ:って状態らしく。それ以外は、今のところ検査とかしても特定された障害とかはないけど。そういうのもあって、発達が遅いんじゃないかなって言われてる。いまだに全然、話し始めがないから。発語がない。
 
オンキ:じゃあ、単語とかは?
 
モマ:もない。全然何もないです。
 
オンキ:じゃあマザータングっていうか、モマさんの声っていうか、声かけみたいなものは、彼は、音声のメッセージとして把握してないんだ。できないのか。
 
モマ:多分、把握してない。「ダメ!」とか、比較的生活の中で使うような言葉とかは、多分、理解はしてるし反応はあるけど、それに対してのレスポンスがない。
 
オンキ:なるほど。
 
モマ:とか。あとは細かいところだけど、いまだに歩くのがあんまり上手じゃない。
 
オンキ:3歳で?
 
モマ:そう。走っても転ぶとか。主に普通の3歳児よりもコミュニケーションが全く取れないあたりがすごい大変。
 
オンキ:大分大変ですよね。
 
モマ:大分大変。
 
オンキ:それも旦那さんにとっては、駆け降りて行ったときに現れた岩の1個なのかな。
 
モマ:かなあ。それもそれで面白いと思ってるんだと思います、多分。
 
オンキ:太っ腹な旦那さんですね。
 
モマ:うん。「発達がゆっくりだよ」とか「そういう障害があるよ」って話も最初にしたけど。なんか、そうなんだっていう感じ。
 
オンキ:ふーん。
 
モマ:彼は無駄に心配とかしない。私はすごい心配性なので、だから無駄に心配されると、こっちもなんかワタワタしちゃうしイライラするから。全く心配性じゃないあたりが、私からしたらすごく気が楽です。
 
オンキ:それは助かりますね。
 
モマ:うん。でも、ずーっと私はワンオペで。家事も育児も一人でやってるので。
 
オンキ:うん。
 
モマ:そう。全くほとんど手助けがない状態で、ずっと家事、専業主婦をやってるから、結構大変っちゃあ大変ですよ。
 
オンキ:それは大変ですよね。
 
モマ:「もうちょっと手伝ってほしいな❤」っていう風に言うんですけど、あんまりそこは、もう多分、無理だろうなあと思ってるので。
 
オンキ:まあね、今どきのイクメンを求める気持ちは分かるけど。それを超えるぐらい彼の心の広さってのは、なかなか助かるトコでもあるし。いいと思いますけどね。
 
モマ:うんうん。まあ、優しいからいいかなって思うし、ちゃんとお仕事もして、生活費を出してくれるから、いいかなっていう風に思う。
 
オンキ:なるほど。じゃあ、昔の意味での「ちゃんと稼いで家族を守ってくれるお父さん」ですね。
 
モマ:うん。イクメンって言っても、イライラする部分は必ずあるだろうしと。主婦からすると。
 
オンキ:俺、毎日、イライラされてますよ。
 
モマ:(笑)想像できますね。もう、イライラするのもしょうがないかなと思って。でもお互い常に一緒にいるとイライラして疲れるので、今は部屋を別にしてます、全部。
 
オンキ:ほう。
 
モマ:うん。だからもう、生活リズムが合うタイミングって、土日の食事の部分と、平日の朝食だけ。
 
オンキ:うん? じゃあ、寝室も別?
 
モマ:寝室も別です。全部別。
 
オンキ:あら。いいんですか?それで。
 
モマ:うん。でも、私も向こうも、そっちの方が気が楽なんですよね。
 
オンキ:ふーん。
 
モマ:自分が一人になりたいタイミングとか。あとは、仕事で疲れてるとかいうタイミングに、喧嘩をしなくて済むんですよ、そっちの方が。
 
オンキ:なるほど。
 
モマ:お互い多分、一人の時間が凄い大事なタイプだと思っていて。同じ空間にずっといると、何かしらのアクションで腹が立ったりとかして、言い合いになるから。もうそれを止めたいなと思って、寝室も別にして、いつも生活する場所も、できるだけ別にしてる。
 
オンキ:参考にさせてもらいます。
 
モマ:私たちは、あんまり、共有しすぎるのも良くないかなと。
 
オンキ:でも、そうやって関係性みたいなものを、こうしたらうまくいくとか、うまくいかなかった時には、どんどん修正して、改善と打開策みたいなものを、次々と編み出していく?
 
モマ:そうですね。
 
オンキ:なるほど。
 
モマ:今が、やっとそういう感じになったので、比較的。息子はまだ幼稚園に通ってなくて、発達センターで定期的に月に1回ぐらい理学療法士の先生と言語指導の先生と個別で面談して、遊んでもらって、みたいなことをやり始めたんですよ
 
オンキ:遊んでもらうんですか?
 
