『2021年6月23日午前2時57分 別海町中春別』
白夜のような、夏至を一日過ぎただけの、北海道道東地方の夜明け。
搾乳までまだ時間があるけど、明るさに誘われて早く目覚めてみた。
宇宙遊泳しているみたい。
線香花火のように開いた花の周囲を蜂が飛び回っていた。
時間軸を隔てて住み別けるはずの植物が、夏至の頃の北海道では無重力で爆発するように繁茂する。
やがて樹木の緑が濃くなると、林床の植物は色褪せ、枯れゆくのだけど。そして乏しい光の中で、光をあまり必要としない苔類や羊歯類や菌類が優勢となり、季節は少しずつ「死」に向かう。
搾乳まで、まだ時間があるけれど。
牛たちは、半世紀かけて踏みしめてきた道を通い、放牧地へ向かう。
私たちは、変わらない。
惑星が恒星を365日かけて回る。
季節だけが変わる。
蜂が花々のまわりを飛び交うように。
写真 小幡マキ 文 大崎航
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