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推し活翻訳3冊目。The Girl Who Speaks Bear、勝手に邦題「くまのヤンカと雪の森」

原題:The Girl Who Speaks Bear
原作者:Sophie Anderson
勝手に邦題:くまのヤンカと雪の森
 
概要と感想
 
雪の森のそばの村に暮らすヤンカは、12歳とは思えない大きな体で力も強い。村のみんなは親しみをこめて「くまのヤンカ」と呼ぶけれど、小さなころ、クマのほら穴の前で拾われたことを知っている人はそんなにいない。生まれた場所も、本当の両親もわからず、村には居場所がないと感じるヤンカが心を許すのは、育ての親のマモチュカ、幼なじみのサーシャ、ときどきふらりとやって来てはおとぎ話を聞かせてくれるアナトリ、そして、家に住みついているイタチのチュウトリくらいです。
 
マモチュカは、危ないから奥まで行ってはだめと言いますが、森が自分を呼んでいる感覚は日増しに強くなり、小鳥が「ヤンカ、森に帰っておいで!」と呼ぶのがわかるように。そして、「雪どけ祭り」で起こった事故から目ざめてみると、なんと両足がクマの足に変わっているではありませんか! こんな姿はだれにも見せられない、それに、森に自分の過去の手がかりがあると思うヤンカは、チュウトリと一緒に危険な森にわけいっていきます。
 
森でオオカミに立ちむかい、氷の川では命がけでヘラジカを救い、ニワトリの足が生えたヤーガの家に出会い、赤んぼうの自分を育ててくれたおばあちゃんグマのほら穴に行きつきいたヤンカは、全身クマに変わります。自分のいるべき場所は森なのか村なのか、望みは、クマとして生きることか、人間にもどることか。悩みはますます深まりますが、森で出会った仲間たちに支えられ、みんなで炎の山の火竜スメイに立ちむかいます。スメイが守る菩提樹に、自分を捜しにきて死にかけているサーシャを救ってもらい、クマに変わる呪いを解いてもらうために。
 
記事が長くなるので紹介していませんが、アナトリをはじめ、登場人物や動物たちが語るおとぎ話が12話出てきます。どれもとても素敵なだけでなく、作中の現実の出来事を縦糸とするなら、そのあいだをするすると走る横糸となって、ヤンカの物語を織り上げていくのです。まるで、マモチュカがヤンカのために用意してくれた、森の風景を刺繡したスカートのように。
 
ヤンカがなにを選んだかは読んでのお楽しみ。多様化する自己の在り方や、関わりのなかで自分の居場所を見つけ、差しのべられた手を恐れずに握ることの大切さを物語にのせて示しているのが秀逸です。少し長めですが、それは、ヤンカの戸惑いや成長をていねいに描きだしているからで、読者は少女のゆれる心とひとつになって旅を続けられるはず。スメイとの戦いは手に汗にぎる場面の連続です。
 
それに、ヤンカのまわりを固めるキャラクターたちがとっても魅力的。イタチのチュウトリ、灰色オオカミのイワン、若いヘラジカのユーリ、巨大フクロウのブラキストン、そして、ヤーガの家がいい味出していて、もうこれ、ディズニー映画じゃない?
 
受賞歴:Independent Bookshop Book of the Year、Wales Book of the Year、カーネギー賞ショートリスト

※上の画像は、Scholastic Press版の装画から。とても印象的です。

〈雪の森の地図〉はPDFが公開されていて、細かなところまで楽しめます。

https://sophieinspaceblog.files.wordpress.com/2020/08/the-girl-who-speaks-bear-map.pdf

こちらは、Usborne Publishing版の装画のショートムービー
アンダーソンさんの了解を得て紹介しています。

https://sophieandersonauthor.com/books/thegirlwhospeaksbear


作中のキャラクターと家族が同じ名前だと
なんだか嬉しくなるのわたしだけ?

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