モマ:そう。例えばパズルとかをやって、その子の知育がどれぐらい発達してるかなっていうのを検査するみたいな感じ。
 
オンキ:うん。
 
モマ:そういうサポートがあるから、比較的私にも余裕ができたっていう感じ。
 
オンキ:ふーん。
 
モマ:で、多分、普通の幼稚園も通えそうにないから、発達センター内にある療育園って言って、発達がゆっくりな子供たちだけが通う幼稚園みたいなのがあるんです。最初は母子通園をして、様子見つつ単独登園にっていう。
 
オンキ:ふーん。
 
モマ:そういうところに、多分通うようになるので。ちょっと大変な時期が、まだまだ長いかなって感じ。
 
オンキ:なるほど。彼の名前は何ていうんですか?
 
モマ:岳(がく)くんです。山岳の岳って書くんです。
 
オンキ:出た。お父さんが付けた名前?
 
モマ:いや、私が付けました。
 
オンキ:そっか。岳くんなんだ。
 
モマ:そう、岳です。
 
オンキ:漫画と映画にありましたね。山岳救助レスキューで「岳」っていうのが。
 
モマ:私、それ大好きなんですよ。
 
オンキ:やっぱりそこからなんだ。アレいいもんなあ。
 
モマ:それとあとは、俳優の濱田岳くんっていう、あの人が好きなんですよ、私。
 
オンキ:ふーん。
 
モマ:なんか、岳っていう名前いいなって、すごく前から思ってて。子供ができた時に絶対に岳にしようって思った。
 
オンキ:そうなんだ。旦那さんも、ちょっとなんかタイプが似てんのかもしれないですね。
 
モマ:そうかもしれない。
 
オンキ:ね。
 
モマ:ああいう、変わったタイプが好きなんですよね。
 
オンキ:変わってるっていうか、多分、自分と反対なんじゃないんですか?
 
モマ:多分そうだと思う。
 
オンキ:ピリピリと神経質になるんじゃなくて、どこか現代人じゃないみたいな、のんびり感みたいなのとか、あるんじゃないかな。
 
モマ:うん。都内の人じゃないなっていう感じがいい。
 
オンキ:あー。都内が嫌い?都内がちょっと苦手?


学校の友達と遊べない

モマ:私、あの、育ててくれた祖父母が、ずっと東京で暮らしてるようなタイプだから。私の地元が神奈川の相模原っていう田舎で育ったので田舎の子たちと遊ばせてもらえなかったんですよ。
 
オンキ:ん?
 
モマ:「全然私達と住む世界が違うから、あの子達とは遊んじゃダメ」みたいな感じ。
 
オンキ:家の周りにいる学校の子供達とかと遊びたいのに「あいつらとは付き合うな」って禁止されたんですか?
 
モマ:まあ、直接的ではないけど、仲いい友達ができて話をすると「やっぱり田舎者だね」みたいなことを言われるんですよ。
 
オンキ:はー。
 
モマ:っていうことを言われるから。今時の言葉で言うと、多分、毒親だったんだろうなと思います。
 
オンキ:「田舎者だからな」って自分の仲のいい子について言われたとき、モマさん、どう思ったんですか?
 
モマ:すごい嫌でした。普通に仲のいい子達のことを悪く言われるのがすごい嫌だったけど、それが通常運転だったから。
 
オンキ:あー。
 
モマ:「ああ、またか」っていう感じでしたね。だからって、それに反発するっていうのも面倒くさかったし、そこでまた揉めるのも面倒くさかったから。とにかく、ちっちゃい時から、怒られるのも嫌だし、面倒をかけたくないみたいな気持ちがあって。結局、あんまり自分から「それは違うだろ」って言うことはなかったかな。その通りにしてた。
 
オンキ:なるほど。面倒を起こしたくないから反発しないっていうのはあるけども。心の内では反発した、もない?
 
モマ:ありましたよ。でも自営業してる人達だから、ずーっと連れ回されて、一人の時間がないんですよ。
 
オンキ:はー。
 
モマ:だし、一人の空間もない。家にいても、自分の部屋って言っても、やっぱり誰かしらが入ってきたりするし、勝手に。だから、みんなが、ちっちゃい頃に身につける孤独、自分が孤独である時間の過ごし方みたいなものが、身に付かなかったと思うんです、多分。
 
オンキ:なるほど。
 
モマ:それが身に付かなかったから、反発する気も起きなかったんだろうな。中学は私立の女子校に電車で一時間くらいかけて通ってて、その時間が初めての、孤独の時間だったかもしれない。
 
オンキ:うーん。
 
モマ:その頃にパソコンを買ってもらって、SNSで知らない人達と話し始めて、楽しくてほぼ毎日いろんな人と話してました。やっと家族や学校以外の人たちと自由に交流できて、すんごいうれしかったですね。その辺から「やっぱりもう外に出たい」っていう気持ちがすごい強くなったかな。だから、親にダメって言われるような友達との付き合いとか、多分そっちの方が魅力的に感じてたんだと思う。
 
