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昆虫食入門 (平凡社新書)


昆虫食入門 (平凡社新書)

 題名のとおり、「昆虫を食べる」ことを、紹介した本です。

 「昆虫を食べるなんて、とんでもない!」と、拒絶する方が多そうですね。
 ところが……本書を読み終わる頃には、それが、「昆虫を食べてみたい」に、変わっているかも知れません(^^)

 現在の日本では、一部の人を除いて、「昆虫を食べること」は、一般的ではありませんね?
 けれども、歴史的に見れば、昆虫は、人類にとって、重要な食べ物だったのです。
 世界を見渡せば、現在も、地域によっては、昆虫が、ごく自然に食べられています。

 著者の内山さんは、東京で、昆虫を食べるイベントを、ここ数年間、開き続けている方です。
 その原点は、信州で育った子供時代にあるそうです。信州は、日本の中で、昆虫食の伝統が残る、数少ない地域です。

 内山さんのイベントには、私も、何回か参加させていただきました。
 参加者みんなで、わいわいとしゃべりながら昆虫を料理し、食べるのは、とても楽しいです(^^)

 そのように、昆虫食を実践し続けている方が書いただけあって、本書の説明は、地に足がついています。味の表現も、料理の表現も、具体的です。

 内山さんの説明と、私自身が昆虫を食べてみた感想とを比べてみると、内山さんは、正直に書いてらっしゃると感じます。

 本書の守備範囲は、昆虫の味や料理法ばかりではありません。

・昆虫を食べる社会―あるいは、食べない社会―とは、どんな社会か?
・昆虫を食べる心理―あるいは、食べない心理―とは、どんなものか?
・昆虫食は、体にいいのか?
・未来の食料資源として、昆虫は使えるか?

 などなど、昆虫食について、あらゆることを扱っています。内容が濃いです。学術書並みです。昆虫食入門というより、昆虫食ミニ事典です。

 とはいえ、難しい表現などは、ありません。普通の人が、普通に読める本です(^^)
 少しでも、昆虫食に興味がおありなら、まず、本書を読むことをお勧めします。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

はじめに

第一章 昆虫食の源流をさぐる
 胎児は虫食いの夢を見る  闇夜の狩りが脳を鍛えた
 グルメなサルもいるものだ  古代から食べられてきた証拠がある

第二章 食べられる昆虫プロフィール
 昆虫は昨日まで日本でも食べられてきた
 イナゴは日本人の半数が食べている伝統食
 甘くてクリーミーなハチの子――ハチの子飯、しゃぶしゃぶ
 スローフードに認定された天竜川のザザムシ
 カミキリムシの名を聞くと、唾液がにじむ
 いまある日本は「おカイコさま」のおかげ、感謝していただこう

 など

第三章 昆虫を食べる社会、食べない社会
 損か、得か――「最善摂餌理論」に当てはめてみたら
 人の手によって〈害虫〉が生まれた  〈衛生〉の誕生から無菌至上主義へ
 雑食動物は用心深い  〈食〉の工業化の光と陰

第四章 昆虫を食べる心理とその関心の多様性
 食べたい? 食べたくない? アンケート  経験の有無による態度の違い
 経験者の関心は四つのグループに分けられる
 狩猟採集には分かち合う楽しみがある
 勇敢さと冒険心がグルメを作る  漫画や映画に登場する”虫食い”

 など

第五章 昆虫は本当においしいか
 現代人は脳で”おいしさ”を評価する  鈍化した五感を鍛える
 ハチの子はウナギの味がする!?
 おいしい虫もいれば、まずい虫もいる――味の評価と表現
 昆虫をおいしく食べる調理法

第六章 健康食品としての昆虫食
 栄養学的には普通の食品と変わらない  ミツバチの恩恵は計り知れない
 ”ピンピンコロリの里”長野県佐久市の「ゲンゴロウの会」
 漢方薬、民間薬の歴史は長い

第七章 食料資源としての昆虫
 本当に生産効率のいい食料か  おカイコさん宇宙へ行く
 南極で新鮮なタンパク質を食べる方法  天然昆虫資源管理の必要性
 持続可能な食料生産をどうするか  タイで売られている食用昆虫

 など

第八章 「食育」教材としての昆虫
 「命をいただく」ことで知る生きる意味
 食べ方のスタイルをめぐって――スローフード、地産地消、フードマイレージ
 サイエンスアゴラ展で普及活動を展開
 小学生の親子で学ぶ昆虫食――「西堀榮三郎記念探検の殿堂」(滋賀県)
 中学校生物部の昆虫料理教室
 自然豊かな沖縄に親子で昆虫を食べる「バグパックンおきなわ」

 など

おわりに
参考文献



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