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「福翁自伝」を読む① 「精神性を学べ」 【慶應義塾中等部対策】

先日テレビを観ていたら、女優の芦田愛菜さんが、中学受験の時に「福翁自伝」(岩波文庫)を読んだという話をしていました。
慶應中等部を目指すのであれば、小学生のうちから、これぐらいは読んでおかないと、合格はおぼつかないでしょう。

では、どこを、どう読んだら良いのでしょうか。
ただ漫然と、楽しい物語を読むようなやり方ではダメです。
受験勉強としてする読書では、論説文を読む時のように、きちんとキーワードを拾って暗記するというように「緻密で集中的な読み方」をする必要があります。ひらがなばかりを拾い読みするようなやり方では、全く通用しません。

中等部と言えども「慶應」を受験するのであれば、創業者である福澤諭吉の生き様と精神性を深く吸収する必要があるでしょう。
そうでなければ慶應義塾に入学する資格はないと言っても、過言ではないでしょう。
特に私学は、「建学の精神」というものが重要です。
単なる合格ノウハウだけを詰め込んでいるようでは通用しないのです。
それは、国語の問題文で「福翁自伝」が出るから読むというような浅はかな心構えとは、全く次元が違う話です。

そこでは、目に見えない精神性が問われます。
芦田愛菜さんは、そこがわかっていたので、「福翁自伝」を読んでいたのでしょう。実際に、見事合格を勝ち取っています。
合格者のやったことを全て真似するというのは、受験生にとって、意外に近道であることが多いです。

「福翁自伝」には、福澤諭吉の生き様と精神性が色濃く滲み出ており、昔から名著の誉れ高いものです。
文芸評論家の小林秀雄も高く評価しています。
このような名文をできるだけ早いうちから読み込んでいくことは、精神の成長を促すことに繋がるでしょう。
精神性の高い名文名著を吸収するからこそ、読者の精神性も上がるのです。
小学生が読むべきものはこういうものです。
中学受験は、受験生の「大人度おとなど」を測るものです。
精神が未熟なままでは、何をやってもうまくいかないでしょう。
どの科目がどうという以前に、精神性が重要なのです。
精神の成長を促すためにも、このような名文名著に、小学4年生の頃から触れていくことは、とても大切なことです。
そのような優れた本を音読し、身体に叩き込むまで精読することは、中学受験の対策に留まらず、人生の中で貴重な経験となるでしょう。

「学問のすすめ」にもあるように、福澤諭吉を学問を大事にしていました。彼が書いた「福翁自伝」では、緒方洪庵の適塾での生活が詳しく記されています。受験生はここを熟読するとよいでしょう。
「緒方の塾風」(「新訂 福翁自伝」岩波文庫P.63~P.94)で、福澤は、当時の苦学の様子を紹介しています。
・枕も布団もない部屋で寝泊まりしたこと(同書P.80)
・原書会読かいどくのため原書の写本をしたこと(同書P.81)
・オランダの文典が二冊あって(ガラマンチカとセインタキス)
 一部しかないから鵞筆がぺん(鳥の羽を削ったペン)を作り
 写本とした事(同書P.82)
・ヅーフハルマという辞書が一冊しかなくて、
 ヅーフ部屋という字引のある部屋に、
 五人も十人も群れをなして、
 無言で字引を引きつつ勉強したこと(同書P.83~84)
・・・などなど。
これに比べれば、現代の小学生が「いかに恵まれた学習環境にいるか」わかるでしょう。

そこには、まさしく「福澤精神」と呼べるものが感じられます。
これを読むことで、彼の「独立自尊」の気風が、ここから生まれたものであることがよく理解できるはずです。

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