オンキ:なるほど。「都会、都会!」って言われるのは嫌だし、一人の時間も大事にしたいしっていうのが、今の2度目の結婚生活では、順調に実現してるっていうことですよね。その当時に欲しいと思ってたことが、次々と手に入ってるよね。
 
モマ:うん。でも、やっぱり、今まで祖父母に抑えつけられてたけど、誰かしら必ずいる空間みたいのも、確かにそれも大事だなとは思う、正直。そういうのもすごく安心するし、そこに、ぶっちゃけ甘えられるんです。甘えも、多分、過度の甘えを幼い頃はずーっとしてたから、まだそういうのがちょっと残ってて。多分、今のパートナーからすると鬱陶しいって思うようなことはあるんだろうなと思う。
 
オンキ:過度な甘えは、おじいさん、おばあさん、一応自分としては思ってるお父さん、お母さんに対する甘えだったんですよね?
 
モマ:うん、そうですね。


パートナーからの気づき


オンキ:その当時、甘えてる真っ最中から、これ、ちょっと甘えすぎかなって、意識してたんですか?
 
モマ:してないです。今のパートナーに言われて「あ、確かに」って思った。
 
オンキ:そうなんだ。「パートナー」って言いますよね、旦那って言わないで。
 
モマ:そう。旦那って言うのが嫌だ。うちの家族が、みんな旦那って言うから。
 
オンキ:そうなんだ。もうそこから「距離置きたい」感が。
 
モマ:も、あるし。男性女性の好みみたいなの、基本的に私はバイセクシャルなんで、あんまり、男性として見てるっていうわけじゃないので。
 
オンキ:なるほど。
 
モマ:私の中で、あの人が多分、旦那さんであり、奥さんみたいな感じの感覚でいるかもしれない。
 
オンキ:なるほどね。パートナーさんであり、旦那さんであり、奥さんでもあるその方は、モマさんと両親との関係に過度な甘えがあるっていうのを、どの辺から見抜いたんですか?
 
モマ:わからない。でも、私が彼に対して接する態度とか、求めてるものとかを見てて、多分そう思ったんじゃないのかな。
 
オンキ:自分に対する対応で、モマさんがそうなんだろうなって想像できたんだ。なるほど。
 
モマ:まあ、それは良くない癖だからどうにかした方がいいよ、って言われるけど。
 
オンキ:あー。
 
モマ:でも、適度な甘えであったりとか、一緒に過ごす時間が欲しいっていうのは、ありありだなって今は思ってるかな。
 
オンキ:なるほど。言われてみて気づいた。でも、それを「完全に切らなきゃ」って自分を責めるんじゃなくて、ほどほどにしていけばいいはずだ、っていうことですか?
 
モマ:適度であれば多分いいし。相手のタイミングとかもあるから。そういうのをちゃんと見極められれば、私の思いも叶うし、彼の孤独な時間とか、大事にしてるものも大事にできるし。両方、Win-Winになった方がいいでしょ、っていう風に思う。
 
オンキ:大人だね。
 
モマ:まあでも、そういう風に思えるようになったのも最近だし。Win-Winにならないと関係性的にうまくいかなくて、また離婚になっちゃうなっていう風に思ったから。
 
オンキ:また離婚になっちゃうんだ。
 
モマ:もう困る、本当に。
 
オンキ:また離婚になると、困るよね。
 
モマ:も、あるし。祖父にこないだ言われたのが「腹立つことはすごく多いんだろうけど、向こうの大事にしてるものを大事にするとか、向こうの欲求を叶えるっていうことも、それはあなたが専業主婦であるっていうことのマネイジメントだから大事だよ」って言われて。
 
オンキ:「マネイジメント」くるか。なるほどね。
 
モマ:すごいしっくりきたんですよ、それが。専業主婦の仕事って、家事育児だけじゃないんだなっていう風に思いました。そのパートナーとの関係性みたいなものをちゃんと考えて、そこに対して自分からアクションしたりだとか、向こうのアクションに応じるっていうことも大事だなって思って。


パートナーが女だったら良かったな


オンキ:じゃあ、そろそろ、もうちょっと昔のことを聞いていきましょうか。
 
モマ:はい。
 
オンキ:どこに行こうかな。今、前からそうだとは思っていましたが、ちらりとバイセクシャルであることをカミングアウトしてくれて。
 
モマ:はい。
 
オンキ:女の子との関係性。でもって今時だったら、女の子とパートナーを組むことだって、まあまあ可能になってきましたよね。その辺については?
 
