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仕事は1社じゃなくていい。大企業からフリーランスに転身、多種多様な働き方を実現

1社にとどまらず、さまざまな企業で自身の能力や経験を活かして新たな活躍の場を広げる「複業人材」を紹介する本シリーズ。第3回目に登場するのは、フリーランスとして複数社の事業に参画している中村 友香さんです。中村さんは新卒でサントリーホールディングスに入社して人気商品の開発を手がけた後、外資系企業や外資系メーカーで開発の枠を超えた業務にも携わります。サントリー時代にお世話になった方が立ち上げた事業を手伝い、正式なオファーを受けたことを機に独立。複数社と仕事をする働き方を選択します。正社員時代の活躍やフリーランスとして働くメリット、またフリーランスを経て挑戦したいキャリアを伺いました。


大企業のリーダーを辞め、独立して複業する働き方にシフト

― 中村さんの自己紹介をお願いします。

現在(2024年1月)はフリーランスとして3社と契約を結び、各社との仕事を同時進行しています。新卒で入社したサントリーホールディングスでは清涼飲料ブランドの商品開発部でコンセプトの作成からレシピ開発、大量生産できるようにするスケールアップまで幅広く担当しました。実はもともと「伊右衛門のレシピ開発者になりたい」と願って入社し、運も味方して配属することができたんです。途中から「伊右衛門」に並行し、体脂肪を減らすのを助ける特定保健用食品「特茶」などの開発も手がけました。国内外の商品開発部に8年間所属した後、外資系マーケティングコンサルティング会社で商品開発コンサルタントを1年半、飲料や食品の原料を取り扱う外資系メーカーで新規事業開発のプロジェクトリーダーを3年間務めました。

― サントリーにはさまざまな人気商品がある中、新卒の頃から「伊右衛門」の開発をご希望になったのはなぜですか?

一般的に、コーヒーやジュース・果汁入り飲料は、消費者の飲むシーンやタイミングが明確で「飲みたい」と思って購入することが多いですが、お茶類はいつも無意識に手に取るんですね。それでも「綾鷹がいい」「お〜いお茶がいい」「生茶がいい」「ブランドにはこだわらない」など、個人の好みは千差万別です。消費者が無意識に選ぶブランドを作り育てるのは面白そうだと考えていました。

― 正社員として3社でキャリアを積んだ後、フリーランスとして独立した背景をお聞かせください。

私がサントリーを退職した時、そこでお世話になった方が起業し、その頃から現在までその事業をお手伝いしていたことがきっかけです。当時、私が転職した会社が社員の複業を禁止していたので、お金を頂かないことを条件に商品の打ち合わせをしたり、開発のアドバイスをさせていただいたりしました。その事業が資金調達をした2023年春に「正式に参画してほしい」と打診していただき「これからは本腰を入れないと大変だ」と。ビジネスとしての魅力やポテンシャルも感じていて、断る理由がなかったんですよね。「独立して、あらゆる仕事を引き受けてみよう」と決意しました。

― 正社員で働きながら複業をする方もいますが、中村さんは独立して複数の会社と協業する道を選択したんですね。

グローバル全体の動きは不明ですが、外資系企業では複業を解禁していない傾向があり、複業に理解のある会社を探し回って転職するくらいなら、個人で契約を結んで全ての仕事に携わりたいと思いました。また、高校の同級生で現在は起業家として活躍する友人に独立を相談したところ「やってみれば?今までだってしっかり実績を作ってきたんだから、フリーになったらもっと飛躍できるよ」と背中を押してくれたんです。

― 現在、中村さんが参画している3つの事業とお仕事についてお聞かせください。

まず、先述のサントリーでお世話になった方が設立したWorld Matcha株式会社は、抹茶のエスプレッソマシンを独自に開発し、緑茶葉をサブスクリプションで販売しています。私はマシンや茶葉製品の開発リードや品質保証の体制構築を担当しています。次に、株式会社イミューは、ふるさと納税のブランディングやコンサルティングを行う傍ら、自社工場を新設して独自の商品を開発しています。そこではブランディング戦略を一緒に考えたり、製造工場の仕組みづくりをサポートしたりしています。

また、株式会社ATOMica(読み、アトミカ)は、コワーキングを起点とした共創を生み出す仕組み「ソーシャルコワーキング®」や、施設・コミュニティ・イベント運営のノウハウを集約したコワーキング運営システム「knotPLACE(ノット プレイス)」といった、日本の各地域で繋がりをつくるサービスを展開しています。私は複業を希望する人材と、即戦力を求めるスタートアップ・企業をマッチングするサービス「おためし複業」の開発を行っています。

複業先で「言われた仕事をやるだけ」は、価値提供にならない

― フリーランスとして複数の会社と契約を結ぶメリットは何でしょうか。

やはり、さまざまな事業と仕事ができることです。1社だけで勤めていたら出会えないような方と仕事をしたり、各社で目指していることやゴールまでの過程、頂ける役割が異なるので新たな知見や経験を得られたりします。しかも、正社員時代に培った経験を各社に貢献することで自分のキャリアの幅が想像以上に広がっていますね。

― 複数の会社と協業する中、各社とのお仕事はどのようにスケジュール管理をしていらっしゃいますか?

