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複業には、正社員で働くだけでは知り得ない醍醐味がある。人生100年時代に先駆けた働き方

1社にとどまらず、さまざまな企業で自身の能力や経験を活かして新たな活躍の場を広げる「複業人材」を紹介する本シリーズ。第5回目に登場するのは、ビジョナル株式会社で子会社の経営支援を担当する村本 佳駿さんです。正社員としてエンジニア、事業企画、プロジェクトマネジメント、経営企画とあらゆる領域で能力を発揮する傍ら、複業にも挑戦している村本さんに、複業を始めた経緯や得られる価値、「正社員として実績を上げている方に複業をお勧めしたい」と話す理由を伺いました。


今後は人材が企業を取捨選択する時代。己の可能性を知るために複業を開始

― 村本さんの自己紹介をお願いします。

新卒でソフトバンクに法人事業向けのインフラエンジニアとして入社し、エンタープライズ向け企業のネットワークの設計や構築、運用に3年間従事しました。その後、ソフトバンクロボティクスに異動して自律型ヒューマノイド・ロボット「Pepper」を中心としたロボット・AI事業の立ち上げに携わり、BtoC・BtoBの事業企画や販売施策の検討を行いました。

ちょうどロボティクスやAI、ビッグデータが話題になっていた頃に、AIの開発・実装、戦略立案などを展開するスタートアップに転職し、プロジェクトマネージャーとして事業開発や営業、ソリューションの提案、AIプロダクトのマネジメントを経験しました。

その後はビズリーチに入社し、今まで経験したことのなかったSaaSに目を向け、HRMOS(ハーモス)事業部で事業企画として戦略策定などを担当。経営企画室に異動してからは内部統制・ガバナンスから各管理業務・会計までの領域を企画から推進し、予算・コスト管理の適正化や情報システム部の管理職も兼務しました。

現在(2024年3月)はビジョナルに転籍し、子会社の経営支援やPMI(M&Aの成立後に行われる統合プロセス)に従事しています。プライベートでは、もうすぐ6歳になる娘と1歳の息子の育児をしています。最近は自宅のリフォームによる引っ越しがあり土日もバタバタしていますが、時間に余裕ができたら心身のリフレッシュのためにサウナに入ったり映画を観たりしています。

― 本業でさまざまなキャリアを積んでいらっしゃいますね。複業ではどのようなご経験がありますか?

現在は日本発のAI英会話学習アプリを開発するスタートアップのスピークバディ社にて経営企画を支援しています。これまで複業でお世話になった企業は数社で、事業開発支援、AIやITプロジェクトのマネジメント、経営企画・管理のコンサルティングをしてきました。

― 村本さんが複業を開始した経緯をお聞かせください。

日本全体の労働人口が減少している昨今「企業が正社員を増やして経営することだけが正解ではない」と考えているためです。例えば、シードからシリーズA、B、Cと進むと、企業が求める人材のスキル・能力も変わりますよね。現在でも、IT業界ではプロダクトを開発する人材、PoC(概念実証。Proof of Concept)からグロースを担う人材、マーケティングして販路を増やす人材など、事業のフェーズによって必要な即戦力を複業で採用する企業もあります。

働く側からしても、複業で自分のバリューを発揮したり、「正社員かフリーランスか」にとどまらず自由にキャリアを選択したりする社会になると予想しています。そこで私にどんなバリューがあるのか、所属している企業以外でも成果を上げられるのかを知るために複業を始めました。複業先の方々と信頼関係を築くと、他の企業からもご依頼いただいたり、自分の強みがどこにあるのかを見返したり、ビジネスパーソンとして継続的に成長したりできるため、正社員1本で働くだけでは知り得ない醍醐味があると考えています。

スキルを得るだけではない。複業があれば本業のストレスも解消できる

― 本業と複業を同時進行する上で、どのように時間を使っていらっしゃいますか?

本業では残業時間がほぼ発生しないため、複業の時間を確保できていますね。複業に取り組むのは、平日は早朝に起きて子どもたちの面倒を見た後や、本業の業務を終えて帰宅してから夜中まで。土日祝日を使うこともありますが、あらかじめ自分で決めた時間内に働くようにしています。

― 複業を開始しようとした時、ハードルを感じたことはありますか?

そもそも転職活動の段階から、社員の複業を認めている企業を選んでいましたね。終身雇用の崩壊がささやかれる中、社内政治など、自分のプレゼンスを上げることに躍起になる人材が多い企業では価値観が合わないと判断したからです。複業先と契約を結ぶ段階では、お互いの目的やニーズ、条件、業務の粒度をすり合わせ、実務を開始した時に齟齬や無駄な工数が発生しないようにしています。

― 複業で得られるメリットは何だと思いますか?