モマ:お付き合いした女の子は一人だけなんですけど。えっと、17歳とかそれぐらいかな、Twitterで出会った女の子とお付き合いしてたんですけど。遠距離だったけど、向こうが会いに来てくれたり。でもあまり性格が合わなくて数ヶ月でお別れました。私自身パートナーの性別を気にしていなくて、その人との会話や外見のほうが大事ですね。
 
オンキ:はい。
 
モマ:その彼女はすごいいい子だったし、本当に好きだったんですね。男性と付き合うより、正直、楽しかったかな。うーん、なんだろう、同性だからこそ、分かるところもあるんだなって思ったけど。やっぱり祖父母がすごく毒親的な部分があったから、私は男性に対して父性を求めがちで、女性に対しても、私は母性を求めちゃうんですよ。っていう部分があるから、男性だけでなく女性もいいなと感じるんだと思います。やっぱりその、女性が自分に無償の愛みたいなものをくれるような子が好きなので。その彼女と付き合った後に好きだった女の子が、彼氏がいたので。それがすごくショックすぎて、そのとき立ち直れなかったかな。「えーっ!」て思った。
 
オンキ:それつまり、お互いバイだってことじゃないですか。
 
モマ:でも向こうは、ちょっと女の子に興味あるけど、やっぱり最終的には男性が好きだよっていうノンケの子だったんだと思う。
 
オンキ:お試しだったんだ。
 
モマ:そう、すごい辛かった。やっぱり、セクシャリティの多様性が広がっていったのはいいけど。なんだろうな、そういう「ノンケだけど、ちょっとレズっぽいよ」みたいな子がすごく増えて。
 
オンキ:あー、迷惑な話なんだ。
 
モマ:だからそう、なかなか女性と付き合えない。突然連絡が取れなくなるとか。同棲してる人がいるって言ってたけど。男性と一緒に住んでたとか。
 
オンキ:じゃあ、モマさんは、女性と付き合うのも本気で。そういう冷やかし半分みたいなのじゃない、ちゃんとしたお付き合いを求めてた。
 
モマ:うん、そうね。なかなかちゃんと付き合える子と出会えないから、結局、みんな彼氏がいたりとかする。だから結局、付き合ったのは一人だけでしたね。出会うのが難しい。
 
オンキ:なるほど。
 
モマ:でも、女性と結婚したいと思ったことはありますね。
 
オンキ:ありますか?
 
モマ:あります。あるし、今のパートナーが女だったら良かったなって思う時ありますね。この性格のまま女性であってくれと思う。
 
オンキ:でも、そう思ってて今は暮らしてるけど、関係性の中で女性的な役割になっていってるんじゃないですか、パートナーさん?
 
モマ:そう。だけど、身体的にも女性であって欲しいなって思う時ありますね。
 
オンキ:じゃあ、身体的な話もしますか?
 
モマ:どういう?
 
オンキ:まあそうですね。愛の部分だけじゃなくて、セックスの部分の話もしますか?
 
モマ:うんうんうん。
 
オンキ:身体的にも女性は、やっぱりいいんですね。
 
モマ:そうですね。なんだろう、男性には男性らしさみたいなものがやっぱり体つきにあるので。それも好きなんですけど、女性特有の体つきや仕草はいいなって思います。だけど私、女装癖があったりとか「女性になりたいけど女性が好き」っていう男性とかも好きなんですよ。
 
オンキ:おお。
 
モマ:だからこう、女装好きっていう方もすごい好きです。
 
オンキ:なるほど。そういう方々が一堂に集まる会とか、今時あるじゃないですか。
 
モマ:そう。でもちょうど18歳を過ぎたときに子供生んじゃったので。だから、なかなかそういうのって18歳以上じゃないとダメとかあるから。もう子育てで忙しくてあんまり行けなかったです。だから今後行きたい。
 
オンキ:なるほど。
 
モマ:レズビアンバーとかは、行ったことあるんですけど。あんまり肌に合わなかった。


相模原の田舎で育ったのに


オンキ:なるほど、そうか。一番昔の、その子供の頃の話、ちょいと伺ってみましょうかね。小さい頃、神奈川のどこにいましたっけ。
 
モマ:神奈川の相模原、駅で言うと相模湖ってとこ。
 
オンキ:相模湖ですか!あのあたりはやっぱり、本当にリアルな田舎ですよね、あそこは。
 
モマ:そうですね。お友達が農家の方とか、いましたね。
 
オンキ:ですよね。
 
モマ:うん。
 
オンキ:で、いろんなことがあって、今、みかん農家の息子さんとパートナーになってんだから、ぐるっと一周回ってきた感じ、ちょっとあるのかな?
 
