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魔法少女の系譜、その173~『花の子ルンルン』~


 今回は、前回までとは違う作品を取り上げます。
 テレビアニメの『花の子ルンルン』です。女児向けの、一九七〇年代の魔法少女ものらしい魔法少女アニメです。昭和五十四年(一九七九年)から、昭和五十五年(一九八〇年)の初めにかけて、放映されました。
 ほぼ同時期のテレビアニメとして、『ベルサイユのばら』や、『機動戦士ガンダム』(ファーストガンダム)が放映されていました。

 『ベルばら』と『ガンダム』が相手では、『花の子ルンルン』は、ずいぶん旗色が悪かっただろうと、今の若い方は思うかも知れませんね。でも、原作漫画にとんでもない人気があった『ベルばら』は別として、『ガンダム』とは、そんなに差が開いていたわけではありませんでした。
 年季の入ったおたくなら御存知でしょうが、ファーストガンダムは、初回放映時の視聴率は、あまり良くありませんでした。アニメファンの間では、旋風を巻き起こしていたものの、外部からは、その熱狂が見えなかったのですね。最終回へ向かうにつれて、ファンの支持が明らかになり、再放送、再々放送で、人気が爆発しました。

 そんなわけで、『花の子ルンルン』は、放映当時は、そこそこヒットした作品でした。でなければ、五十回も、放映されません。明るい気分を表わす「るんるん」という擬音語は、『花の子ルンルン』をきっかけに広まった説があるほどです。

 『花の子ルンルン』は、現代の― 一九七〇年代の―ヨーロッパが主な舞台です。モロッコやエジプトなど、北アフリカが舞台になった回もあります。日本は登場しません。
 主人公は、ルンルン・フラワーという十二歳の女の子です。十二歳にしては、しっかりしていて、大人っぽく見えます。美少女です。

 彼女は、南フランスに住んでいます。両親を早くに亡くして、花屋を営む祖父母と一緒に暮らしていました。
 そこへ、突然、ヒトの言葉をしゃべる猫、キャトー(白猫です)と、同じくヒトの言葉をしゃべる犬、ヌーボ(セントバーナードっぽい大型犬です)とが現われます。彼らは、地球のすぐ近くにある星、フラワーヌ星から来た使者だといいます。

 キャトーとヌーボの話によれば。
 昔、地球では、人間と、花の精とが、仲良く共存していました。ところが、人間たちが自然を大切にしなくなったため、花の精たちは、地球に見切りをつけて、近くのフラワーヌ星に移住しました。花の精たちは、フラワーヌ星に王国を作り上げて、幸せに暮らしていました。
 少数ながら、人間に親しみを持っていて、地球に残った花の精たちもいました。そのような花の精たちは、人間と結ばれ、子孫を残しました(花の精と人間とは、通婚可能なんですね)。地球の人間の中には、今でも、花の精の血を引く子孫がいます。

 フラワーヌ星の王国では、王の代替わりがあります。新しく国王になる者には、地球のどこかに咲く「七色の花」が必要です。このため、王の代替わりがあるたびに、誰かが地球へ遣わされて、「七色の花」を探します。
 とはいえ、「七色の花」を探せるのは、地球にいる、花の精の血を引いた女の子だけです。ですから、キャトーとヌーボとの役割は、そういう「花の子」を見つけ出して、「七色の花」探しを依頼し、それを手伝うことでした。

 もちろん、ヒロインのルンルンこそが、その「花の子」です。
 ルンルンは、フラワーヌ星や花の精について、何も聞かされずに育ちました。特に超能力があるわけでもありません。十二歳になるまでは、まったく普通の人間の女の子でした。それもあって、一度は、「七色の花」探しを断ります。
 しかし、はっきりした描写はありませんが、ルンルンの祖父母は、どうも、花の精について、何か聞かされていたようです。きっと、代々、何か言い伝えられてきたことがあったのでしょう。「七色の花を見つけた女の子は、幸せになれる」という、家族の古い言い伝えがあると言い、ルンルンに、「七色の花」を探しに行くように勧めます。

 祖父母の勧めに従い、ルンルンは、キャトーとヌーボと共に、「七色の花」探しに旅立ちます。
 「え? 十二歳でしょ!? 学校は?」と、突っ込みたくなりますね(笑)
 物語中では、学校に関する描写は、ありません。一九七〇年代のフランスなら、十二歳は、もれなく義務教育の範囲のはずですが、ルンルンが学校に通う描写は、きれいさっぱり、何もありません。不必要なところを、一切描写しない潔さを感じます。この点、ほぼ同時代の『ヤッターマン』に通じますね。

 キャトーとヌーボは、ルンルンに、「花の鍵」という魔法道具を渡します。この魔法道具は、「花の子」しか使えません。外見は、ペンダントです。
 ルンルンが「花の鍵」を使うと、「変装」できます。「変身」ではありません。服装が変わるだけで、超能力が使えるようになるわけではありません。

 ただし、物語の途中で、「花の鍵」は、バージョンアップします。
 旅の途中で、「花の鍵」が壊れてしまい、新しい「花の鍵」が、フラワーヌ星から届けられます。新しい「花の鍵」は、能力がアップしていて、ルンルンがこれを使うと、「変装」するだけでなく、服装に応じた能力が使えます。例えば、パイロットの服装になれば、パイロットの能力を使えるようになります。
 こうなると、「変装」ではなくて、「変身」といえますね。

 一九七〇年代の魔法少女もので、「途中で魔法道具がバージョンアップする」のは、とても珍しい描写でした。『花の子ルンルン』より前の作品では、『好き!すき!!魔女先生』くらいでしょうか。石ノ森章太郎さんの先進性と来たら(*o*)

 他にも、『花の子ルンルン』には、注目すべき要素があります。
 今回は、長くなりましたので、ここまでとします。続きは、次回に(^^)



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