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スチール・ビーチ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)


スチール・ビーチ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

 SF長編小説です。

 舞台は、二十二世紀とおぼしき時代の月です。この時代、地球は、謎の侵略者によって破壊され、人類は住んでいません。人類は、月や、その他の太陽系の惑星に、分散して暮らしています。

 主人公は、そこで新聞記者をやっているヒルディという人物です。新聞? そう、二十二世紀の月にも、新聞はあります。もちろん、紙に印刷された新聞ではありません。電子的なものです。
 本作が書かれたのが、一九九二年であることを考えると、これは、先駆的な考えですね。本作には、二〇一四年現在でいうところのタブレット端末のようなものも、登場します。SF作家の想像力は、素晴らしいですね(^^)

 本作品は、ストーリーよりも、未来のガジェットを楽しむものだと思います。二十二世紀の月は、二十一世紀の地球人から見ると、まるで楽園のようです。

 そこでは、人は、二百年以上も生きることができます。もちろん、若いままの姿で。主人公のヒルディも、年齢は百歳ですが、ばりばりに元気です。
 性転換を含め、肉体改造も、思いのままです。百年以上も続く人生のうちで、何回も性転換をするのが、普通のことです。性器をなくして、「無性」になる人間もいます。

 医学の驚異的な発達が、こういったことを可能にしました。
 おかげで、とんでもない重傷を負っても、死ぬことは、まずありません。体の自由を利かなくするような、障害を負うこともありません。
 たとえ背骨を折ったとしても、元どおりの体で、立って歩くことができます。

 月世界では、通称、CCと呼ばれるセントラル・コンピュータが、人々の生活を支えています。月の人々は、よほどの変わり者でない限り、脳の改造を受けていて、脳内で、直接、CCとコミュニケーションを取ることができます。
 我らが主人公ヒルディも、何か困ったことがあると、脳内でCCを呼び出します。二十一世紀の私たちの言葉で言うならば、CCは、「人格を持つインターネット」のような感じです。

 本書は、『スチール・ビーチ』の上巻です。上巻の段階では、多様な未来のガジェットに幻惑されて、ストーリーは、あまり頭に入らないのではないでしょうか。
 でも、本作に限っては、それでいいと思います。未来社会の描写が、楽しいです(^^)

 とはいえ、下巻へ向けての仕掛けが、上巻には、ちゃんと仕込まれています。
 主人公は、月世界の存亡に関わるできごとに、首を突っ込んでいたのでした。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

第一部 大見出し!
 01 悶絶快感の新コンテスト! フリーセックスをかちとろう!
 02 一流超能力者は語る――UFOの大編隊、時間障壁を突破!
 03 びっくり仰天! 万病に効く奇跡の月光!
 04 秘密捜査も立証――レスリング試合は八百長!
 05 科学者もまっつぁお! 公表をはばかる恐竜の真実
 06 独占特報! 有名人のマル秘魔窟を暴く!

第二部 有名人たち
 07 ドルイド教の大祭司
 08 変身小路の巨匠
 09 気象制御のミカド
 10 大英帝国の女王
 11 月世界最初の人間
 12 ナッシュヴィルの帝王
 13 ハー・ガール・フライデー
 14 ラトルスネーク・ジョンスン



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