モマ:うん。やっぱりなんか、農家のところで育った人っていうのが、すごい安心感があるのかもしれない。
 
オンキ:だって、地元がのどかなところで暮らしてたんだもんね。
 
モマ:そうそう。だから、すごい向こうの実家に行くのも好きです。
 
オンキ:おじいさんおばあさんは、そののどかな所を「この田舎者達めが」って言って、上から蔑む目線で見てたんだもんね。
 
モマ:そうですね。結構きつかったかな。
 
オンキ:結構きついんだ。
 
モマ:うん。まあちっちゃいから、特に小学生とかって、友達との中で学ぶことってすごい、そういう関係性の中で学ぶことってたくさんあるじゃないですか。
 
オンキ:そうですね。
 
モマ:そう。そういうことが全く学べなかったから。いまだに同世代の友達とどういう会話をすればいいかわからない。
 
オンキ:なるほど。
 
モマ:そういう、すごく閉鎖的な家庭だから。その友達たちが見ているようなテレビ番組とかも見たことなかったし。友達が好きなアイドルとかアニメとか、そういうのも知らなかった。だから私、『クレヨンしんちゃん』見たことないんですよ『ドラえもん』とかも。
 
オンキ:おー。それ、教室の中で自分の孤立感みたいなのあった?
 
モマ:ありました。だからもう、小学校5年生まで、友達いないです。
 
オンキ:それは、ちょっと想像できないようなキツい感じだね。じゃあ、同級生達に「取り扱い注意」っていうか、取り扱いかねてるっていうか「ちょっと怖い」みたいな扱いにならなかったですか?
 
モマ:なりました。クラスメイトのお母さんとかが「モマちゃんの家庭は、裕福で私達とは違うのよ」って、多分言ってたんだと思う。
 
オンキ:はー。
 
モマ:同級生達にも言われたことある。
 
オンキ:それ、キツいね。
 
モマ:まあ「モマちゃんの家はお金があるから、いっぱい犬飼えていいね」とか。
 
オンキ:ちょっと待って。いっぱい犬いたんですか?
 
モマ:4匹いました。
 
オンキ:それも、大きいやつですね?
 
モマ:大きいやつが2匹いましたね。あと小型犬。
  
オンキ:でも、それだといじめられるんじゃなくて、触らぬ神に祟りなしみたいな感じで、遠ざかるみたいな感じだったんですか?
 
モマ:そうですね。「自分が知ってることをみんなが知らない」っていうことがよくあって。多分みんなも、私が何言ってるかわかんない、だから仲良くできないみたいなところは、よくあったんだと思う。
 
オンキ:すごいな。本来なら、好きなものだとか、文化的な体験とかを共有するところなのに「君らは君らの世界、僕らは僕らの世界」みたいになってたんですね。
 
モマ:そうですね。小学校の時、私「ベルばら」とか好きだったし。
 
オンキ:世代的に、はっきり言って30年ぐらいズレてる。一世代か、二世代かずれてますよね。
 
モマ:そう。手塚治虫とか昔の漫画が大好きで。それを与えられてたから、そういうのばっか見てたし。アニメよりも、『レオン』とか『アメリ』とかね、その辺を見させられてた。
 
オンキ:そういう話ができたり、そういう文化に育てられた20歳から30歳くらい上の人達と、親和性が高いっていうか。そういう人達と、年上の人と付き合いたい、一緒にいたい、みたいなのはありました?
 
モマ:ありました。だから、Skypeチャンネルっていう掲示板があって。そこで、すごい年上の人と喋ったりだとか、会議したりとかしてた記憶がありますね。中学校1年生ぐらいからやってた。
 
オンキ:なるほど。その時に「君、そんなの知ってるんだ、いいね」みたいな感じで、愛でられるっていうか、喜ばれるみたいなことってありました?
 
モマ:ありましたね。多分、それもうれしかったんじゃないかな。
 
オンキ:そうですよね。そういう認められるっていうか、その話ができるってことは、ようやっとコミュニケーション回路が開くんですよね。
 
モマ:そうそうそう。でもやっぱり、リアルじゃないから、どこかしら満たされない部分はあったかな。
 
オンキ:なるほどね。
 
モマ:多分、周りの友達と合うようになったのが高校生入ってぐらいになるのかな。それぐらいになって、もっとみんなSNSとか、頻繁にやるようになったから。Twitterも当たり前みたいな状況だから。会話がやっと合うようになったかな、その辺で。
 
オンキ:そうか。そして最初の出産は、高校に通ってる間だったんですか?
 
モマ:そうですね。私、結局、1年ダブって高校に入ってちょうど19歳になる年に卒業だったので。卒業間際の時に子供ができちゃって、結局、高校卒業できずに途中で辞めました。でも、いまだに高校時代の友達や先生達ともすごい仲いいです。頻繁に会うぐらい。
 
オンキ:それはラッキーでしたね。
 
モマ:そうですね。変わった子達が周りにすごく多くて。
 
オンキ:良かったね。
 
モマ:うん。昔のスナックとかで歌うような曲とかが好きな子とかいます。
 
オンキ:おー、目に見えるわ。
 
モマ:うん。なんか、すごいカオスでした、高校時代は。
 
オンキ:父親って言っていいのかわかんないけど、その子供の父親の方とは一緒に暮らすとか、そういうことはなかったんですね?
 
