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開けゴマ(壁)

その10 開けゴマ(壁)
 AIに「壁」のイメージをイラストにしてもらったら、上のようなイラストが出てきました。よくよく文字を読んでみるとOpen Sesame!とか書いてあるではありませんか!「開けゴマ」とは? AIがどこからそんな情報を持ってきたのか? AIに意志があるのであれば確認してみたいものです。(実際には入力者の書くプロンプト(指示書)で動いているんですが。今回は「ゴマ」なんて一言も書いてないんですけどね。)


 今回は壁の話を書きたいと思います。これも去年、他所で行った研修でお話させていただいた話題です。メタ認知への経路の一つとして、大切な内容と思っています。

 表は縦方向の上段に「変えられないもの、変えにくいもの」、下段に「変えられるもの、変えやすいもの」を対比して配置してあります。横方向の中央のカラムにそれぞれどのような壁か、右のカラムには対処方法を挙げています。この表から引いて少しだけ説明します。

変えられないもの、変えにくいもの
 変えられないものの中には「歴史」つまり過去の出来事は既に私たちの努力ではどうにも出来ない事実としてあります。
新卒で入社した現在の会社に馴染めない、といったことは良く聞く話です。視点を変えて馴染めない自分は何故馴染めないのか、ご自身の心の中をのぞいてみてください。職場の雰囲気が悪い、思い描いていた仕事と違うなど、ご自身の心の動きが見えてくるかもしれません。どのように雰囲気が悪いのか、どの様な働きかたを描いていたのか。周りの同僚や先輩はどんな風に感じているのか。情報を集めて整理していくことが出来ると思います。
ここまでくればあと5割位でゴール=スタートラインに立つことが出来ます。

変えられるもの、変えやすいもの
変えられるものの筆頭はやはり「生き方・考え方」でしょうか。ただしこれはご自身で気づいていないと難しいものになります。資料で例示した「権威勾配」「役職」「年齢」は、ことさら年月を経ると文化的背景を持っている自分と相手が存在することで、両サイドからの変容が必要となります。資料の中で「相互に」という注釈が付いている理由はここにあります。

「権威勾配」
 参考例として「権威勾配がもたらす航空機事の教訓」*を挙げます。機長の思い込みで離陸滑走路と工事中滑走路を間違えて進入し、それを質せなかった事故です。機長と副機長の上司・部下、考課者・被考課者の関係性が権威勾配を生んで事故の要因になっているようです。ここで第3の視点があれば事故は防げた可能性が高いと私は見ています。その視点とは、「安全運航」という誰にも否定できない絶対的な原則です。これが念頭にあれば、「考課者>被考課者」という権威勾配を、「安全運航>考課者」に置き換えることでその勾配を変化させることが出来ます。
*:高橋 俊介. キャリアをつくる独学力―プロフェッショナル人材として生き抜くための50のヒント (p.92). 東洋経済新報社. Kindle 版.参照
 「年齢」
「年齢」は色々なケースがあります。年下の上司、年上の部下、60歳定年などでしょうか。
年上の部下はやりにくいとお考えの方は少なからずいらっしゃいます。逆に年下の上司は嫌だという人も。比較的散見されるのは、学校の部活動などで上下関係を躾られてしまった方々でしょうか。学校も卒業して何年も経つと思いますが、学年が一つ上とか下とかという価値基準が存在しています。
この辺りの文化は、中国から伝来した儒学、朱子学にその端を見ることが出来ます。その中心的な考え方は「孝」です。家庭内で親孝行👉年長者への敬意👉社会での身分が高い人、年長者を敬うに繋がっているようです。また、「上下定分の理(上下の身分は生まれながらに決まっている。)」は朱子学の林羅山が唱えた学説で、江戸期の身分制度の理論的背景となったものです。
江戸時代初期から水戸藩も朱子学に傾倒し、明治政府の制度を整備した大久保利通、伊藤博文らもこの倫理観が根底にあった**ようです。
**:小島毅. 儒教が支えた明治維新 犀の教室 株式会社晶文社.P45、P18 参照 ( https://www.u-tokyo.ac.jp/biblioplaza/ja/D_00063.html

――歴史も含めてすべてがすべてではなく、「そういうこともあるのね」くらいにご理解いただけると助かります。そもそも昔の読書層は、為政者か僧侶か藩校・私塾くらいで、教育制度が全国で整備されたのは明治以降ですので。――

先輩のアドバイス
「中国は「父」、韓国は「兄」、日本は「弟」といった視点があるからね(その文化を理解しなさい)」と、当時の上席に随伴して韓国に行った際に、教えてもらったことがあります。韓国の人気スターが出てくるYouTubeや衛星放送を見ていると年齢の上下を気にしているようです。日本も似ていますよね。
歴史的、文化的背景が見えてきたところで「年齢」が価値基準として十分条件か否か、皆さんには見えてきたのではないでしょうか。

開けゴマ
 皆さんの視点からはまた別の「壁」が出現しているかもしれません。そんな時には先ほどの表を参考にその壁がどのようなモノなのか、具体的に感じる壁の性質で分類して、対処方法を考えるのも良いと思います。

皆さん、気づかれたことはありましたか。
私は、正解を知っているわけでは無いのです。しかし、皆さんと一緒に考えることが出来ます。可能であれば、皆さんの気づきを共有させてください。

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