本業だけでは得られないスキル・能力、経験が積めると考えています。また、他の複業家の方々もおっしゃっているように、ヒトはシングルタスクの生き物で、本業で嫌なことがあるとストレスを感じてつらくなってしまいますが、複業先で能力を発揮したり新たな仲間ができたりすると精神的なバランスが取れ、日常生活にもメリハリが出て自己肯定感を維持できるようになります。

― 反対に、デメリットを感じることはありますか?

ほとんど感じたことはありません。ただ、私が事業開発や経営企画を軸に活動している中、AIやITのプロジェクトマネジメントでもご依頼いただいた時「十分な工数が取れないかもしれない」と頭をよぎったものの、先方との関係性を優先して「やります」と回答し、業務管理が大変になったことはあります。以来、複業先と最初にすり合わせる時はコンテキストを揃え、実際に抱えている課題をヒアリングしています。

― 過密スケジュールで突発的な業務や事態が発生した時、どのように対応していらっしゃいますか?

深夜の時間帯に対応したり、本業に影響がなければ有給を使ったりしています。プライベートで子どもが熱を出すなどの突発的なことが発生し、本業にも複業にも「ご迷惑をおかけしたかもしれない・・・」と申し訳なく思ったこともありますが、信頼してくださっている方々を裏切らないようにリカバリーを徹底しています。本業でも複業先でも、事業が成長して初めて私が参画している意味を成すので妥協しません。

正社員のあなたが「できている」のは環境要因?複業で検証しよう


― 70歳で定年退職、人生100年と謳われる昨今、村本さんはどのようなキャリアを送りたいとお考えですか。

エンジニアや事業開発、経営企画の経験を活かし、今後はさまざまな経営や会社の中身を見ることで自分の視座を高めていきます。子会社の支援やPMIを実施してきましたが、企業間のシナジーをM&Aによっていかに作っていけるのかを考えたいですね。買収後のPMIよりも、買収を検討する時のロングリスト(M&Aの初期段階にてターゲット候補の企業を一定の条件で絞り込んで作成された候補企業リスト)の作成からデューデリジェンスまで進めたいです。

中長期的観点では「職務に特化したスキル・経験を持つ、スペシャリストとしてのジョブ型」よりも「経営や事業、業務、システム、社内文化を理解し広い視座を持つ、ゼネラリストとしてのジョブ型」の方がこれまでのキャリアに近いし、企業にも必要不可欠になってくると考えています。私は将来も同じ企業で働いているとは想像しておらず、転職、あらゆる事業への参画、起業・経営と、どの選択肢を選んでも成果を出せるように、本業や複業でさまざまな業種や業態、経営スタイルを見て学び、汎用的なスキルや知見を増やしておきたいです。

― ATOMica(アトミカ)でスタートしたサービス「おためし複業」は、どのような方にぴったりでしょうか。

「自分は社内である程度できている」と考えている方に合うのではないでしょうか。複業を経験してみると「できている」のは社内の環境要因か、自分の要因かを判別できます。フェーズ1として自社で実績を上げ、フェーズ2として他業種、他業態、他の方が経営している環境でも同じバリューを発揮できるのかを検証できます。自分の成果だと分かると自信にも繋がり、あらゆる分野に積極的に挑戦できるようになります。

正社員でリファラル採用やリファレンスチェックがあるように、企業が「おためし複業」を利用すると、採用担当者は候補者が複業していた企業に「どうでしたか?」と直接問い合わせ、客観的にスキルや能力、事業への貢献度を把握できます。この点からも「おためし複業」のサービスとしてのニーズが高まると思います。

― 複業してみたいけれどまだ行動していない、とお悩みの方へメッセージをお願いします。

複業をしていなくてもそれがどんな感じなのかを知るためには、それこそATOMicaや複業人材の集まるコミュニティに積極的に顔を出してみることをお勧めします。実際に複業している方の意見や体験談を聞き、自分で納得できる理由を見つけるのが、複業に向けて動き出すきっかけになるのではないでしょうか。まずは少し行動し、少し複業人材と話してみるだけでも、ご自分の視野や価値感が変わると思います。

― 村本さん、お話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

(取材・文:佐野 桃木)

※ 複業を試してみたい方や、どのスキルで複業すればいいのかを迷っている方は、以下のフォームよりお気軽に「おためし複業」へお申し込みください。
https://forms.gle/RRHnxb4o7iJMQJGe7