例えば、会議の予定は「A社の後にすぐB社」のように連続して入れないようにしています。私に時間の余裕がないと、期待値調整が上手くいかなかったり、中途半端な議論になってしまったり、会議に遅れて信頼を失ったりすることになりかねないためです。ただ、マルチタスクが苦手というわけではないので、1日のスケジュールでは優先順位や緊急度を考えながら複数の会社の業務を遂行することがほとんど。このマルチタスクは、サントリー時代に発売時期の異なる複数の商品を担当していた経験から身に付けられたスキルだと実感しています。

― 中村さんは正社員時代に管理職を経験し、一つの分野で専門性も高めています。フリーランスになった現在、各社で「もっと深く携わりたい」と感じることはありますか?

はい。それぞれの会社に独自の魅力やコアコンピテンシーがあり、私の関わり方もさまざまなので「もっと深く携わりたい」と実感する機会は多いです。同時に、協業している会社の外でも多くの起業家やビジネスパーソンと出会うため、彼らと仕事でご一緒することにもワクワクを感じています。

― 3社の皆さんとはどのように関係を構築していらっしゃいますか?

社内の皆さんが気づいていない景色をお伝えしたり、開発で「こういうふうにしたらいかがでしょうか」と積極的に提案したりしています。相手に言われて「分かりました。やります」と始めるよりも、自ら進んでコミュニケーションをとり「自分たちにはないスタイルや視点を持って動いてくれる」と喜んでいただけるようにしています。

正社員3社目で新規事業開発を担っていた頃「外資系って既存ビジネスが手堅い」と実感することが多々ありました。そこで、会社から新たなミッションを頂いた時、上司や他部署の方々に「こういうふうにやった方がいいと思います。こんなことが既存ビジネスと異なるからです」と提案し続けた経験から「言われた仕事をやるだけ」は価値提供ではないと考えています。

複業は「やってみようかな」から始めてみることをオススメ

― これからの5〜10年では、どのようなキャリアに挑戦したいですか?

正直に言うと、今は選択肢が増えすぎているという感じです。起業するのもいいし、現在の3社に加え、新たに業務委託をご検討いただいている会社もあるので、さらにさまざまな事業と関わっていくのもいい。フリーランスとして経験を積む過程で、フルコミットしたい会社に出会ったらそうしてもいい。選択の幅が広がり、明確な「どうなりたい」がなくなりましたね。

―「 人生100年時代」「70歳定年退職」と言われるように、今後は社会人としての活動期間が長くなります。どのような社会人でありたいとお考えですか?

サントリー時代に上司から「何を実現したくてそのキャリアを描くのか」と問われ、転職やキャリア面談の度に思い巡らせてきましたが「それは模索し続けるものではないか」が私の結論です。憧れているだけでは、自分の身にならない。どんなふうに生きたいのかを考えながら選択肢を持ち続けること、また、選択肢を持つために行動し続けることが大事ですよね。強い意志を持って行動している方を見て「どうしよう」と悩みながら模索している方もいますが、それでいいのでは、と。

― 中村さんにとってATOMicaが運営する「おためし複業」にはどのような魅力があると思いますか?

特に、メーカーで働いていて、自分の視野を広げたい方が「やってみよう」と奮起できる企画だと考えています。私が「おためし複業」を手伝おうと決めた理由の一つですが「複業OK」という大企業は増えているのに、なかなか挑戦できていない方が多いのが現状。本企画は「おためし」と謳っているだけあり、気軽に新たな分野に挑戦したり、新たな仲間を作ったりして自分のスキルや経験を高められます。大企業で自分がやっていることが別の環境でも通用するのか、再現性があるのかを確かめるために、複業を始めてみてはいかがでしょうか。「人手が足りなくて事業推進ができない」と悩むスタートアップに「こうしたらできますよ」と提案しながらアクションを起こすと喜んでいただけるし「今までやってきたこと」が真の価値に変わったと実感するでしょう。

― 最後に「複業してみたいけれど、どう始めたらいいのか分からない」と考えている方へメッセージをお願いします。

「やってみようかな」くらいで複業を始めてみることをお勧めします。本業以外でできることを前向きに見つめ「何も失うものはない」と割り切って挑戦していただきたいです。本業を持っている方であれば、困ったことが起きてもそこに立ち返ればいいだけです。フリーランスになった私にはそのような後ろ盾がなく、いかにマインドセットをしてプラスに転じさせるのかを考え抜きながら行動しています。マインドセットは人それぞれなので、何を得ることが嬉しく、何を失うことが不安なのか、また、それをカバーする手段は何なのかを認識しておくことが大切です。

― 中村さん、お話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

(取材・文:佐野 桃木)

※ 複業を試してみたい方や、どのスキルで複業すればいいのかを迷っている方は、以下のフォームよりお気軽に「おためし複業」へお申し込みください。
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