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不審者情報と若かりしあの頃

先日、某駅前広場にて、とある光景を目にしました。その日は資格の勉強をするために、私一人で行動していました。

3人組の女子学生(中学生かな?)がベンチに座っていて、その背後から、1人の高齢男性が大声で何かを話しかけていたのです。

何かトラブルかな?と思い注意していると、「若い奴らのせいで」とか「礼儀が」とか聞こえてきました。

絡まれてる。すごい絡まれてる。そして少女たちは可哀想に無表情で固まっている。

どうしようか迷ったのですが、試しに、滅茶苦茶やかましい声で電話をしているふりをしながら近くをうろついてみたところ、喋り辛くなったのか、おじいさんは立ち去っていきました。勝ちました。


昔々。私が高校生の頃、通学に利用していた電車では痴漢が横行していました。比喩ではなく本当にそこら中に痴漢行為を働く人がいたように見えたし、女子高生の制服を着たホモサピエンスなら皆すべからく被害にあっていたんじゃないかと思います。かくいう私も制服に身を包むホモサピエンスの一人でしたので、何度かに被害にあっておりました。ある日、学校の最寄り駅で電車を降りようとしたところ、1人の男性(というか犯人)に腕をつかまれ、ホームのベンチに引っ張っていかれたことがありました。何が起きたのか分からず呆然としていると、その男は私に向かって

「今度の日曜は空いてる?」

と、そう言ったのです。当時の私は混乱するやら怖いやらで、無言のままとにかく走って逃げました。そしてしばらくして、後からじわじわと湧いてくる、怒り。なんで私が日曜日に痴漢のおじさんと会うと思うわけ!?万に一つも会うわけないでしょう!あんな人目に付くところで堂々と何を言ってるんだ!と。

その謎が解けたのはつい最近、小さなネットの記事を読んだ瞬間です。元痴漢常習犯の男性にインタビューをしたもので、そこにはこんな感じのことが書いてありました。

「相手の女性が自分の痴漢行為を拒絶しないのを、受け入れてくれている意思表示と思ってしまっていた。女性とコミュニケーションが取れている気になった」

ある意味、目からうろこでした。要は、私に日曜日のアポをとろうとしてきた男性も、私がリアクションを取らずに電車内で固まっているのを、まんざらでもないのだと捉えていた?

認知の歪みというのは、本人には中々自覚できないから厄介ですよね。誰だって、自分の見ている世界が真実だと信じているものです。冒頭でお話しした駅前の高齢男性も、女の子が黙りこくっているのを、「神妙に聞き入っている」と捉えていたから、話し続けていたのかもしれません。

最近、地域の防犯メールに不審者情報が届くことがあります。娘と同い年の子が話しかけられた、腕をつかまれたという情報もありました。子供たちが危ない目に合わないように、親として気を配っていかないとな、と思います。ものごとの善悪の話以前に、そもそも世の中は自分と異なる認知のもとに行動している人だらけ、それは当たり前だと思いますが、この社会で生きていく上では、何とか傷つかず、また人を傷つけない努力が必要ですね。

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