モマ: 付き合い始めてすぐに半同棲をし始めて、子供が生まれてから数ヶ月くらいまでは一緒に住んでました。離婚後は全く連絡取ってません。
  
オンキ:ふーん。想像するに、そのちょっとスペシャルな環境で。周囲の友達ともいろんなものを共有できないって環境だったら、それなりにこじらすと思うんですよね。でも、そのこじらせのとこから、ただ立ち直るとかじゃなく、なんか温かいものに触れて自分が癒されていって、バランスが取れていくっていう。そんな自分っていうのを自覚しますか?
 
モマ:結構自覚してますね。
 
オンキ:そうですよね、きっと。その一番の要素ってなんだと思いますか?
 
モマ:うーん。多分、子どもを産んだことと離婚をしたことと再婚したことかな。
 
オンキ:人生そのものやんけ。
 
モマ:もうだって。でも、イベント的に一番大きかったのは、今の再婚かもしれない。今のパートナーと出会って生活を一緒にするっていうのが、一番おっきいのかな。


最初の結婚から

 
オンキ:じゃあ、最初の結婚についても、一応チェックしときましょうか。伺います、お願いします。
 
モマ:んーと、なんだろう。18歳のころに付き合い始めた人で、すぐ半同棲みたいになり、今思えば、多分向こうも寂しがり屋というか。いつか愛されなくなるって不安があったんじゃないかな。
 
オンキ:それは、モマさん自身のその当時の状況?
 
モマ:自分もそうだし、多分相手も。
 
オンキ:じゃあ、その「埋め合わせなきゃいけない寂しがり屋同士」が一緒にいたんですね。
 
モマ:そう。なんか地獄のような感じになってた。
 
オンキ:その地獄を、ちょっとだけ聞かしてもらってもいいですか?
 
モマ:はい。
 
オンキ:お願いします。
 
モマ:なんだろうな。とにかく私が女性と二人で出かけるのも、男性と二人で出かけるのも、すごく制限されてましたね。
 
オンキ:あー、いわゆる嫉妬で束縛のたぐいかな。
 
モマ:多分。だから、例えば女性限定のTIPSYっていう、レズビアン向けのイベントとかってあるんですよ。ああいうのに行きたいなって、その当時、ちょうど18歳を過ぎてたから行きたくて。行きたいっていう風な話をしたら、すごい怒られたこととか。
 
オンキ:怒られたんだ。「お前、何考えてんだ!」ぐらいな。
 
モマ:怒られた。そう「マジでいい加減にしろ!」みたいな感じで言われた。



TIPSYはこちら


オンキ:彼は、まったくのストレートなの?
 
モマ:ストレートです。完全に。だから逆に、そういうバイセクシャルだったりとか、レズビアンとかゲイとかいうのが嫌いだった。
 
オンキ:理解のない人だった。
 
モマ:うん、そう。だから、正直、その辺がすごい嫌だったし「うっ」ていう風に思うタイミングってすごいたくさんあったんだけど。どんな理由でも、彼が私を必要としていることに安心してたんだ思う。
 
オンキ:なるほどね。かなりガツガツと求め合うみたいな感じだったんですね、きっと。
 
モマ:そうだと思う。けど、結局、最終的に離婚した理由は、仕事しなくなったことでしたね。
 
オンキ:お金か。
 
モマ:お金。その他にもいろんなごちゃごちゃあって面倒くさいから、さよならしましょっていう感じになりました。
 
オンキ:じゃあ想像するに、最初の旦那とは、あまり今は連絡してないですよね。
 
モマ:「養育費を払ってくださいね」の書類も、一応書いていただいたけど、払わないので。
 
オンキ:払えないでしょ。
 
モマ:払えないなら、もう役に立たないからと思って「もう金輪際連絡してこないでね」いう風に言って、切りましたね、もう。
 
オンキ:なるほど。1年ぐらいは続いたんですか?
 
モマ:そうですね。多分2年ぐらい続いたんじゃないかな。だから、今のパートナーと付き合う前がそれだったから、やっぱりそういう余韻は、ちょっと残ってんじゃないのかなっていうのはある。


そして崖を駆け下りる

 
オンキ:その反省から完全に学んで、そこではない所、トラップと崖を避けて、いいパートナーを選んだ?
 
