「知ってほしい」気持ちに降りる

12月某日

福島県の木戸で、ふたば未来学園の高校生たちにクリエイティブ・ライティングのワークショップをした。


「語彙力がないんだよねえ」と、私を呼んでくれた鎌田ちえみちゃんは言う。

「今回ワークを受ける子たちは、社会起業部と言って、福島の現状を調べたり、社会や地域と関わる活動をする部活に所属しているので、外に向かって伝えたいことはたくさんあるはずなんだけど、でも、語彙力はないんだよねえ」

ちえみちゃんは、私が絵本「ひかりのりゅう」を出すために福島の原発事故の被害地域を取材していた時に出会った同い年の女の子だ。その時の彼女は福島復興支援財団というNPOで働いていて、取材を受けてくれた。あの時、震災後のショックで病人みたいだった私をよく受け入れてくれたと思う。

震災から数年が経ち、ちえみちゃんはNPOをやめて、今は高校の教員をしている。

彼女の言葉に、私は違和感を覚えた。

面白いものが書けることと、語彙力があることは全く別だからだ。

ツイッターなどで何万RTされている投稿が、世界中に読者のいる、子供向けの小説や童話や絵本が、難しい言葉ばかりで書かれているだろうか?大人にしかわからない、難解な語彙で構成されているだろうか?

自分も含めて、読み手である”みんな”は、日常の中で使っている言葉、「ふだん着」の言葉でものを考えたり、話したり、感じたり、しているのじゃないだろうか。語彙がないと書けない、と言うのは、「ある」ものよりも「ない」ものを数えるような、なんというかすごくテスト的な発想じゃないだろうか。

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