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【パン】小麦アレルギーの発生メカニズム

パン屋のくせになまいきだ。

パン屋なのにパンの事を何も投稿していなかったので、パンについても投稿をしていこうと思います。


小麦アレルギーについて

パンについてもう一つ重要な主人公は、小麦グルテンです。グルテンは低分子たんぱく質のグリアジンと、高分子たんぱく質のグルテニンからなる物質であり、小麦アレルギーの原因物質です。知名度の割には細胞生物学の守備範囲になるのでパン屋でも良く分かっていない人が多く、正確に説明できない方が多いのでまとめておきます。

アレルギー反応の分類

アレルギーはⅠ型反応~Ⅳ型反応の4つに分類されています。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ型は血清抗体(IgE)が関与する体液性免疫、Ⅳ型は感作リンバ球による細胞性免疫(非IgE)と大別されています(厚生労働省・アレルギー総論より)このうち、一部の食物アレルギーを除き、基本的な食物アレルギーはⅠ型のIgE依存型のアレルギー反応であると考えられています(東京都保健医療局より)このⅠ型アレルギー反応は即時型、アナフィラキシー型と呼ばれ、ほとんどの人がイメージするアレルギー反応です。

アレルギー反応のメカニズム

小麦に含まれるたんぱく質、グルテンはグルテニンとグリアジンからなるたんぱく質です。たんぱく質はアミノ酸が多数結合した物質であり、たんぱく質そのものが危害を及ぼすわけではありません。このグルテンが胃や腸で消化(分解)される際に、完全に分解されずに不完全に分解されて大きなたんぱく質のまま腸に吸収されることがあります。この大きなたんぱく質が腸管免疫系に異物として認識されることで問題が発生します。免疫系には目がついているわけではないので、大きめのたんぱく質の塊が来たらとりあえず反応します。

腸管免疫系の抗原提示細胞(樹状細胞)は、異物として取り込んだ小麦たんぱく質の一部を外敵としてT細胞に提示します(抗原提示)。樹状細胞から抗原提示されたT細胞は活性化し、同じ抗原を細胞表面に提示しているB細胞を活性化させるサイトカインを放出します。このことでB細胞が活性化されて小麦たんぱく質に特異的なIgE抗体を産生します。このIgE抗体が全身に存在する肥満細胞上のIgE受容体に結合して感作(攻撃準備態勢)が成立します。

この状態で、小麦たんぱく質が吸収され肥満細胞の表面に接触すると、肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出されてアレルギー症状を引き起こします。(食物アレルギーの発症機構・愛産研ニュース 6 月号(2007.6)免疫の仕組み・NHK食物アレルギーの仕組みって?・味の素より)

巷でハチに2回刺されると危ないと言われるのは、1回目で感作が成立し、2回目でアレルギー症状を引き起こすからです。

なぜ小麦たんぱく質に反応するB細胞が存在しているのか?

小麦たんぱく質由来の抗原に対応するB細胞がなければ、そもそも小麦アレルギーは発生しません。B細胞がランダムにIgE抗体を作る仕組み(遺伝子再構成)は、ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進先生によって解明されました。

簡単に説明すると、1つのB細胞は1種類の抗体しか作りませんが、ヒトの免疫系は未知の外敵に対応するために、とりあえずランダムに無数の種類のB細胞を作り、そのうち自分に反応するB細胞を排除しています。排除されなかったB細胞の中に、小麦たんぱく質に反応するB細胞が残ってるとアレルギーを起こす可能性が出てきます。

Wikipediaに教科書レベルの詳細な説明があるので、詳しい説明はそちらをご覧ください。(WikiPedia)教科書ではThe Cellあたりが周辺知識を網羅していてお勧めです。(Amazon

闇雲にアレルギーを恐れずに、知識をもって正しく恐れましょう。

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