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おてつたび先に嫁ぎ"旅館の若女将"に。直感を信じ、選びとった新しい道【おてつびとインタビューVol.32】

今回は、おてつたびで訪れた旅館で現在の旦那さんに出会い、沖縄県から嫁いだ辻 艶弥(つじ つやみ)さんにお話をうかがいました。

●これまでに参加したおてつたび●
兵庫県美方郡香美町「にしたにや海華
奈良県吉野郡川上村「朝日館
福島県双葉郡大熊町「大熊町宿泊温浴施設ほっと大熊
愛媛県今治市「旅館さわき


今、どんな日々を送っていますか?

奈良県川上村の「朝日館」という旅館で若女将として働いています。実はこちら、昨年おてつたびで訪れた旅館なんです。おてつたび中に旅館で板前をしていた息子さんと惹かれ合い、結婚することになりまして。今は女将であるお義母さんや従業員のみなさんと一緒に、お客さまのご対応など業務全般に携わっています。

おてつたびを利用したきっかけ

28歳の頃、旅に出たくて仕事を辞めることを決意したんです。それまでの仕事は事務がメインで、職場環境に不満はないものの、どこか物足りなさを感じてしまっていて……。他の仕事はどんな感じなんだろう、沖縄県以外ではどんな仕事ができるのだろう。知見を深めるためにも、今行動を起こさないと自分を変えるタイミングを逃してしまうと思い、退職することを決めました。

ちょうど新型コロナの流行が収束に向かう頃でした。まだ外国人の入国規制があったので、日本を巡るなら観光客が少ない今がチャンスだ!と直感で思いました。沖縄で生まれ育った私は、日本の色々なところを見てみたいという気持ちが強かったんです。不安はなくて、ワクワクしかなかったですね。リゾートバイトもいいかなと思って探してみたのですが、期間が長くてちょうどいいものが見つからなくて。たまたまネットで見つけたのが「おてつたび」でした。

はじめてのおてつたびはどこでしたか?

兵庫県にある「にしたにや海華」という旅館でした。一日7,8時間、お部屋の掃除や夕食の準備や片付け、朝食の準備などを行いました。そこで初めて旅館業に携わったのですが、いらっしゃるお客様が素敵な方ばかりですごく楽しかったです。

にしたにや海華さんのロビー。あたたかい空間でした

たまたま誕生日を迎える常連さんが泊まりにいらしていて、私がお部屋にケーキを持っていたのですがとても喜んでいただけました。「一緒に写真を撮っていいですか」と言われてみんなで写真を撮って、こんな風に人と繋がれる旅館のお仕事って素敵だなと感じました。

初めての経験が多かったのですが「ゆっくりでいいからね」「あなたなら大丈夫だからね」とお客さまに声をかけていただいて温かかったですね。コミュニケーションを取りながら少しずつ学ばせていただきました。

運命を変えたおてつたび。奈良県の旅館「朝日館」

次に参加したのが、私が嫁ぐことになる奈良県川上村の「朝日館」です。1軒目のおてつたび先の旅館は繁忙期で忙しかったのですが、朝日館では割とゆったり過ごすことができました。従業員の方は午前中に帰られるので、お昼からは女将さんと板前の息子さんと3人でした。ゆっくり会話をしながら食事をすることも多かったですね。

旅館の番犬さすけくん。自然に囲まれながら

朝日館は地域のみなさんの憩いの場にもなっていて「女将さんいる~?」とフラリとご近所の方がやってきて、みんなで楽しくおしゃべりしている風景もよく見られました。旅館の方や地域の方と交流する時間も多くて、温かい時間を過ごすことができましたね。また、旦那さんと接するなかで、だんだんとお互いに惹かれ合うようになりました。彼のあたたかい人柄や自分にないものを持っているところに魅力を感じるようになったんです。そして1週間が経っておてつたびが終わる頃には、「付き合おうか」という話になって。またこの場所に戻ってこよう、という気持ちで旅館をあとにしました。

「旦那さんと結婚したら、旅館を継ぐことになるんだな」と思ったので、その後のおてつたびでは旅館の勉強ができるように旅館を選ぶようにしました。おてつたびに参加する前は、旅館のお仕事はやったことがないし、自分にちゃんとできるのかな?って不安もあったのですが、経験を重ねるうちに「自分も少しずつできるようになった!」と自信を持てるようになっていきました

結婚して移住した奈良県川上村の魅力は?

計4回のおてつてたびを経て、2023年3月に結婚して奈良県川上村に移住しました。私の両親も「自分で決めたことならいいんじゃない!」と応援してくれています。地域のみなさんにも歓迎していただけて嬉しいですね。

川上村での暮らしはとても楽しいです。お仕事はもちろん、自給自足できる自然環境も魅力に感じています。きれいな水があって、畑があって。冬は薪ストーブがあるし、かまどがあればご飯も炊けるし、本当に豊かな場所だなって。日本って災害大国じゃないですか。水道や電気などのライフラインが止まったとしても生活できる環境っていいなぁって思うんですよね。ちょうど今はお義母さんが畑に植えた白菜や、柿やゆずを収穫しています。四季を感じられるのもいいですね。

従業員の方と一緒に、畑で雑草を引き抜く

村は高齢化が進んでいますが、子育て支援にも力を入れていて。このエリアは吉野杉があって吉野林業発祥の地でもあるので、地元の杉を活かした小中学校一貫の新しい校舎もできるんですよね。この地域の魅力を、たくさんの方に知っていただけたら嬉しいです。

私もこれからは旅人を受け入れる側になるので、地域の魅力を知ってもらえるように、行ける時は一緒に地域のカフェに行くなんてこともしていきたいです。

おてつたびに行きたいと思っている人へひとこと

私にとっておてつたびは、人生において必要不可欠な存在だったと思います。おてつたびがなければ、きっとこの時この場所にいなかっただろうし、旦那さんとも出会えていなかったと思います。もしかしたら沖縄で新しい仕事をしていたかもしれません。本当に、自分の直感を信じて動いてみて良かったなって。

板前の旦那さんはお料理上手。胃袋をつかまれています

色々な経験をしてみて、知識が増えると自分の武器にもなりますよね。だから、新しい体験をしてみたいと思っている方には本当におすすめしたいです。私も、朝日館でみなさんのことをお待ちしておりますね!

編集後記

ポカポカと幸せな気持ちをおすそ分けしていただいたインタビューでした。「新しい経験がしたい」と生まれ育った沖縄を飛び出した辻さん。昔から直感を信じて行動することが多かったんだそう。温かく柔らかい雰囲気の中に、力強さとしなやかさを感じました。これからも地域や旅人たちとの交流や、自然の中の暮らしを思いっきり楽しんでくださいね。ありがとうございました!

【取材・執筆・やまくぼ】


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