モマ:そう。もう本当に、適当に画面スワイプしただけなのに、良かったなあって思う。
 
オンキ:完全にそういうのを狙ってるっていう気持ちになるから、的を外さなかったんですよね、きっと。
 
モマ:うん、良かった。まあでも、彼と一緒になってから、私もつられて崖を、崖というか山を駆け降りてるんじゃないかな、多分
 
オンキ:あー。でもそれ、綿に包むように「幸せでいようね❤」じゃなくて、「俺、崖降りるの好きだから。岩とかぶつかれるし」っていう相手がいると、すごい楽ですよね。
 
モマ:楽。
 
オンキ:相当楽だよね。「あー、これ崖なんだ」っていうね。旦那さんは、子供がディスアビリティ抱えてようがなんだろうが「これ崖だし」みたいな。
最後10分ぐらいなんですけども、そんなこんなのモマさんが、これからどうなるのかなっていうところも、聞いてもいいですか?
 
モマ:はい。
 
オンキ:こうありたいかな、こう目指していこうかなみたいなのとか。これから先のことってありますか?
 
モマ:なんだろうな。なんか、もっと楽しい生活がパートナーと送れればいいなと思います。お互いにとっていい、気持ちのいい空間を作りたいなあと思います。
 
オンキ:それは、物理的にも。なんていうか、体の置き場所だとか、やり繰りだとか、そういうの全部含めてですよね。
 
モマ:そう。まあでも、ベストな場所とか、ベストな関係性みたいなのは無いと思ってるので。
 
オンキ:はい。はい。
 
モマ:できるだけベターであればいいかなっていう風に思う。
 
オンキ:なんか大人だ。その通りですね。
 
モマ:まあだけど、もう多分、向こうもとんでもなく大変なこともあったんだろうし、嫌なこともあるし、私と生活してても。
 
オンキ:はいはいはい。
 
モマ:てなことはあるだろうから、どれだけそれを察してあげられて、それをケアできるようになれればいいんだろうなあと思う。別の形でもいいから。
 
オンキ:旦那さんのことをパートナーって呼んでますけど、モマさんが本当の意味でパートナー、「パートを担う人」になってるんじゃないですか。その心遣いというか、彼の心のケアもしつつ、仕事をしやすくもし、私との時間も少しでも豊かで楽しいものになればいいって考えているって、それ、本当のパートナーですよ。
 
モマ:うん。そうだといいなあ。そう思ってくれるといいなあ。
 
オンキ:そう思ってるでしょ。向こうも「うん俺の選択っていうか、このチョイス、いい崖選んだな」と思ってるんじゃないですか?
 
モマ:あはは。だからよく言われます、「君は稀有だね」って言われるんですけど。「僕と他の普通の女性が結婚したら、多分3回ぐらい離婚するよね」って。
 
オンキ:あー。もう相当、愛の言葉ですね、それ。
 
モマ:すごいなんか「うんっ」て思う。
 
オンキ:それは、なかなか聞けない。向こうの腹の底から出てる言葉ですね。
 
モマ:うん。いつもなんかそういう風に言うから、笑っちゃうけど。なんかまた変なこと言ってんなっ、とは思うけど。「うんっ」て風に思う。
 
オンキ:まあね。「そうなんだあ❤」って言って、目キラキラにさせる必要はないし、笑ってもいいと思うけど。それはね、かなりいいんじゃないかな。相当いいんじゃないかな。
 
モマ:「良かったねえ」っていつも言ってますけど。
 
オンキ:あー「良かったね、私なんかと結婚できて」って。はいはい。
 
モマ:「良かったねー」
 
オンキ:頭、撫でてあげてます?
 
モマ:あー。たまにこねくり回してます。
 
オンキ:でしょ。思った。
 
モマ:ワンちゃんみたいだと思う。「やめれ!」って言ってますね。
 
オンキ:そんときに、旦那さん、「ワンっ」て言わないんですか?
 
モマ:嫌がってます。
 
オンキ:でしょうね。お互いのその嫌がってる感じがちょうどですね。「やめろよ!」って言われてグリグリやってるぐらいが、ちょうどですね。
 
モマ:そう、なんか楽しい。
 
オンキ:それはもうちょっとね、ズルい。かなりいい。相当いい。まいった。
 
モマ:なんか嫌がってても、多分他人にやられたら嫌なんだろうなっていうことでも、こっちがやって許されるっていうの、すごいうれしい。多分、向こうもそう思ってると思う。
 
オンキ:あーそれ、相当いいや。今のパートナーさんの分身を作ろう系の計画は立ててるんですか?
 
モマ:いや、もういいかなーっていう感じをお互い。
 
オンキ:なるほど。
 
モマ:なんか、でもパートナーが言うには「俺みたいな子どもが生まれてきたら大変だよ」って言われる。
 
オンキ:「いやいや私の遺伝子も入るから、大丈夫だよ」って言わないんですか?
 
モマ:でも絶対に大変になりそうだなっていう風に思うから、じゃあいいし。もう今の子で結構手いっぱいだから、もういいよっていう風に言って。
 
オンキ:愛媛の遺伝子、強そうだからね。
 
モマ:まあなんかお母さん、向こうの義母が「すっごい大変だった」って言ってるの聞いてるから。
 
オンキ:ははは。そうなんだ。
 
モマ:じゃあ、もういいですっていう風な感じ。
 
オンキ:「モマちゃん、大変でしょ?あの子、本当に大変だったの」っていう感じで聞かせてもらえてるの?
 
