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単位の進化 原始単位から原子単位へ (講談社学術文庫)


単位の進化 原始単位から原子単位へ (講談社学術文庫)

 度量衡【どりょうこう】の単位について、解説された本です。メートル、グラム、リットルといった単位ですね。

 「そんな話、無味乾燥で、面白くない」と思いますか?
 それは、とんでもない間違いです。

 そもそも、度量衡の単位がなければ、人類は、文明を発展させることが、叶わなかったでしょう。
 長さも重さも、面積も体積も測れない世界なんて、想像できますか? 買い物ひとつ、できませんよね?

 けれども、単位の話を語るのは、容易ではありません。人類の文明の成り立ちから、語らなければならないからです。

 とはいえ、心配はありません。
 本書の著者は、じつに博識な方だからです。その博識ぶりを、いかんなく発揮して、原始時代から現代までの、単位の話を語ってくれています。
 ココヤシの殻で水を測っていた時代から、月へと着陸船を飛ばした時代までに至ります。

 しかも、その語り口は、よどみなく、面白いです。退屈するおそれはありません(^^)
 読んでいるうちに、度量衡の世界に魅せられること、間違いありません。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

序章 宇宙をかけめぐる単位

第一話 単位の博物誌
 悪魔の手の内/単位の謝肉祭【オン・パレード】/神仙境の音律/
 ヒトという名の動物の計測学/手の長い登場人物/自然民の採寸基準座標

第二話 万物の尺度――人間
 すばらしいもの――人間/古今東西を歩きまわる/アッピア街道の行進/
 はだしの王者、スタジオンを疾駆する/お茶一杯の遠近感/
 など

第三話 あとの半日は……
 よい【グーテン】モルゲンとわるいモルゲン/プロイセンの牛とザクセンの牛/
 あとの半日は……/魔女の算術

第四話 単位は権力者の手で
 東西ドイツの悲劇、太閤秀吉の偉業/単位の政治学/単位の法律学/
 権威の”圧力”をはかる/暑さも寒さもおかみの意のまま/
 など

第五話 ドナウのほとりの天文学者【ケプラー】
 ウルムの町にやってきたケプラー/ケプラーの度量衡行政感覚/
 ケプラーの多能標準機/酒枡にうるさいドイツ人/泉の水とドナウの水/
 など

第六話 花のパリの”王の足”
 はなやぐパリ/一王、一法、一度量衡/パリ城郭のトワズ尺/
 トワズ尺、海を渡る/地球はまるくないというが……/僅かなずれを追い求めて/
 など

第七話 単位はひとびとの手に
 旧体制下の無政府状態【アナーキー】と革命下の統一運動/
 世界の精神を傾けるために――田中館【たなかだて】先生のアッピール/
 など

第八話 ”メートル”をたずねて三千里
 似たもの同士の学者、旅に出る/”メートル”をたずねて三千里/
 燃えるパリを望みつつ

第九話 キログラムの難産
 科学者ラボアジェの実験、流産におわる/不注意の記録に注意を!/
 能吏ラボアジェ、一〇〇万の徴税収入と三〇万の予算をにぎる/
 など

第十話 自然を計測するための、自然から得た単位
 工科学校プリエゥルの光と影/粛清、再開、難渋そして再会/
 確定原器献呈の盛儀

第十一話 メートル法は世界をおおい メートル単位は地球との縁を切る
 辣腕【らつわん】外交家、苦汁を味わう/”万国博”ひと役を買う/
 国際原器への道/地球からの脱出/現実主義者の先見の明

第十二話 ハードウェアからソフトウェアへ
 日本のメートル原器の里がえり/八重のトビラ/バラの園に眠るごついいれもの/
 原器は神聖なり、侵すべからず/形あるものはこわれる/
 など

第十三話 原子単位の世界
 地球よりも永久不変な/もっと―純粋な―光を/物理学の新しい波/
 よろめく原子、ゆらぐ光/笛吹き天使を検閲する悪魔/
 など

終章 一億分の一の狂いもなく
 キロ、キロ、キロ……/単位は多様化する/過保護のいましめ/
 核家族にも四種の単位/一種類の量には一系統の単位/ミス・メートル/
 など

原本あとがき
学術文庫版へのあとがき



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