【量でカバー】


 30年程前に大学企画の海外研修旅行というのに参加しました。もちろんお金を持っている訳もないので親掛かりです。行くと言ってもブランド物買い物ツアーに興味がないので、目的を探しました。その結果は「美術館に行こう」です。その当時東京は、デパートの催し物と言えば美術展で、印象派や様々な時代のさまざまな絵画を見る機会がありました。そこでなんとなくスノッブな感じで「フェルメール」の作品を探して、出来るだけたくさん見て来ようと言う目的にしたのです。21日間の旅程の間出来るだけ滞在地にある美術館を探してひたすら絵の間を歩いてきました。同級生達が観光地を巡る間、ひたすらバスに乗り、電車に乗り、歩いて、美術館を巡ったのでした。実際に目にしたフェルメールは10点にも届きませんでしたし、その当時それほど感動もしなかったことは事実です。ですがその時に気がついたことは後々大きな財産となっています。その内容を少しずつ書いてみようと思います。

 まず一つ目の気付きは、美術鑑賞も量が大切ということです。移動や他の行動予定もありましたから、実質半分くらいの日程を美術館で過ごしたことになります。その間に目にした絵画や彫刻などの作品数は、三千点超でしょうか。初めのうちは、「へ~印象派だ~」くらいしか気付かなかったのに終りが近づくと、「モネの後期だね」とかなんとか気付くようになります。このタッチは誰々のいつ頃だとかわかるように成る訳です。それだけでなくなんとなく善し悪しのような物が見えて来たりもします。なにしろ子どもの頃から、画集があるような家ではありませんでしたから、名画も知らない中で「いい絵だな~」と思って名前とタイトルを見るとどこかで聞いたような。帰って調べると美術の教科書にも載るくらい有名な絵だったり、ちょっと見上手い絵のつまらなさが見えたり、下手に見える絵の面白さが見えたりするようになりました。そして、それまでつまらないと感じていた日本の絵画の面白さに気がついたのもこの旅行のおかげです。今もその時の感覚がそのまま生きているとは思いませんが、その時の感動や気付きが自分に大きな変化を与えてくれたことは確かです。また、この経験から言えることは、量をこなせば何かしらの能力はそれなりに向上するということです。短期間に密度を高く対象に接することは技術や感覚の習得に有効です。ですからこれから何かを学ぶ方は、量を一つの目標に据えて望むことは必ず良い結果を生むことになります。(あんまり美術っぽい内容じゃないですけど、続きます。)

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