モマ:周りの親戚とか彼の友達関連からもすごく「あいつ大変でしょ?」って言われる。で、心配される。
 
オンキ:大丈夫なの?って。
 
モマ:そう。「あんなので平気?」って言われる。平気じゃないよーって思う時もあるけど。
 
オンキ:思う時もあるんだ。
 
モマ:そう。でも、意外と「こういうところが腹立つんですよ」って話をしても「そういうところあるよね」って、周りの方が話聞いてくれるから、すごい楽。
 
オンキ:本当になんていうか、全然、心が安全だね。
 
モマ:そう。すごく余裕がある。
 
オンキ:それで「こう思ってるのに」っていうのに、誰も共感してくれないっていう環境だと、本当に辛いけど。「本当そうだよね」って、ほとんど全員が共感してくれる環境って、心が安全になるね、それ。
 
モマ:うーん。だってなんかこう、自分のパートナーについての愚痴とかを言っても、やっぱり主婦的なママさん界隈とかになると、やっぱりこう「男ってそういうところあるよね」って言ってても、全男性がそういう訳ではないじゃないですか。
 
オンキ:そうそう。「男ってね」って一般的に一括りにしちゃうディスりって、あんまり意味ないよね。
 
モマ:そう。あんまりなんか、別にこちらの心が軽くなる訳でもないし。「なんかウチのもね」っていう話をされても、嫌な気持で終わる。特定したウチのパートナーを知ってる人っていうのが、すごい楽。
 
オンキ:「だってアイツああだったもんな、きっとそうでしょう、やっぱりそうなんだ、大変だね」ってちゃんと言ってくれる人がいるっていうのは、すごい楽だよね。
 
モマ:そう。大学時代とかこうだったから、多分今でもこうなんじゃないの?とか。実家に住んでる時にね、とか。
 
オンキ:周りの人とかも、みんなギョッとしてたんだね。
 
モマ:うん、してた。全部しゃべることが直球だから、大学時代のあだ名が「直(ちょく)さん」なんだもん。
 
オンキ:直(ちょく)?
 
モマ:直なの。直球だから「直さん」。
 
オンキ:はあ。それでいろんな角を立てて、周りの人が痛い思いをしたり「そこまで言わんでも」と。合ってるけど「ここでそれ言うか」みたいなことを。そんな思いをしてるっていうのが、全然彼には跳ね返ってこない。
 
モマ:うん、多分ね。むしろ、そういうこと言って喜んでるんだと思う、本人は。
 
オンキ:あー。その周りのざわめきとかも含めて楽しんでるんだ。
 
モマ:うん、まあニコニコしてるから、そういうこと言ってるとき。
 
オンキ:是非、お会いしたくなってきました。
 
モマ:タチ悪いっすよ。面白いですよ、本当に。


アウトロ


オンキ:わかりました。もうすぐ1時間なんだけど、あらためて、ちっちゃい時から今へ、なかなかいい感じになってるなってお話しましたけど、この話して、今、どう感じてます?
 
モマ:うーん、どうだろうな。多分、パートナーにとっては、私はその「山駆け降りる」みたいなタイプの人だったんだろうなって思うし。それには多分、最適だったんじゃないかなとは思います。
 
オンキ:ご馳走様です。
 
モマ:と、思うし。「あー私、大変だったんだなあ!」と思います。
 
オンキ:あらためて(笑)
 
モマ:そう。大変だったなあって思うけど。なんか、また明日から頑張ろうっていう感じになります。
 
オンキ:良かったね。
 
モマ:また今日も、夕飯作るの面倒くさいなって思いながら作りますね。
 
オンキ:はい。
 
モマ:そうだな。んふふ。
 
オンキ:えっと、すごくありがとう。なんか、とてもいい話を聞いた気がするんですけど、気のせいでしょうか。
 
モマ:わからないです。日常だから、いつもの。
 
オンキ:この日常には、なにか大切なものが、ヒュイっと入ってたよ。
 
モマ:うん。良かったです。
 
オンキ:ありがとう。
 
モマ:こちらこそ。


インタビューを終えて

はー。「目を輝かせて崖を駆け下りてた少年」と「田んぼの向こうにいる友達と遊べなかった少女」が、時を越えてアプリで出会って、今は「普通に」暮らしてるんだ。大変だったなあって過去は過去として。崖になってくれ。いいわよ。いいの?って。

次回は、飲食業を仮の姿として「秘密の駆け込み寺」のお守りをしている仙人さんです。お楽しみに!
 

編集協力 有島 緋ナ

無名人インタビューのアーカイブが読めます


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?